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2020年06月09日 10:59 更新

【医師監修】葉酸はいつからいつまで摂取すべき? 妊婦は手遅れ?

妊娠を考え始めたら、知っておきたいのが葉酸の大切さです。葉酸は、厚生労働省も妊娠前からの摂取を推奨しています。いつからいつまで摂取すればいいのか、その理由とともに説明します。

葉酸の摂取は「妊娠前から」気を付けておきたい理由

葉酸はいつから取るのが良いのか!?葉酸を含む食材。
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そもそも葉酸とは?

葉酸はビタミンB群の一種です。
葉酸はビタミンB12とともに、血液の中の赤血球を作る働きをします。 DNAの合成にも関わっており、あらゆる世代の人にとって重要な栄養素です。

また、葉酸は細胞の分裂や成熟にも大きく関わっているため、特に胎児にとっては欠かせません。妊娠している女性が葉酸を十分に摂取していると、先天異常である神経管閉鎖障害(詳細は次項以降で解説します)になりにくくなることでも知られていて、 厚生労働省でも積極的に摂取するよう推奨しています。

妊娠のかなり早い段階から必要な栄養素だから、常に摂っておく

妊娠初期は胎児の脳や脊髄のもととなる「神経管」が形づくられていく時期です。胎児の神経管は最初は板状なのですが、成長の途中で管状になり、管の上下が閉じます。 ところが、なんらかの要因でこの神経管の上下がうまく閉じないことがあり、そのことで赤ちゃんに起こる先天異常を「神経管閉鎖障害」と呼びます。

この神経管ができるのは妊娠4~5週ごろという妊娠のかなり早い段階で、完全に閉鎖するのは妊娠6週末ごろ[*1]と言われています。さきほど紹介したとおり、葉酸は神経管閉鎖障害の発症リスクを低減させる栄養素で、胎児の神経管が発達するこの時期はとくに重要なのです。

妊娠4~6週末は、妊娠していることにすら気づかない妊婦さんも少なくありません。しかし、赤ちゃんの神経管の発達のために、このころにはすでに体の中で葉酸が不足しないようにしておきたいのです。そのため、 葉酸は妊娠する1カ月以上前から十分な量を摂取しておくことが推奨されています。 よって、現実的には妊娠する可能性のある時期には常に葉酸のサプリメントを飲んでおくことが勧められているのです。

「葉酸」を摂取すべき理由は2つ

赤ちゃんとママのためにいつからを葉酸取るべきかイメージ
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1. 胎児の先天異常 リスクの減少

さきほど紹介したとおり、葉酸を十分に摂取していると、神経管がうまく閉じない「神経管閉鎖障害」のリスクを低減させることができます。

神経管閉鎖障害では、神経管の下部がくっつかないと「二分脊椎」となり、下半身の運動障害や膀胱・直腸の機能障害を起こすことがあります。また、上部で起こると、脳が形成不全となる「無脳症」となります。 無脳症の赤ちゃんは、流産や死産の確率が高いことで知られています。

二分脊椎の場合、軽いものから重症まで症状はさまざまですが、誕生後、早くから体や頭部を切開しての手術が必要となることが多いです。また、成長してから運動や排便などの障害などさまざまな異常が見られることもあります。

神経管閉鎖障害は葉酸の摂取不足だけが原因となって引き起こされるわけではありません。でも、 葉酸を適量摂取するとその発症リスクを下げることができると考えられています。神経管を形成する妊娠初期に葉酸が不足することがないように、お母さんが妊娠前から意識して葉酸を摂取することが大切です。

2. 母体の健康

葉酸の摂取は、お母さん側の健康にも関わっています。

葉酸はビタミンB12とともに、赤血球を作る働きをしています。そのため葉酸が不足すると、赤血球が十分に作られなくなり、貧血を起こしやすくなります。
また、葉酸が不足していると、脳卒中や心筋梗塞などの循環器の病気になりやすくなります。

お母さんの健康を維持するためにも、葉酸が必要なことがわかりますね。
なお、妊娠すると胎児に葉酸が必要となるため、妊娠前と同じ量の葉酸を取っていても葉酸が足りなくなることがあります。 そのため妊娠前から、意識して葉酸を取ることが大切なのです。

葉酸は、いつからいつまで摂取すべき?

葉酸をいつから取り始めるか計画したカレンダー
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いつから摂取すべき?

厚生労働省では、胎児が神経管閉鎖障害になりにくくするためには、妊娠する1ヶ月以上前から葉酸を摂取する必要があるとしています[*2]。現実的には、妊娠の可能性のある時期(セックスをしている時期)には常に葉酸サプリメントを摂取し続けていることが大事です。
もちろん葉酸だけを摂れば良いのではなく、そのほかにもビタミンに限らずさまざまな栄養素をバランスよく摂取することが大切です。

いつまで摂取すべき?

厚生労働省では、妊娠3ヶ月までは葉酸を十分に摂取するべきだとしています[*2]。 神経管の閉鎖は紹介したとおり妊娠6週末、つまり妊娠2ヶ月の後半には終わりますが、妊娠3ヶ月までは器官形成期といって、神経管以外にも赤ちゃんの重要な臓器がさかんに作られる時期です。細胞分裂に役立つ栄養素である葉酸はとくに大切です。

ただし、それ以降も、妊娠前の必要摂取量と比べると、妊娠中から産後の授乳期の葉酸必要摂取量は多めになっています(具体的な推奨量は次項で紹介します)。 そのため、妊娠前から授乳期が終わるまでは、意識して葉酸を多めに取ったほうがいいでしょう。

厚生労働省も勧める「葉酸の摂取」

厚生労働省が推奨する葉酸の摂取量[*3]

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によると、18歳以上の成人が1日に摂った方がよいとされている、葉酸の量は240μgです。

葉酸がもっとも必要とされる、妊娠を計画している女性、または妊娠の可能性がある女性は「付加的に400μg/日の摂取が望まれる」とされています。

妊娠中は、18歳以上の成人の推奨量に加え、240μgの葉酸を摂取した方がよいとされています。つまり、妊娠前の倍に当たる480μgが1日の推奨量です。
産後の授乳期には成人の推奨量に100μg多くに摂取するように推奨されています。つまり、1日当たり340μgの摂取が推奨されるということです。

厚生労働省は葉酸サプリメントを推奨しています

葉酸は野菜や柑橘類、レバーなどに多く含まれています。
たとえば、葉酸を野菜から摂ることもできますが、十分な量の葉酸を摂るためには、野菜を毎日350gほど摂取する必要があります。でも毎日それほど多くの野菜を摂り続けるのは大変です。その点、サプリメントなどの栄養補助食品からも葉酸を摂るようにすれば、毎日手軽に、推奨量を摂取できるようになります。

サプリメントからの葉酸摂取が勧められているのにはもう1つ理由があります。食品に含まれる葉酸は、その吸収されやすさにばらつきがあったり、水溶性かつ熱に弱いことから調理の過程で失われることも多く、葉酸を含む食品を食べたとしても思ったほど体に吸収されないことがあるのです。一方でサプリメントに含まれる合成型の葉酸は安定で、吸収率も高いことがわかっています。

そのため、アメリカをはじめとした諸外国では、サプリメントなどの栄養補助食品からも葉酸を摂取するように勧めています。 日本の厚生労働省でも、妊娠を計画している女性はとくにサプリメントなどの栄養補助食品からも葉酸を摂るように推奨しています[*2]。

ただし過剰摂取には注意して

赤ちゃんと自分自身の健康によいと知ると、ついたっぷりと葉酸を摂りたくなるかもしれません。

でも、葉酸を1,000~10,000μgも摂ってしまうと、葉酸過敏症と呼ばれる健康障害を起こすことも報告されています。葉酸過敏症では発熱、じんましん、紅斑(皮膚の発赤)、かゆみ、呼吸障害などの症状がみられるとされています。

健康管理のためには、推奨量を大きく超えた1日1,000μg(1mg)以上の葉酸を摂らないように注意しましょう[*1]。

ただし、自分自身や赤ちゃんの父親の家族の中に神経管閉鎖障害の人がいる女性、糖尿病の女性、てんかんの薬を飲んでいる女性、BMI(Body Mass Index)30以上の女性など 、一部の人は、高用量の葉酸摂取が勧められています。主治医に事前に相談しておきましょう[*4, 5]。

まとめ

葉酸をとって健康な女性とパートナー
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お母さんと生まれてくる赤ちゃんが健康な体を作っていくためには、十分に葉酸を摂ることが大切です。特に妊娠したことがわからないほど初期の段階でも、胎児の神経管が正常に閉鎖されるために葉酸は重要です 。妊娠したいと考え始めたら、適度な量の葉酸を摂取し始めるようにしましょう。
なお、食事だけから葉酸を摂ろうとすると不足することもあるので、世界的にもサプリメントにより補うことが推奨されています。ただし、過剰摂取しないようにも注意が必要です。葉酸だけでなく、それ以外の栄養もバランスよく摂るようにして、母子ともに元気に出産の日を迎えてくださいね。

(文:大崎典子/監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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