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2024年04月19日 10:31 更新

「ryuchellがいない」と寂しくなっても、息子にはハッピーな姿だけを見せていたい。/pecoさんインタビュー【1】

現在、5歳の息子を育てるpecoさん。2016年にパートナーのryuchellさんと結婚し、出産したのは2018年のこと。pecoさんが考える母親像は、自身が育った家庭環境から生まれたものでした。

「ありのまま」が定着した昨今でも根強い「お母さん像」

ーーエッセイ『My Life』では、妊娠を発表したあとに世間からさまざまな声が届いたと書かれていましたが、どんなふうに受け止めましたか?

pecoさん(以下、peco) いろいろありましたね。おもしろいと思ったのが、妊娠中にいちごを食べようと思ってインスタグラムに動画を載せたんです。たしか、包丁でヘタを切って洗って食べたのかな? そうしたら、「いちごは洗う前にヘタを切ったら、栄養が逃げちゃうよ」という声をいただいて、「好きに食べさせてー!」とツッコミを入れてしまいました。

ーー気になって落ち込むことはないんですね。

peco 優しさで言ってくださっているのがわかるので、落ち込むことはないですし、腹が立つこともないし、おもしろくなって「ほっとけー!」という感じです。

ーー服装のことでも言われたことはありますか?

peco 息子が1歳のときに「これから映画を観に行く」というコメントとともにその日のコーデを載せたんです。ミニ丈スカートを履いていたのですが、すると「そんなんじゃ公園に行けないよ」という声が届いて。「いやいや、公園行かへんもん! 映画言うてるやん!」みたいなことはありました。

ーー世間には、「◯◯なときは△△しちゃダメ」という母親像がいまだに根強くあるのかもしれません。

peco あるかもしれませんよね。妊娠報告をしたとき、それをすごく感じました。「おめでとう、じゃあ黒髪にしなきゃね」という声が届いたんです。いまは、私が妊娠した当時よりもそういった価値観は減っていると思いますが、「ありのままでいいよね」という風潮があったとしても、根本には「お母さんってこうビジュアルだよね」というものがありそうです。

「だから出産したんでしょう?」

peco とはいえ、私の中にも「お母さんってこうだよね」という“母親像”はあるんです。それは「黒髪」や「ミニスカNG」というビジュアルに関してではなく、「家族のことを思って動くのが、母親」というもので、それを私は誰かに強いることはないです。あくまでも「私はそうありたい」というときに思い浮かべる母親像なので。

ーーエッセイには、パートナーのryuchellさんとの間にも、<「家族」や「親子」「愛」について、根本的な考え方の違い>(CHAPTER4 My Familyーー大切な家族P177)があったと書かれています。

peco ryuchellは本当に優しすぎるくらい優しい人で、人の弱さも包み込んで寄り添う人。私は「それでも強くおらなあかん」って厳しいタイプ。ryuchellとは、家族の中だったからこそ「私はこう思っている」としっかりきっぱり伝えました。

ーーご自身で、自分に厳しい一面もあると思いますか?

peco どうだろう……厳しいというより、当たり前だと思っています。自分に対して「それができるから、その意識があるから、出産したんでしょう」と。

ーーpecoさんのお母さまにもそういった意識があったかと思いますが、pecoさんがお母さまに対して「子どもを最優先に動いている」と感じた出来事はありますか?

peco 自分が親になるまで気づきもしなかったんですよ。ここ2年ほど、特にryuchellの告白があってから、母といろいろ話したとき、「実は昔、こんなにたいへんなことがあったんだよね」と教えてくれて。
私の両親だって夫婦だからいろんなことがあっただろうに、子ども時代に大きな夫婦喧嘩はほとんど見たことがなかったし、私は最近まで知らずに生きてきた。それで、「私のお母さん、ほんとうにすごいお母さんだったんだな」って気づいたんです。

幸せな子ども時代をもらった自分

peco 子どものころ、母のことを心配したこともなかったし、「お母さん、だいじょうぶかな、ハッピーかな」なんて考えたこともなかった。ただただ自分のことだけを考えて18歳まで生きてきて、それがどれだけ幸せなことだったんだろうと思いました。ありがたいことです。
私も息子に対して、そんなふうにできるかぎり心配をなくして、大きくなってほしいなと思います。

ーーーエッセイでは<自分の幸せ、自分のやりたいこと、自分の未来だけを考えて、自由に生きてこられた。それって、なんて幸せなことだったんだろう>CHAPTER4 My Familyーー大切な家族P179)と書かれている、とても印象的なエピソードです。

peco 母はずっととてもハッピーだったんですよね。父が単身赴任で、基本的に母のワンオペでしたが、いつもハッピーで悩んでいるところなんて見たことがなくて。悩んでいる姿を見せることが悪い、というわけではないんですが、母がハッピーであることが私にとっての安心材料だったんです。

ーーそんなお母さまがいたからこそ、家はpecoさんにとってゆるぎない場所なのだと感じました。

peco 私は自分の親に対してなんの心配もなく成長して、家にいることはすごく居心地がよくて。息子にとってもそうなってほしいと思うのは、小さいながらにたぶんたくさん心配をかけたし、すごく複雑な想いをさせてしまったからこそ、ここから先は心配をできるだけなくしていきたいと思っています。

ryuchellがいなくても「子どもには絶対に心配をかけない」と決めている

ーー息子さんに、周囲のさまざまな心配ごとが伝播したように感じたことはありましたか。

peco 息子はとてもポジティブなんです。ryuchellの変化もすごく前向きにナチュラルにとらえてくれたし、ryuchellがいなくなってしまったときも……もちろんいっぱい泣いたし、いまでもたまに、ふとryuchellのことを想って泣いてしまうときもありますが、それ以外はほんとうにふつうに元気。だから、「このままでいさせてあげたい」という思いが強くあります。
通っているインターナショナルスクールでも、ryuchellがいなくなってしまったあとに、一応心配だから「様子、どうですか?」と面談で先生に聞いたんです。そうしたら、「彼はポジティブだね!」と言ってくれて、そこで私も息子がポジティブなことに気づきました。

peco 家族の形って、さまざまだと思います。母親に夫がいようがいまいが、彼氏がいようがいまいが、母親がなにで満たされていようとなんでもよくて。パートナー、仕事、お友達との付き合い……なんでもいいけど、私の母は当たり前のように前向きにキラキラしていたのが、すごいことなんだなあと。

ーーそういったお母さまに育てられ、pecoさんは安心してのびのびとすることができたんですね。

peco はい、そうだったんだなって最近気づきました。だから私も今後、ふと「ryuchellがいない。ひとりだな……」と寂しい気持ちになったとしても、息子に絶対に心配をかけたくないんです。
心配をかけてしまうときって、きっと私がどこか寂しそうだからだと思うんです。もちろん寂しがることがダメなんじゃなくて。「仕事もいっぱいさせてもらって、あなたが生きていてくれて、これだけでハッピー!」という姿を常々見せることで、私の心配をせずに大きくなってくれるのかな、と思います。それがいまのいちばんの目的地です。

pecoさん/タレント、ブランドプロデューサー

1995年6月30日、大阪府出身。原宿系ファッションのカリスマ読者モデルとして10代を中心に支持され、パートナーのryuchellとテレビ番組やTVCMなど多数出演。一児の母になった現在は、育児やライフスタイルを映したSNSが人気。2023年に自身がデザイナー・プロデューサーを務めるファッションブランド「Tostalgic Clothing」を開始。2月に初のエッセイ本『My Life』(祥伝社)を上梓した。

(撮影:松野葉子 取材・文:有山千春)

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