「実はうち……」ママ友たちの赤裸々なぶっちゃけ話に思わず涙が……【運命の人とレスになりました。美咲編vol.7】
最高の相性だと思って結婚した男女が、妊娠・出産を経て親になり、少しずつすれ違ってセックスレスに……これって、よくあること? せつない夫婦の胸のうちを描きます。
息子の前ではちゃんとママとパパでいられる。でも……
この作品を一気読み!【第1話から最終話まで公開中】
2回連続で大輔が「できなかった」……。セックスレスに突入して半年、自分たち夫婦の関係について悩みを深める美咲。ある日、ママ友の話を聞く機会が訪れて……。
大輔がベッドで誘ってこなくなってから、かれこれ半年が過ぎた。
その間、こちらから誘うことも、なかった。
もちろん、キスやハグのスキンシップもなんとなくしづらいという最悪な状態……。
ここまで複雑化したのは、大輔が「一人ではできている」という事実に気づいたからだ。
もちろん実際にその場面を見たわけじゃないけど、そこは妻の勘。
なんとなくわかる。
性欲がないわけじゃないなら……私とは……したくない、いやできないってこと?
このあいだ、ネットニュースで「妻だけED」というワードを知った。
他の女性には反応するのに、妻にはできないなんて……女としての自信を失くしちゃうよ。
こんな状況で、私から
なんて誘えるはずもない。
ダラダラと時間だけが過ぎていく。
2人目妊活は頓挫したままだ。
こんなこと……誰にも相談できないよ。
優香に相談しようかとも、チラッと思った。
でも、できない。
だって、
「幸せですって顔に書いてある!」
と優香に言われるほど幸せだった私が、今ではセックスレスなんて……。
ちっぽけなプライドが邪魔をするんだ。
そんなことを考えながら蓮のお迎えに行くと、はるとくんママから声をかけられた。
はるとくんは、蓮と一番仲良しの子だ。
送り迎えでよく立ち話をするようになり、今では母親同士もタメ口で話す仲だ。
「蓮くんママ!」
「はるとくんママ! お疲れさま」
「お疲れ~。ちょうどよかった! ねえねえ、よかったら今度の土曜日、お昼にうちで宅飲みしない? ゆいちゃんママとそうたくんママ、あおいちゃんママも誘ってさ。もちろん、ノンアルで」
「え? いいの? もちろんだよ! うわあ~楽しみ!」
……ということで、その夜、大輔に話すと、
「いいじゃん! 行っておいで」
と快諾だった。
「じゃあ、俺は休日出勤しようかな。蓮に会えなくて寂しいぞ~?」
と言って、蓮のほっぺをスリスリする。
「ぱぱ、いない」
「お? パパがいなくて寂しいんだな~」
蓮は、最近、二語文が出るようになっていた。
成長も著しく、いろいろな経験をさせてあげたくて、日曜日は必ず公園やお出かけをして楽しい時間を過ごすようにしている。
無邪気な蓮の前では、私たちは夫婦でいられる。
でも……。
「今日の蓮、楽しそうだったな。俺たちは明日筋肉痛だと思うけど(笑)」
「パワフルだったもんね。また行こうね」
「そうだな。じゃ……おやすみ」
「うん。おやすみ」
蓮が眠った後に流れる、まるで他人のような空気にはもう慣れていた。
なんとなく、背中を向けてしまうことにも。
お互いに。
「実はうち、レスなんだよね」
あっという間に週末がきた。
はるとくん一家が住むタワマンのエントランスをくぐる。
ほぼ同時刻に全員が集合して、それぞれに持ち寄った軽食やお菓子、ドリンクをテーブルに広げた。
子どもたちには、テッパン人気のアニメDVDをはるとくんママが用意してくれて、プロジェクターでリビングの壁に投影してくれた。これで1時間はおしゃべりできるだろう。
ノンアルで乾杯するや否や、ゆいちゃんママが言った。
「実は私、2人目できたんだ」
「え? おめでとう!」
すかさず満面の笑顔で祝福したのは、はるとくんママ。
私は、ショックだった。
蓮のクラスには、すでに何人か妊婦さんがいるが、まさかゆいちゃんママもだったなんて。
この状況下では、「おめでたい」よりも先に「羨ましいな」と思ってしまう。
そんな自分がちょっと嫌だ。
「全然気づかなかった~。つわりとか大丈夫なの?」
とあおいちゃんママ。
「うん。ゆいの時もつわりなかったんだ」
「楽しみだね~。あ~私もそろそろ2人目考えないと。でも、レスだし無理かな」
「え?」
あおいちゃんママの何気ない告白に、思わず大きな声が漏れてしまった。
「蓮くんママ、どうしたの? 大きな声出して……」
「ごめん、実は……うちもレスで」
つい打ち明けてしまった。
私ってば何を言ってるんだろう? アルコールが入ってるわけでもないのに……
こんなこと言われても絶対みんな困るよね……。
ところが、意外にもみんなが同意してくれた。
2人目妊娠中のゆいちゃんママでさえも。
「実はうちもずっとレスだったの。ニュースアプリで見たんだけど、1ヵ月以上ないとセックスレスらしいのよ。でも1ヵ月以上しないなんてザラでさ。正直したくなかったけど、2人目が欲しかったから我慢したんだ」
ゆいちゃんママの発言を皮切りに、出てくるわ出てくるわ、みんなの夫婦生活事情が……!
レスを解消したママ友夫婦の話に、思わず涙
「うちの旦那は性欲強いよ。でも私は最近性欲ゼロ! 旦那はしたがってるけど、やんわり断ってる。だって生理的に無理だもん。こんなおじさんになっちゃうハズじゃなかったんだけどなー」
「友だちは、単純に面倒くさいからしないって言ってたよ。悩んだこともあったけど、家族の仲がうまくいってるならとくにアクション起こさなくてもいいかなって言ってた」
「えー、うちは旦那より私の方が性欲強いかも(笑)。旦那は、立ち会い出産をしてするのが怖くなったっていうんだよ。ひどくない?」
へぇー……。
いろいろな夫婦のかたちがあって、みんなそれぞれ悩んだり折り合いをつけたりしてるんだ。
すると、はるとくんママがこう言った。
「私もはるとの出産後、旦那に触られたくないってくらい拒絶反応が出ちゃったことがあるんだけどさ。ちゃんと話し合って、今はレスにならないように意識してる」
「え……どんなふうに?」
「しばらくレスだったところから再開させるのって気まずくなかった? 詳しく聞きたい!」
みんな好奇心がすごい。もちろん、私もなんだけど……
「うーん、もちろん気まずかったんだけど、拒否し続けるのもしんどくなっちゃって。
泣きながら『このままでいいと思う?』って切り出したんだよね。
そしたら向こうも、せっかく好きで結婚したのにこのままレスなんて悲しいよね、って。
だから私も、日頃の不満ーーたとえばはるとと過ごす時間をもっと作ってほしいとか、家事分担の割合増やしてほしいとかね、そういうことも伝えて了承してもらったんだ。
今は2人の時間を意識的に持つようにしてて、たまにお義母さんに子ども預けてホテルデートしたりもするよ。キスやハグのスキンシップも日常的にするようになったし、腕枕で寝たりとかね(笑)」
腕枕……そういえば妊娠がわかったときから一度も、腕枕してもらってないな。
はるとくんママは、最後にこんなことも言っていた。
「家族っていっても、もとは他人じゃない? 言わなくてもわかれよ、なんて甘えちゃダメなんだよね。お互いを尊重して、コミュニケーションを大切に! いい意味で緊張感を持つように心がけてるよ」
……私、思わず涙目になっちゃった。
「えっ、蓮くんママ大丈夫!?」
「ウン……なんか、驚かせちゃってごめんね。なんか……みんなに話して気持ちが楽になった」
「いいよいいよ~。みんな言わないだけで意外と悩んでると思う。いつでも相談してね」
「ありがとう」
みんなの優しさに、また目頭が熱くなった。
帰り道、気分は晴れやかだった。
せっかくなので、歩きたい盛りの蓮をベビーカーからおろして散歩をすることにした。
住宅街から駅の方へ抜ける。この大通り、懐かしいな。
大輔と初めて会った飲み会の後、立ち寄ったカフェバーが見える。
気づいたら、ここに来ていた。
2年前のあの日。
まるで出会うべくして出会った運命の人のように、何時間話しても話が尽きなかったっけ。
でも、その運命の人とこんなことになっちゃうなんて……あの時は、考えもしなかった。
大輔とちゃんと話そう。
何か変わるかもしれないし、何も変わらないかもしれない。
でも、何かアクションを起こさなければ、何も変わらない。
私たちのセックスレス問題は、ただ単にセックスのことだけじゃない。日常の小さなすれ違いの積み重ねで、苦痛を覚えるようになって、できなくなって……。
でも、自分から切り出す勇気がない。
どうすれば……。
その時ふと、あのカフェバーの前で、蓮がピタッと足を止めた。
「どうしたの? 蓮」
「ぱぱ、いる!」