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2022年05月17日 09:00 更新

パパ理学療法士解説|産後の腰痛・背中の痛み、授乳中の肩こりの劇的解消ストレッチ with 赤ちゃん

肩や腰、背中などがこっていても、赤ちゃんとの生活ではセルフケアの時間をもちにくいかもしれません。けれど長時間の抱っこや授乳などで普段以上に “こり”や“重だるさ”を感じる人は多いので、隙間時間にできる専門家おすすめのストレッチで疲労をためないようにしましょう。

産後のストレッチ、いつからやっていい?

今回解説するストレッチについては、産後1ヶ月健診で主治医から「通常の生活に戻っても大丈夫」とOKが出たら、念の為ストレッチなどを行っていいか確認して行ってください(主治医に運動を止められた場合は指示に従う)。

悩み① 抱っこや授乳で「肩こり」がひどい!

赤ちゃんとの生活が始まって、肩こりの悪化を感じる人は少なくありません。

ママの場合、授乳中は下を向いている時間が長くなり、それが肩こりの原因になることもありますが、実は無意識にしている赤ちゃんの抱き方で肩こりが起こっていることもあるようです。

赤ちゃんを抱くとき、大切な命を自分の手で保護するので、荷物を持つのと違って無意識に自分の心臓に近づけるように抱きかかえます。赤ちゃんを大切に思うからこそ、つい肩をいからせてしまうのでしょう。


ママやパパが “心臓近く” に赤ちゃんを抱くのは、上半身の重心に近づけて抱くこととなり、負担の軽減にも役立っていますが、一方で、抱く時の肩の形には気をつけなければいけません。

肩をいからせると、俗に「肩こり筋」とも呼ばれる「僧帽筋(そうぼうきん)」や「肩甲挙筋(けんこうきょきん)」などが過剰に働き疲労して、肩こりにつながります。

肩こり筋ストレッチ with 赤ちゃん

肩こり筋と、筋肉を包むように存在している筋膜(きんまく)をストレッチで伸ばして、肩の負担を減らしましょう。

筋膜の柔軟性の低下は、専門的には「滑走不全(かっそうふぜん)」と言い、これはさまざまなこりやだるさ、痛みの原因になると考えられています。


赤ちゃんを抱っこしているとき、赤ちゃんの体重を利用して肩を固定し、空いている片手で肩こり筋を伸ばすのが効果的です。
筋膜は全身でつながっているので、このストレッチで背中の筋膜も一部伸びます。背中のこりや痛みを感じている人も試してみましょう。

右太ももの上で赤ちゃんを右手でかかえる。
 ※肩をいからせないように注意しながら、赤ちゃんの体重で肩を固定する。
左手を天頂部〜後頭部に置き、息を吸う。
息を吐きながら、手の重さで自然と頭を倒し、肩こり筋を伸ばす。
 ※斜め前に向かって倒す。
逆も同様に(左太ももの上で、赤ちゃんを左手でかかえて)行う。

肩こり解消ストレッチ赤ちゃんと一緒

動画では土屋先生が次女のあーちゃん(生後7カ月)と一緒に肩こりストレッチを解説しています動画でcheck

悩み② 産後の「腰痛」「背中の痛み・こり」をどうにかしたい!

腰痛や背中の痛み・こりは赤ちゃんとの生活で悪化を感じる人が多い症状です。

多くの場合、腰痛は骨などには異常のない、体の使い方や姿勢による「原因の特定できないタイプ(非特異的腰痛)」で、慢性化することも多いとされます[*1]。また、ママは妊娠中にお腹が大きくなることや、ホルモンの影響で骨盤周囲の靭帯や筋肉が緩み、姿勢のバランスが普段とは変わることなどから、数年間にわたって腰に負担がかかり続け、腰痛が続くこともあります[*2]。

赤ちゃんを抱っこする生活は、5~10㎏の負荷がかかり続けることとなり、腰痛や背中の痛み・痛みにも関係するようです。長時間の抱っこや授乳後、腰や背中に重だるさや痛みを感じたら、 ストレッチなどでケアしてリセットしましょう。

私たち人間は立っているだけで背中の筋肉が働く構造になっています。背中の筋肉を働かせないとなにも動作ができません。さらに赤ちゃんを抱っこしている時間は普段以上の負荷がかかるので、背中の筋肉やその周囲の筋膜を酷使していることになります。


「特に朝が腰や背中の痛みがつらい」というママも多くいるようですが、その辺はどうなのでしょうか?

夜泣きや夜間の授乳は眠りの質を低下させます。気も張り詰めていて、少しの物音や赤ちゃんの動きで目を覚まし、安全を確認してまた眠る。そして、赤ちゃんが泣けばすぐ対応する。そんな状況で寝ていると、自然な寝返りが減り、体の疲労や柔軟性が回復しにくいようです。


さらに授乳中のママは下を向く時間が長くなり、前かがみの姿勢は腰に負担がかかります。また、授乳以外の時間には無意識に「下を向くとつらいので、背筋を伸ばして過ごそうとする」影響で背中の緊張が高まり、さらなるこりや痛みにつながることも。 赤ちゃんをあやしながらできるストレッチを試してみましょう。

いないいないばあ腰痛・背中痛ストレッチ with 赤ちゃん

紹介するストレッチをオムツの交換や、赤ちゃんと遊ぶときに試してみましょう。広背筋(こうはいきん)、最長筋(さいちょうきん)、腸肋筋(ちょうろくきん)という筋肉やその周りの筋膜を伸ばします。

肩の痛みがない範囲で伸ばしましょう。背中痛がある場合はなるべくお尻を引かず、胸を床に近づけるようにすると背中がストレッチできます。赤ちゃんのごきげんな顔を見ながら、背中が軽くなる一石二鳥のケアを習慣にしてください。

また、筋膜はつながっているので、このストレッチで腰の筋膜も一部伸びます。腰痛がある人は、お尻を大きく引いて腰も伸ばしてみましょう。

赤ちゃんを寝かせて、その上に四つん這いになり、両手は赤ちゃんの脇の下に入れ、赤ちゃんをホールドします。

赤ちゃんと顔を見合わせ、両手を赤ちゃんの脇を挟むようにつく。
 ※両足はなるべく後ろの位置にする
両手はついたまま「いないいない」と声をかけながら、赤ちゃんの視界から消えるようにお尻を後ろに引く。
 ※伸びているのを感じながら行う
 ※背中の上部のストレッチをしたいならば、お尻はあまり引かずに胸を床に近づける
「ばぁ!」と言いながら元の姿勢に戻る。
何度か繰り返す。

背中痛

動画では土屋先生が次女のあーちゃんと一緒にいないいないばあストレッチを解説しています動画でcheck

産後の肩・腰・背中の痛み、どんな時は受診が必要?

現代生活では、疲労やストレスによる慢性的なこりや痛みを感じ、セルフケアをしながら生活している人も多いですが、「痛み」の中には整形外科を受診し、適切な診断・治療を受ける必要があるものもあります。また、痛みの背景に内科的疾患がある場合もあります。

痛みが続く場合や、いつものこりや痛みと違った感じがある時、他にも症状がある時などはなるべく早く受診し、原因を突き止めましょう。


なお、腰痛は受診の目安があり、1つでも当てはまるときはセルフケアの前に受診が必要です[*3] 。セルフケアは主治医や、病院でリハビリを担当する理学療法士と相談して行ってください。

・ 安静にしていても痛みが軽くならない
・ 次第に悪化する
・ 発熱、下肢がしびれたり、力が入らない、尿漏れなどの症状を伴っている

まとめ

赤ちゃんとの生活は忙しく、肩こりや腰痛、背中のこりなどの症状をセルフケアする時間をつくるのは難しい場合もありますが、赤ちゃんと触れ合いながらできるケア法なら習慣にしやすいかもしれません。
痛みがいつもと違うと感じたり、ストレッチの効果を感じることができず、辛い症状が続く場合は、セルフケアをやめ、整形外科等を受診して医師に相談してください。

(文・構成:下平貴子、監修:土屋元明先生)

参考文献
[*1] 厚生労働省 腰痛対策
[*2]須永康代「妊娠・出産期の理学療法」
[*3]日本整形外科学会 腰痛


※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、専門家の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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