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2023年08月04日 23:27 更新

ショック。夫婦の時間を中断された妻の表情はあからさまにホッとしていて【運命の人とレスになりました。大輔編vol.4】

最高の相性だと思って結婚した男女が、妊娠・出産を経て親になり、少しずつすれ違ってセックスレスに……これって、よくあること? せつない夫婦の胸のうちを描きます。

妻の職場復帰、早すぎるんじゃない? と思ったが……

息子の蓮が生まれて3ヶ月が経った頃、およそ半年ぶりに夫婦生活を再開した美咲と大輔。しかし以前とはまったく異なる美咲の様子が気になって……。

ショック。夫婦の時間を中断された妻の表情はあからさまにホッとしていて【運命の人とレスになりました。大輔編vol.4】

「先輩。なんか朝から疲れてません?」
出勤早々、机に突っ伏していると、部下の中野亜美が話しかけてきた。

「わかる? ヘトヘトだよ」
「早朝から大口の契約とって来たんですか?」
「違うよ。厄介なクライアントがいてさ。泣くわ、イヤイヤするわ、まさにモンスタークライアントだよ。まだ生後7ヶ月で、バブバブしか言わなくてさ。意思疎通ができなくて困ってる……」
「息子さんですね~! 可愛い!」

蓮が生後半年を迎えた頃、美咲が仕事に復帰した。
朝はバッタバタだ。
まず、起床してから園に着くまで、蓮がずっとゴキゲンを保ってくれることはほとんどない……らしい。

保育園でお昼寝の時間があるとはいえ、夕飯・お風呂と、常に俺たち大人の生活リズムに合わせているような状態なのだから、蓮の機嫌が悪いとしても無理はないんじゃないかと思う。
だから俺としては、まだ職場復帰せず、1歳すぎまで自宅で保育すればいいと思っていたんだけど……美咲が「0歳児クラスで保育園に入れなかったら遅い、1歳になってからじゃどこも入れるわけない!」と言うので、まあ仕方ないんだろう。

ともかく、美咲はなんとか蓮をなだめすかし、ごはんを食べさせ、身支度をさせ、大きな荷物を抱えて出勤している、ようだ。
ようだ……とは、保育園へ送るのは、俺の出勤時刻の都合で、美咲の担当だから。
じゃあ夕方のお迎えは俺の担当……と言いたいところだけど、仕事の都合上、保育園の時間には間に合わないので、時短勤務の美咲がやってくれている。

実は新規プロジェクトのリーダーにアサインされて、やりがいはあるけれど残業時間も増えてしまっている。帰宅は21時をまわることも多く、蓮の寝かしつけまで終わっている時間だ。

さすがの優しい美咲も、帰宅後はかなり疲れてイライラしているので、シンクにたまった皿を洗うとか、洗濯物を畳むとか、できるだけ家事を手伝うようにしている。
昨夜だって……。

「ただいまー」
「おかえりー。今、お義母さんにLINEしてるから、悪いんだけど自分でごはん温めてもらえるかな?」
「うん……なんか、朝の食器がたまってるね。先に皿洗いするよ」
「助かる~」

最近、美咲は母ともよくLINEをしているみたいだ。
蓮の急な体調不良時は、基本的に時短勤務の美咲が対応するが、仕事を抜けられない時は母が対応しなきゃならないからだ。
思えば、妊娠・出産・職場復帰を経ても、俺の生活スタイルはあまり変わっていない。
文句も言わず、俺の母とも良好な関係を築いてくれる美咲には、本当に感謝しないとな。

そんなことをボーっと考えながらガシャガシャと皿を洗っていたら、美咲の冷たい視線に気づく。
「え? どうした? ちゃんと洗ってるから大丈夫だよ!」
「……知ってるよ。でも、できればもうちょっと手早くやってくれると助かる。あと、水の出しっぱなしはやめて」
「あ、ごめんごめん」
キュッと水道の蛇口をしめる。

あれ?
なんか不機嫌だ。
何かしたかな? 忙しそうに洗濯物を干し始めた美咲は、それ以上何かを言うつもりはないらしい。

夜泣きは仕方ないけど、それより……

妊娠中からおよそ半年ほど夜の営みを控えていたが、蓮が生後3ヶ月になった頃、「セックスしていない期間」に終止符を打った。
玉砕覚悟で誘い続けていたある日、唇を重ねたらいつものように拒否されることはなく、深く受け入れてくれて……半年ぶりのスキンシップは、すごく幸せだった。

ただ、完璧に満たされたとは言えない。
正直、美咲はあまり嬉しそうじゃなかったからだ。
その後も月に一回ほどのタイミングで美咲は不意に受け入れてくれる。
今夜はそろそろ前回から1ヶ月。
さっきはうっすら機嫌が悪そうだったけれど、ベッドに入って抱き寄せてみたら、拒絶はされなかった。このままイケるだろうか?

しかし……。

「ほぎゃあっ! ほぎゃあっ!」
あともう少し、というタイミングで蓮が起きてしまった。
俺が動くより先に、素早く美咲が動いて、蓮を抱きあげた。
マジかよ、中断か……。
蓮がおっぱいを吸い始めたので、俺はパジャマを羽織りトイレへ行った。そのまましばらくリビングで時間をつぶしていた。
約30分後、寝室に戻ると蓮はスヤスヤ眠っていて、美咲はまだ起きていてくれた。
「再開……する?」
と言ってくれたが……明らかにやりたくなさそうなのはわかった。

「大丈夫だよ、また今度にしよう。おやすみ」

盛り上がっていた気分はすでに萎えてしまった。
ただ……
昔の美咲は貪欲だった。
昼間から何回も求めてきて、Uberでとったピザでも食べながらまたしてさ。
あんなに奔放で可愛かった美咲はもうどこかへ行ってしまった。
今の美咲はどう見てもしたくなさそうだった。
それどころか、「俺とのセックスが終わってホッとした」と顔に書いてある。

あの日、プツリと糸が切れた

この日をきっかけに、俺の中で何かが決定的に変わった。
営業で鍛えられた打たれ強い俺のメンタルも、さすがに傷ついた。
あんなに「美咲としたい」という強い気持ちがあったのに、糸が切れたようだ。
それでも性欲はあるので、最近では隠れてこっそり一人で処理している。
その方が、美咲にとっては幸せだろうから。

そんなある日。
「先輩……これ、よくわからないんですけど……」
「ああ。ちゃんと前提を共有できてなかったな。見ながら説明したいから今日、帰り残れる?」
「はい! でも先輩、最近いつも一番遅くまで残ってますよね。お子さん小さいのに、大丈夫なんですかぁ?」
「うちは妻がちゃんとしてくれるから大丈夫だよ……」
「えー、ほんと先輩の奥さんって“デキる妻”って感じですよね。じゃあ19時半で会議室Aとっておきます」
振り向きざま、中野亜美の手元から香水がふわっと香る。
柔軟剤の匂い? 石鹸の匂い?
よくわからないけれど、すごくそそられる匂いだ。

…………人肌恋しいな。

思わず、後ろ姿を目で追ってしまった……。

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