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2023年08月04日 23:25 更新

育児でボロボロの妻を「手伝う」俺って、結構いい夫じゃない?【運命の人とレスになりました。大輔編vol.3】

最高の相性だと思って結婚した男女が、妊娠・出産を経て親になり、少しずつすれ違ってセックスレスに……これって、よくあること? せつない夫婦の胸のうちを描きます。

妻の代わりに子どもを見てるぞ!

愛する美咲と結婚して息子が誕生。仕事もプライベートも絶好調……なはずの大輔だが、育児疲れなのか美咲の態度はどこかよそよそしくて……。

育児でボロボロの妻を「手伝う」俺って、結構いい夫じゃない?【運命の人とレスになりました。大輔編vol.3】

蓮が生まれて、もうすぐ1ヶ月が経とうとしている。

「蓮~。美咲~。ただいまー!」
「ふぇっ……ふぇ~ん」
「おかえりなさい……蓮、起きちゃった」
「ごめん、俺が大声出したから……寝かしつけるよ」
「お酒飲んでるでしょ? 危ないから私がするよ」
蓮を起こしてしまった。
しかも、接待とはいえ飲み会帰りだし……美咲がムッとするのも無理はない。

ここ最近、美咲の元気がない気がしている。
蓮はあまり寝ない子で、「背中スイッチ」というものを発動させては、美咲を困らせている。
退院後は、3時間おきの授乳、母乳トラブル、体の痛みもあってヘトヘトのようだ。
数ヶ月前まで化粧品メーカーの広報として肌はピカピカでメイクもバッチリだったのが嘘のように疲れた顔をしている。
よし! ここは、俺の出番だよな。

次の日曜日。
「美咲。今日は俺が蓮を見てるから、寝てなよ」
「え? いいの……?」
「うん。いつもお疲れ様。ほら、もう寝室に行きな?」
「ありがとう! 嬉しいな! じゃあ、準備するね!」
準備……?
何を準備するっていうんだろう。

しばらくして、俺は蓮と、美咲が持ってきたバッグを渡された。
「じゃあ、よろしくね」
そう言って、美咲は寝室に入っていった。

初めての2人きりの蓮との時間で、ドキドキしている……。
俺は、蓮の寝顔をおそるおそる見た。
二重の目は、美咲に似ているな。
赤ちゃんなのにしっかりした眉と鼻は、俺に似ている。
可愛いな~。起きたらいっぱい抱っこしてあげよう。


しかし、思いのほか蓮はスヤスヤ寝ていた。
育児は大変だと聞いていたけど、拍子抜けだな……暇だ。
とはいえ、「おむつ交換サイン」とやらの色が変われば、新しいものに替えなければならない。
替えのおむつはどこか探そうとすると、バッグの中におむつ・おしりふき・おむつシートなどがすべて用意されていた。
へぇ~。
おむつ替えって意外と簡単なんだな。
替え終えたタイミングで、蓮が起き、美咲も起きてきた。
さっきより、心なしか肌ツヤがいい。
「よく眠れた~! ありがと~! 蓮の様子どうだった?」
「ずっと寝てたよ。ほんと可愛いよな。癒された~。こんな感じなら、いつでも手伝うよ」
そう答えながら、スマホにおさめたいくつかの写真を見せる。
すると美咲は、さっきまでの笑顔が嘘のように、ムッとしていた。
「どうしたの?」
「ううん……なんでもない。大丈夫だよ」
なんだろう? おかしいな。
また何かあったのかなと思ったけれど、美咲自身が「大丈夫」だと言っているんだ。
俺はそれ以上踏み込まなかった。

産後1ヶ月、順調に回復してるって

次の土曜日。今日は、蓮の1ヶ月健診だ。そのあと、美咲の産後1ヶ月健診も受けるため、蓮を抱っこ紐で抱えて一緒に病院へ行った。

「お母さん頑張りましたね! 蓮くんの体重は順調に増えてるし、元気にすくすくと育ってますよ」
「よかった。先生、いろいろとありがとうございました」
美咲はこの1ヶ月、本当に頑張っていたと思う。
その瞳にうっすら涙が浮かんでいた。

その後、産婦人科で美咲が診察を受けている間、待合室で蓮を抱いていると、急にギャン泣き。
「パパもどうぞ、いいですよ~」と促されて、診察室へ入らせてもらった。
美咲に抱っこを代わると蓮は安心するようで泣き止んだ。やっぱり美咲はすごいな。

……なんて感心していると、お医者さんが「会陰切開の傷もきれいになっているので、夫婦生活を再開して問題ないですよ」と言ったので、俺は驚いた。
産後1ヵ月を過ぎると、もう普通の生活に戻ってもいいんだな。
もちろん、あくまで目安なのは知っている。
美咲の体調を考慮しながらになるが……正直、そろそろしたいと思っていた。
今夜、早速美咲を誘ってみようか……。
そう思うと、心が躍った。



帰り道。
「よかったな。蓮も美咲も順調で」
「うん」
「これからは元の生活に戻れるな。何か困ったことがあったら言ってね。何でも手伝うからさ」
「うん……」
あれ? なんか美咲の表情が暗い……。
「具合悪い?」
「そんなことないよ。ごめん、ボーっとしてた」

どうしたんだろう。きっと蓮のお世話で疲れてるんだろうな。
最近、美咲のことがイマイチつかめない。
おそらく、長いことスキンシップをしていないせいではないかと思う。
育児でヘトヘトな美咲の小さな変化を知るためにも、夫婦のスキンシップは大切だと思わされる。

医者はいいって言ってたのに

「今日、どうかな?」

妊娠後期からしていないから……数ヵ月ぶりのお誘いだ。
「しよう」の合図になるキスすら久しぶり過ぎて、ちょっと照れる。
きっと美咲も同じだろう。
大好きな美咲とようやく愛を確かめ合える……。
しかし、そんな俺に返された美咲の言葉は、意外なものだった。
「いや……っ!」
「え?」
「あ、ごめん……びっくりして。疲れてるのかも。今日は無理だよ」
今日は無理?
なんでだ?
医者が再開していいって言ってるのに……なんでだろう?
美咲にくるりと背を向けられてしまい、それ以上聞ける雰囲気じゃなかった。
頭の中は疑問符だらけ。
疲れてるって……今日はほとんど俺が家事を手伝ってたじゃん?
いつもはグズっている蓮も、今夜はぐっすり眠っているし……外出だって俺が付き添って、蓮はずっと俺が抱っこしてた。疲れるようなことは何もしてないはずだろ?
疲れの蓄積なのかもしれないけれど、今は専業主婦みたいなもんだし、やることって子育てと家事しかないよな?
それに……たとえ疲れていたとしても、普通は、その「疲れ」を俺とのスキンシップで癒したいと考えるもんじゃないのか?
はあ。
出産したのに、これじゃ何も変わらない。
もしかしてもう俺たち、前みたいにセックスできないのか……?

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