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2024年03月05日 15:45 更新

【宋美玄先生解説】妊娠中のフェラチオは何が危険?感染症のリスクと安心な方法

妊娠中でも夫婦の性生活を継続する人も多い中、特に女性が男性に行うオーラルセックスでは感染症が心配になるかもしれません。今回はフェラチオによる妊娠中の感染症のリスクについて、産婦人科医で日本性科学会学会員、女性の性に関する著書も多数ある宋美玄先生に教えていただきました。

妊娠中にフェラチオすると何が危険なの?

濃厚接触がともなうセックスは、妊娠中でなくても常に性感染症にかかるリスクがつきものです。セックスの際にオーラルセックスをするカップルは7割以上という調査結果もあります[*1]。中でもフェラチオにはどのようなリスクがあるのでしょうか。

フェラチオでうつる感染症には妊娠中にハイリスクなものも

宋美玄先生

「セックスは皮膚や粘膜が直接ふれ合う濃厚接触のため、感染症にかかることが少なくありません。性行為によってうつる感染症のことを『性感染症』といいます。

性感染症は同じ病気であっても男女間で自覚症状が異なることが多く、とくに女性の場合、自覚症状がほとんどない無症候感染であるケースも多々見受けられます。そのため知らぬ間に感染し、知らぬ間に広げてしまうことも。

性器同士の接触だけでなく、キス(口と口)や、フェラチオなどのオーラルセックス(性器と口)でも性感染症が広がることがあります。」

フェラチオでうつる主な性感染症の種類と症状

性感染症のうち、フェラチオによって感染が拡大するといわれているものをまとめました。この中でもクラミジアや梅毒などについては妊婦健診の項目になっており(淋病検査が行われる施設もある)、もし感染がわかった場合は赤ちゃんへの感染や発症を防ぐために治療などが行われます

■クラミジア感染症
日本で最も多い性感染症で [*2]、女性の場合、感染から発症までは1~3週間と、少し開きがあります [*3]。感染すると男性は軽い排尿痛を感じることがありますが、女性は無症状の場合が多いです。そのため感染自体に気付かないまま進行することが少なくありません。
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妊娠中に感染すると流産・早産の原因になるほか、出産時に赤ちゃんに感染し、結膜炎や肺炎を引き起こすことがあります。性器だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスで喉や肛門にも感染します。喉や肛門への感染は、多くが無症状だといわれています。

■梅毒
近年、とくに若い女性の感染が増えている性感染症です。個人差はありますが感染の約1カ月後、性器や肛門、口にしこりができたり、全身に発疹が現れたりします。しばらくするとそれらがなくなるため治ったと思い込み、放置しがちですが、病気はひそかに進行し、発見が遅れると脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。
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妊娠中に感染した場合は、赤ちゃんに障害が出ることがあります。感染力が強く、粘膜や皮膚の小さな傷からでも感染することがあるほか、アナルセックスやオーラルセックスでも感染します。

■淋病(淋菌感染症)
感染後、2~7日で発症し、男性にはペニスから粘液や黄色の膿が出るなどの症状が現れますが、女性は無症状のことが多いです。ただし女性でも症状がある場合は、男性同様、性器周辺から緑黄色の濃いおりものや膿が出ます。
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妊娠中に感染すると、出産時に母子感染を起こし、赤ちゃんの命に関わることもあります。感染力が非常に強く、性器のほかに喉や直腸にも感染しますが、喉や直腸への感染はほとんどが無症状です。ただし症状がなくても、他の人に感染させることがあり、キスやフェラチオを介してうつる可能性はあります。

■性器ヘルペス
単純ヘルペスウイルスに感染することで発症します。無症状のことが多いですが、性器に小さな水ぶくれやただれができることがあり、なかには激痛で排尿困難や歩行困難を生じる人もいます。一度感染すると、治療してもウイルスを体から完全に除去することができず何度でも再発します。
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妊娠中は再発しやすくなり、出産時に赤ちゃんにも感染する可能性があります。初回の発症は感染後3~7日で起こります。主に唇に症状があらわれる口唇ヘルペスと性器ヘルペスでは、ヘルペスウイルスの型が違うのですが、唇から性器へと感染することもあります。

サイトメガロウイルス感染症もキスや性行為でリスクあり

性感染症ではありませんが、フェラチオで感染する感染症のひとつとして「サイトメガロウイルス感染症」にも注意しておきましょう。

サイトメガロウイルスはどこにでもある、ごくありふれたウイルスで、主に小さな子どもの唾液や尿から感染します。ただし、大人同士でもキスや性行為によって感染することがあります。健康な状態であれば、感染してもまったく問題はありません。

6〜7割の人は小さい頃に感染していますが、妊娠中に初めて感染した場合は胎児への感染リスクがあります。妊婦さん自身は無症状でも、赤ちゃんには障害が生じたり、流産や死産にいたったり、成長に伴って症状があらわれる場合もあります。特に上のお子さんがいるご家庭では、子どもの唾液や尿にふれた手で自分の目や口などを触らないようにするほか、唾液の付いたスプーンなどの共有を避けましょう。

また、パートナーとも唾液を交わすようなキスを避け、セックスの際も念のためコンドームを用いないフェラチオを含む行為は避けたほうが安心と言えるでしょう。

妊娠中にフェラチオしちゃった。不安でどうしよう……

感染症のリスクがあるのに、妊娠中にフェラチオしてしまった! そんなときはどうしたらよいのでしょうか。宋先生、教えてください!

まずは落ち着いて医師に相談

宋美玄先生

「まず、フェラチオをしただけで性感染症にかかるわけではありません。パートナーが性感染症に感染しているときに行ったら、喉などに感染する可能性があるということです。お互いに特定の人とだけセックスをしている状況では、感染症のリスクは低いでしょう。

唾液や精液などを介してサイトメガロウイルスに感染することも考えられますが、仮に妊娠中、初めてサイトメガロウイルスに感染したとしても、胎児に感染するのはそのうちの4割程度で、残りの6割は感染自体が起こりません。さらに、胎児に感染してもその8割ほどは無症状です。落ち着いて産婦人科の医師に相談してみましょう。」

今後はできるだけ予防を心がけて

「妊娠中のフェラチオについては、先ほども言ったように特定の人とだけ性交渉をしている場合であれば、それほど性感染症のリスクは高くないといえるでしょう。

とはいえ、リスクがあることはたしかです。『絶対!』とまでは言えませんが、できるだけコンドームを使うことをおすすめします。フェラチオだけでなく、挿入の際もできればコンドームを使ったほうがよいです。

妊娠中は普段なら何でもないウイルスや細菌の影響で感染症にかかることもあるため、コンドームを使って、性行為を通じて感染症にかかるリスクを防ぎましょう。」

まとめ

フェラチオに限らず、セックスには性感染症のリスクがつきものです。特に妊娠中は、普段ならさほど大ごとにはならないウイルスなどでも発症したり、赤ちゃんに影響することがあります。過度におそれることはないですが、気をつけるにこしたことはありません。妊娠中、特に女性から男性へのオーラルセックスをする際は、いつもより少し気をつけるのがよいでしょう。

(文:山本尚恵/監修:宋美玄先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]厚生労働省「オーラルセックス(口腔性交)による性感染症に関するQ&A」
[*2]性器クラミジア感染症|東京都性感染症ナビ
[*3]「病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版」p86


※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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