【医師監修】幼児の便秘はなぜ起こる?原因と対処法
お子さんのうんちが数日おきで気になってはいませんか? 実は幼児の便秘は珍しいものではありません。特に2歳・3歳・4歳ごろは、「あること」をきっかけに便秘になることがよくあるのです。2・3・4歳の便秘の原因と対処法について知っておきましょう。
どんな症状が便秘?
まずはどんな症状があれば便秘なのか、チェックしておきましょう!
便秘は「うんちが何日も出ないか出にくいこと」
便秘とは、「うんちが何日も出ないか、出にくいこと」を指します。
便秘の中には、一時的ですぐにまた順調に出るようになるものもあれば、便秘が続くものもあります。
治療が必要な便秘は「便秘症」、便秘症が1~2ヶ月以上続いたら「慢性便秘症」となります[*1]。
子供の場合は、次の項目のうち少なくとも2つ以上に当てはまっている状態が1ヶ月続いていることが、慢性便秘症の目安とされています[*2]。
1.トイレでうんちをした回数が1週間で2回以下
2.トイレットトレーニングが済んでいるのに、少なくとも週に1回、うんちをもらす
3.うんちを我慢するような姿勢をしていたり、自発的にうんちを出さないようにし過ぎたことがある
4.痛みを伴う、または硬いうんちが出たことがある
5.直腸に大きなうんちの塊がある
6.トイレが詰まるほど大きなうんちをしたことがある
毎日出ていても便秘のことも
毎日うんちが出ていても、小さいコロコロのうんちや軟らかいうんちが少しずつ、1日に何回も出ている場合も、便秘の可能性があります[*1]。腸にうんちがたまりすぎると、全部は出し切らないまま、少量ずつ頻繁にうんちをもらすようになるからです。
乳児のころは一日に何度もうんちするのは普通ですが、2~4歳になってもまとまったうんちをしないで、コロコロうんちや軟らかいうんちを一日に何回もしていたら、便秘の疑いがあることに注意してくださいね。
2~4歳の便秘はなぜ起こるの?
子供には便秘を発症しやすい時期がいくつかあり、それぞれきっかけが異なります。中でも最も発症しやすい時期と言われる「2~4歳」によく見られる便秘のきっかけとは、何でしょうか?
2~4歳は「トイレットトレーニング」で便秘になりやすい
2~4歳の便秘のきっかけとしてよく見られるのが、「トイレットトレーニング」です。
この時期、まだ慣れないトイレでうんちをした時に不快な思いや嫌な体験をしてしまうと、意識的・無意識的に排便を避けるようになることがあります。
うんちがしたくなっても、しばらく我慢していると便意はなくなります。ところが、お腹の中に残ったうんちは大腸で水分を取られてどんどん硬くなっていきます。
この硬くなったうんちを出そうとすると、肛門が切れて痛みます。そのため、さらに次のうんちを我慢したり、肛門の筋肉を締めたままで息むようになります。こうして、どんどんうんちは出しづらくなるので、ますます我慢するようになっていきます。
うんちを我慢するような習慣がつき始めたころに、さらにトイレットトレーニングを無理じいされたり、無理やり浣腸を繰り返されると、一層うんちを出すのが嫌になって便秘は悪化していきます。
どんなトイレットトレーニングなら便秘になりにくいのか、また、もしも便秘になってしまったらどうすればいいかについては次以降の項でお話しします。
その他の要因によって起こることも
トイレットトレーニング以外に、子供の便秘のきっかけには次のようなものもあります。
・トイレそのものが嫌い
・親または友達などとの関係がうまくいっていない
・家庭環境の変化
・お腹のうんちの量が少ない:食事に繊維質が少ない、脱水や栄養不足
子供の便秘は珍しくない
詳しい研究はまだないようですが、便秘の子供はおおよそ10人に1人かそれ以上の割合でいるのではないかと言われています[*1]。
トイレットトレーニングがきっかけとなりやすい2~4歳以外でも、離乳食を始めたり終わったころ、学校に通い始めた頃も便秘になりやすい時期と言われています。
子供の便秘は珍しくはないものですが、このあと説明するように放っておいてはいけません。便秘かもと感じたら家庭内だけで何とかしようとせずに、早めにかかりつけの小児科で相談してみてくださいね。
2~4歳の便秘の対処法
便秘になっても早めに対処すれば、悪化を防ぐことができます。2~4歳の便秘の対処方法をチェックしておきましょう。
便秘は放っておかないで
便秘を放っておいてはいけない理由
便秘になっても放置していると、出されないうんちは大腸で水分を吸収されて硬くなっていきます。硬いうんちは肛門が痛むため、子供はうんちを出さないようになります。
こうした状態が長く続くと、腸はうんちがたまっている状態に慣れてしまうので、とても治りにくい便秘になっていきます。
便秘かなと思ったら早めに受診を
4歳以下で便秘になった子供の40%以上が、治療を続けても小学校入学以降も便秘が続くことがわかっています。特に初めて受診したのが2歳以降の場合は、治りにくい傾向にあるそうです。さらに5歳以上になってから治療を始めた場合は、25%ほどの子供が大人になってからも便秘が続くことがわかっています[*2]。
なお、便秘かどうかの診断や治療を、自己流でするのはやめましょう。適切な治療を受けるために、「便秘かな?」と感じたらまず小児科を受診しましょう。そのうえで必要であれば子供の便秘に詳しい小児科や小児外科、専門外来などを紹介してもらい治療してもらうことが大切です。
小学校入学後や大人になってから便秘で苦労しないためにも、2~4歳で便秘が疑われたらできるだけ早く治療を始めてくださいね。
治療ではどんなことをするの?
浣腸や下剤でうんちを出します
最初に、たまったうんちを浣腸や飲み薬で出します。
浣腸をするとすぐにうんちが出るので楽になりますし、うんちの量や状態などもその場で確認できます。ただし、うんちが硬くなっていると肛門が切れて痛むこともあります。
また、肛門を触られるのをとても怖がる子で、うんちをすぐに出さなくても大丈夫そうな場合は、下剤を使うこともあります。下剤でうんちが出るには、1~2日ほどかかります[*1]。
なお、子供の下剤は安全性が高く、習慣性がほとんど、またはまったくないものばかりです。便秘が続くよりも下剤を飲むことのほうが安全なので、病院で処方された時には必ず飲ませるようにしましょう。
浣腸や下剤でも出ない時には
便秘がひどく悪化すると、浣腸や下剤でも出なくなることがあります。その場合は腸を洗ったり、指で腸のうんちを砕いて出すことになります。あまりにもうんちが硬くなっていたり量が多過ぎる場合は、麻酔をかけて出すこともあります。
こうしたやり方をしても、ひどい便秘の場合は腸を空っぽにするのに3~5日かかることもあります[*1]。子供にとってもつらいものですが、便秘をそれ以上悪化させないためにはがんばって乗り越えることが大切です。
うんちの記録もおすすめです
どんなうんちがどのくらい、いつごろ出ているかがわかると、便秘になった時に治療方針を決めやすくなりますし、治療効果が出ているかどうかの手掛かりにもなります。
便秘の治療中はもちろん、便秘傾向かなと思った時も、うんちの記録を毎日つけるようにしましょう。「出た時間帯」「うんちをした場所」「出た量」「うんちの状態」「その他気になること・気づいたこと」を書きとめておくといいですね。
なお、日本小児栄養消化器肝臓学会と日本小児消化管機能研究会が共同で作成した「排便日誌」が下記のサイトでダウンロードできます。印刷して子供の排便状況の観察に役立てましょう。
生活習慣に注意して便秘を予防しよう
生活習慣も便秘の原因の1つです。便秘になりにくい生活習慣を身につけて、子供の便秘を予防しましょう。
まずは便秘にさせないトイレットトレーニングを
トイレットトレーニングで便秘にしないためには、どんなところに注意すればいいのでしょうか?
トイレットトレーニングを始める目安
無理なトイレットトレーニングは便秘を悪化させたり、引き起こしたりすることがあります。そのため、子供の発達段階を考慮して始めるのが大切です。トイレットトレーニングを始めるタイミングかどうかの目安は次の通りです。
・ひとりで歩ける
・ひとりで下着の上げ下げができる
・コミュニケーションがある程度取ることができる
・おしっこやうんち、トイレに興味を見せる
・大人のまねをしたがる
トイレットトレーニング中に気をつけるポイント
・失敗しても叱りつけないようにしましょう
叱られても小さな子供はその理由がよくわかりません。そのため、トイレットトレーニングで失敗して叱られると、うんちを我慢するようになることがあります。
・たくさんほめてやる気をアップ
トイレでうんちができたらたくさんほめたり、ごほうびをあげるのもいいですね。また、うんちが出なくてもトイレに5~10分座り続けられたら、たくさんほめたりごほうびをあげると子供のやる気につながります。
すでに便秘になっている時のトイレットトレーニングって?
すでに便秘になっている子の場合は、まずは便秘の治療を受けて、規則的にうんちを出す習慣がついてから、トイレットトレーニングを始めるようにします。
なお、硬いうんちで肛門が痛くなったことがある子供は、便意を感じた時に部屋の隅にしゃがみこんだり、親や机などにしがみついて立ったままうんちをしたりと、トイレではなくそれ以外の場所でうんちをすることがあります。
便秘が治ってもトイレでできない場合は、服を着たまま便座やおまるに座るところから始めるのがおすすめです。
便秘にならない生活習慣って?
すぐに効果が出るわけではありませんが、次のような生活習慣を続けることで便秘になりにくくなり健康な毎日にもつながります。
・早寝早起きをして規則正しく生活する
・バランスの取れた食事を1日3食摂る。おやつの時間以外には間食はしない
・散歩や掃除だけでもいいので、できるだけ体を動かす
こんな食事がおすすめ
便秘を予防するには、食事の見直しも大切です。
次のような食事を心がけましょう。
十分な量の食事を摂る
うんちの量が少ないと、腸に長くとどまってから出すことになってうんちが硬くなりやすくなります。十分な量のうんちを作れるように、毎日しっかりと食事をしましょう。甘い飲み物やお菓子はカロリーが高いですが、あまりうんちにならないのでできるだけ控えましょう。
水分補給もしっかりと
水分不足も便秘の原因になります。運動する時には小まめに水分を取りましょう。
重ね着をさせすぎて多量の汗、とくに寝汗をかいている子の場合は、服を調節してあげることもポイントです。
なお、脱水ではないのに余分に水分を取らせても便秘に効果はないと考えられています。便秘だからと言って、赤ちゃんに白湯を与える必要はありません。
食物繊維はたっぷりと
食物繊維は、腸で吸収されずに水分を含んでうんちの量を増やします。また、うんちが硬くなるのを防ぐ効果も期待できます。
アメリカでは、1日に「年齢+5g」の食物繊維をとるようにすすめられているそうです[*1]。
食事には食物繊維をたくさん含む食材をできるだけ使うようにしましょう。具体的には、野菜や海藻、果物、イモ類、豆類です。
まとめ
2~4歳の便秘でよく見られるきっかけは、トイレットトレーニングと言われています。トイレットトレーニングで失敗して叱られたり硬いうんちで痛い思いをすると、できるだけうんちを出さないようになり、便秘が悪化するようになるのです。そのため、トイレットトレーニングをする時は、叱りつけないで気長に取り組むのがおすすめです。
なお、便秘は放っておいても治らないので、便秘かもと気になったらできるだけ早く医療機関に相談して治療を始めるようにしましょう。便秘治療の基本は、浣腸や下剤などでうんちを出すこと、うんちを出す生活習慣を身につけることです。小学校入学やと大人になってから便秘で悩まないように、気長に治療を続けることが大切です。排便記録もつけておくと、治療の手がかりになります。
また、便秘予防のためには、生活習慣や排便習慣の改善、食事の工夫がポイントとなります。普段の生活も見直して、便秘になりにくい環境を作ってあげたいですね。
(文:大崎典子/監修:大越陽一先生)
※画像はイメージです
[*1]「こどもの便秘 ―正しい知識で正しい治療を―」小児慢性機能性便秘診療ガイドライン作成委員会
[*2]「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」日本小児栄養消化器肝臓学会 日本小児消化管機能研究会編集
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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