【医師監修】子供の結膜炎 | 症状別の治療法と予防法
子供に目の充血や目やになどの症状があったら「結膜炎」が疑われます。よく聞く目の病気ですが、原因によっては他の人にうつしたり、悪化で視力が落ちるといったリスクもあります。今回は子供の結膜炎について、原因や症状、治療や予防法などを解説します。
結膜炎とは?
結膜炎は原因によっていくつかに分けられ、それぞれ症状や経過、治療法などにも違いがあります。
「結膜炎」て、どんな病気?
「結膜」とは、まぶたの裏側と目の表面を覆っている薄い粘膜のことです。この結膜は、異物などが目の中に入るのを防ぐ働きをしています。子供でも大人でも、ここが細菌やウイルスに感染するなどして炎症を起こすのが、「結膜炎」です。結膜炎になると、白目が充血したり、目やにが出たりします。
結膜炎の種類は?
結膜炎は原因によって一般には以下の3種類に分けられます。
また、ウイルス性結膜炎は、原因となるウイルスや症状などによってさらにいくつかの病気に分けられます。
なお、流行性角結膜炎は「はやり目」、プールの水を介して感染することもある咽頭結膜熱は「プール熱」などとも呼ばれます。
子供の結膜炎の原因は?
細菌性結膜炎の原因
細菌性結膜炎は新生児からかかりますが、年齢によっておもな原因菌に多少違いがあります。たとえば、新生児の場合はクラミジア、淋菌などで、乳幼児はインフルエンザ菌、小学生以降は肺炎球菌やブドウ球菌などです。
ウイルス性結膜炎ほど感染力は強くありませんが、細菌がついた手などから人にうつすおそれがあります。
ウイルス性結膜炎の原因
ウイルス性結膜炎は人へうつす可能性がある病気です。
流行性角結膜炎と咽頭結膜熱の原因はアデノウイルスです。アデノウイルスにはたくさんの型があり、原因となる主な型は流行性角結膜炎と咽頭結膜熱とで違いがあります。また、同じウイルス性結膜炎でも、急性出血性結膜炎はエンテロウイルスなどが原因となります。いずれも主に接触感染や飛沫感染によってかかります。
アレルギー性結膜炎の原因
アレルギー反応を起こす原因(アレルゲン)に接したときに、アレルギー反応の一つとして目のかゆみが起こるのが「アレルギー性結膜炎」です。この病気には季節性と通年性があり、季節性のアレルゲンは花粉で、通年性のアレルゲンになるのはハウスダストなどです。
子供の結膜炎の症状と経過は? どのぐらいでよくなる?
結膜炎になってしまったとき、どんな症状が出て、どのぐらいの期間で回復するのかが気になるものです。症状と経過は結膜炎の種類によって異なりますので、それぞれ見ていきましょう。
細菌性結膜炎の症状と経過
おもな症状は、白目の充血と黄色っぽい目やにが出ることです。
ママからもらった免疫が切れてきて、自分の免疫が出来上がってくるまでの過渡期は感染症に弱い傾向があるため、細菌性結膜炎も生後6ヶ月から2歳くらいまで[*1]の乳幼児で多く、かぜで鼻がつまったときに起こりやすくなります。
ただ、細菌性結膜炎の予後はよく、たいてい1週間ほどで治ります。
ウイルス性結膜炎の症状と経過
ウイルス性結膜炎の中で特に感染力の強い3種類ですが、それぞれ症状の程度や出る場所、経過には違いがあります。
(潜伏期間:感染してから最初の症状が出るまでの期間)
流行性角結膜炎の場合
潜伏期間は1~2週間[*2]で、急に白目が真っ赤になって大量の目やにが出てきます。そのほか、涙が出る、まぶたが腫れるなどの症状が見られたり、耳の前にあるリンパ節(耳前リンパ節)が腫れて、押すと痛みを感じることもあります。
感染力が非常に強く、症状が重くなりやすいのが特徴で、症状は発症後1週間前後でピークをむかえます。それから徐々によくなっていきますが、完全に治るまでには2~3週間[*3]ほどかかります。
咽頭結膜熱の場合
5~7日の潜伏期間[*4]ののち、結膜が充血して真っ赤になるほか、39℃前後の高熱が出て、のどが赤く腫れて痛みが強くなるため、食べ物や飲み物を飲み込むのもつらいほどになります。吐き気や下痢の症状が見られることもあります。ただ中には、結膜炎だけまたは咽頭炎だけ、という症状の人もいます。
治るまでに1~2週間[*5]かかります。
急性出血性結膜炎の場合
潜伏期間は1~3日[*6]で、始めは目の強い痛みや異物感(目にゴミが入ったようにゴロゴロする)が出ます。
やがて結膜が真っ赤に充血し、結膜下出血を伴うこともあります。そのほか、まぶたが腫れる、目やにが出る、結膜がむくむなどの症状が見られ、目がゴロゴロする感じもしばらく続きます。
ただ、症状はウイルス性結膜炎の中では比較的軽く、1週間[*7]ほどで自然に治ります。
登校・登園できるのは?
・流行性角結膜炎:症状がおさまってからもほかの人にうつすおそれがあるため、医師が完全に感染の恐れがなくなったと認めるまでは、登校・登園停止。
・咽頭結膜熱:治ったあとも数週間は便の中にウイルスが出ます。登校・登園できるのは、症状がすっかりおさまって2日経ってから。
・急性出血性結膜炎:感染力が強いため、医師から許可が出るまでは登校・登園は停止。
アレルギー性結膜炎の症状と経過
おもな症状は、目のかゆみです。かゆくて目をこすっていると痛むようになり、放っておくと結膜が充血する、まぶたが腫れる、涙が出るなどの症状が見られることもあります。ただ、細菌性やウイルス性の結膜炎と違って、たいてい目やには出ません。さらに悪化すると、角膜の周囲が充血して、結膜にゼリー状の目やに(偽膜)が出てきます。
アレルギー性結膜炎は細菌やウイルスへの感染によって起こるものではなく、アレルギー反応によって引き起こされる疾患です。アレルゲンを物理的に避けたり、薬物治療を受けたりしながら、症状を軽くしていくことになります。
子供の結膜炎、診断方法は?
結膜炎が疑われる場合、眼科を受診すると医師は症状を聞いたり、目に光を当てながら細隙灯顕微鏡(細隙灯という拡大鏡)で目の状態を見たりすることで診断します。細菌性やウイルス性の結膜炎では、目やにや涙の培養検査などを行って、原因を調べることもあります。
アレルギー性結膜炎の場合は、充血、かゆみの具合や結膜の状態から診断しますが、涙の中のアレルギー抗体を調べる検査を行い、アレルゲンが何かを特定することもあります。
子供の結膜炎の治療法は?
結膜炎の治療には点眼薬が使われますが、薬の成分や使い方は結膜炎の原因によります。
細菌性結膜炎の治療法
因菌を調べて特定し、その細菌に効く抗生物質の点眼薬を使って治療します。この病気は予後がよく、たいてい1 週間以内に治るのですが、長引いたりくり返したりするときは、さかさまつげや涙嚢炎といった目の病気が疑われます。
ウイルス性結膜炎の治療法
ウイルスが原因の結膜炎は、特効薬がありません。治療はウイルスに対するものではなく、症状に応じた「対症療法」が行われ、炎症を抑える目薬や細菌への二次感染予防のための薬などが処方されます。
なお、乳幼児は角膜の炎症がひどくなることがあり、症状がおさまっても角膜に濁りが残って弱視になるおそれがあります。医師の指示通りに薬を使い、完治するまで定期的に受診して医師にチェックしてもらうことが大切です。
アレルギー性結膜炎の治療法
治療には、抗アレルギー作用のある目薬が使われます。抗アレルギー点眼薬は2種類あり、一つはかゆみを起こすヒスタミンという物質の働きを直接抑える薬で、かゆみの強いときに使われます。もう一つは、かゆみを起こす物質が増えないようにする働きのある薬ですが、効果が出るまで約2週間かかるため、症状が現れる前から使用します。さらに、症状が重い場合には、ステロイド点眼薬や抗アレルギー作用のある内服薬が使われます。
子供の結膜炎に市販の目薬を使ってもいい?
目のかゆみや炎症を抑えるための目薬は、子供用もいろいろ市販されています。でも、結膜炎の原因が分からずにかゆみや炎症を抑えても、根本的な治療になりません。結膜炎が疑われるときは、原則として眼科を受診し、原因がはっきりしてから適切な薬を使って治療することが大切です。
子供の結膜炎の予防法・対策は?
細菌性やウイルス性の結膜炎は感染症のため、かかった人も周囲の人も対策が必要です。アレルギー性結膜炎はアレルギーの症状を軽くするような対策をしていきましょう。
細菌性結膜炎、ウイルス性結膜炎の予防法
細菌性やウイルス性結膜炎は、涙や目やにに触れたりすることで、人から人へ感染します。また、感染した方の目から逆側の目へうつることも多く見られます。特にウイルス性結膜炎(はやり目)は感染力がとても強いので、家族や周囲にウイルス性結膜炎の患者がいるときは、以下の方法で予防に努めましょう。
アレルギー性結膜炎の予防法
季節性の花粉症と通年性の場合で、それぞれ適切な方法があります。
季節性(花粉症)の場合
通年性の場合
まとめ
細菌性やウイルス性の結膜炎は多くの場合、点眼薬などによる治療をすることで、多少時間はかかってもだんだん良くなっていきます。アレルギー性の場合は、アレルゲンをできるだけ排除するなど、医師の指示に従って症状をできるだけ軽くするよう治療していきましょう。
なお、結膜炎の中には感染するものもあります。特にウイルス性結膜炎は感染力がとても強いので、周囲の人への感染拡大を防ぐよう努めることも大切です。重症化すると弱視につながることもあるので、結膜炎が疑われたり症状が悪化していると感じたら、すぐに眼科を受診して適切な処置を受けてくださいね。
(文:村田弥生/監修:丘逸宏 先生)
※画像はイメージです
[*1] 日本小児眼科学会「1. 感染性結膜炎 1-1 細菌性結膜炎」
[*2] 厚生労働省 「感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について」「流行性角結膜炎」
[*3] 日本眼科医会「5.流行性角結膜炎」
[*4] 厚生労働省「咽頭結膜熱」
[*5]東京都感染症情報センター「咽頭結膜熱」
[*6]厚生労働省 「感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について」「急性出血性結膜炎」
[*7]東京都感染症情報センター「急性出血性結膜炎」
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます