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2021年01月15日 15:17 更新

【医師監修】子供のはやり目、視力への影響は?感染経路、治療法と予防について

「はやり目」は急に目が赤くなって、人から人へ感染します。昔から多い眼病のひとつで、子供の場合、保育園・幼稚園や学校で感染し、それが家族内に広がることも。今回ははやり目の原因と治療法、感染予防方法について解説します。

はやり目ってどんな病気?

はやり目は、読んで字のごとくウイルスによって引き起こされる “目の流行り(はやり)病” です。

ウイルスによる目の病気

ウイルスのイメージ画像
Lazy dummy

はやり目を起こすのは「アデノウイルス」というウイルスです。

アデノウイルスによる目の感染症は、国内で年に100万例発生しているとの試算もあり、ウイルス性結膜炎の9割を占めます[*1]。ウイルスのタイプによって少しずつ症状が異なりますが、多くは結膜の炎症として現れます。

結膜は病気が起こりやすい場所

結膜とはまぶたの裏側と眼球の表面(白目)をつなぎ合わせている粘膜です。結膜は目を開いている限り常に外界にさらされているので、ウイルスなどが付着しやすいという特徴があり、はやり目(流行性角結膜炎)が多い理由です。

子供の間で夏に流行。でも大人にも発症する

はやり目の治療薬を目に点下する子供
Lazy dummy

はやり目は、1~5歳ぐらいの子供たちの間で、8月を中心とした夏によく流行します。ただし、夏以外の季節にみられることもあり、また、大人が発症することもあります。

アデノウイルスは種類がたくさん。目のほかの病気を起こすタイプも

はやり目の原因となるアデノウイルスの種類は1つではなく、多くのタイプが存在しています。そのうち、はやり目を起こすのは主として8型ですが、19型、37型なども原因になります。

アデノウイルスによって引き起こされる病気には、プール熱(咽頭結膜熱)や胃腸炎、肺炎などがあります。

はやり目の症状は?

はやり目をもつ目をとじた子供
Lazy dummy

はやり目の症状を少し詳しく解説します。

白目やまぶたの裏が赤くなり、まぶたの腫れや涙目に

はやり目は急に症状が出ることが多く、結膜(白目)が充血し、涙や目やにが増え、まぶしく感じたり、まぶたが腫れたり、目がゴロゴロする異物感があって、痛みを伴います。

両目に起こることが多い

はやり目を起こすアデノウイルスは感染力が強いウイルスで、ほとんどの場合、最初に発症した片方の目からもう片方の目にうつってしまいます。症状は通常、最初に発症した目に強く現れます。

耳の下が腫れ、熱が出ることもある

はやり目では、結膜炎に加え、耳の少し前あたりのリンパ節が腫れて痛むことがあります。
子供では熱も出ることが多いです。

治るまで少し時間がかかる

はやり目の原因であるアデノウイルスに対する治療薬はなく、体の抵抗力で治るのを待つしかありません。治るまで1~2週間、場合によっては1ヶ月ぐらいかかることもあります。

まれに視力低下が残ってしまうことも

はやり目はほとんどの場合、健康上の問題を残すことなく治る病気です。

しかし、角膜に強い炎症が起きてしまった場合には、角膜が濁って透明度が低下し視覚に影響が生じてしまうことがあります。角膜の濁りがなくなるのに数年もかかったり、濁りがさらに長引くこともあります。

また乳児では、細菌の混合感染で角膜に穴があいてしまう(角膜穿孔)ことがあり、そのままだと失明のリスクがあります。

はやり目に似ている病気に要注意

ママに介抱されるはやり目をもつ子供
Lazy dummy

結膜炎を起こすウイルスはアデノウイルスだけではありません。

例えば出血性結膜炎といい、結膜が真っ赤になる病気は、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスが原因で起きることがあります。

また、はやり目とは別のタイプのアデノウイルスによって起きるプール熱(咽頭結膜熱)では、結膜炎の症状だけでなく、のどの痛みや発熱、全身のだるさ、下痢などを伴います。

そのほか、ヘルペスウイルスや、クラミジアという細菌感染症でも、はやり目に似た症状が現れます。

はやり目はどうやって人にうつる?

はやり目は「はやる=人から人へと感染する」ことが特徴の1つ。ここでは、はやり目がどのように感染するのかを解説します。

アデノウイルスは感染力が強い

はやり目の原因であるアデノウイルスは、感染力が強いため、保育園・幼稚園や学校、職場、病院、家庭内などの人が密接する環境では、容易に感染が広がります。

手や指を介した接触感染が多い

はやり目の病原が接触感染するドアノブ
Lazy dummy

感染経路は主に接触感染です。

接触感染とは、手や指、ドアノブ、手すり、タオル、洗面具などを介してウイルスが伝播する感染のこと。感染した目に触れた手指などにウイルスが付着し、それが他の人の目に触れることでうつるのです。

潜伏してから数日~2週間後に発病する

ウイルスに感染したらすぐに発病するわけではなく、症状が現れるまで数日から長いと2週間ほどの間があります。

角膜の炎症と二次感染を予防する

はやり目はどのように治療するのでしょうか。

「はやり目かな」と思ったら、まず眼科に電話

充血などの症状が出て、「もしかして、はやり目?」と疑ったら、早めに眼科を受診しましょう。はやり目は予後の良い病気ではあるものの、角膜の障害や失明のリスクもあるため、より専門の診療科のほうが良いからです。

また、感染力が強いため、いきなり受診するのではなく、眼科に電話して「はやり目かもしれない」と伝えた上で、指示に従って受診してください。

症状にあわせて治療していく

はやり目の治療薬を目に点滴される子供
Lazy dummy

さきほども少しお話ししましたが、アデノウイルスそのものに対する薬はなく、ほとんどの場合自然に治ります。

治療は、その自然治癒を補うように、症状にあわせた対症療法が行われます。例えば、結膜の炎症を抑えるための抗炎症薬を点眼するといったことです。また、ウイルスに加え細菌感染の合併を考慮し、抗生剤の点眼も行います。

なお、角膜にも炎症が及んでいる場合は、より強い抗炎症作用のあるステロイド薬を点眼し、角膜の濁りの予防や治療を行います。

点眼薬の容器が目につかないように注意!

点眼の際には、薬の容器の先端が目に触れないように注意してください。容器の先が目に触れてしまうと、点眼液が汚染されてしまうからです。また、点眼は、症状のあるほうの目だけにしてください。

まだ自分で点眼できない子供の場合、頭を膝枕するなど点眼しやすい姿勢をとって、保護者がさしてあげてください。点眼の際に目をつぶってしまいがちですが、目の周りを清潔なカーゼなどできれいにし、目頭付近に薬液を落としましょう。まぶたの隙間から目の中に薬が入っていきます。点眼の前後に手をよく洗うことも忘れずに。

家族やほかの子どもへの感染を防ぐ!

はやり目対策として手をしっかり洗う子供と親
Lazy dummy

繰り返しになりますが、アデノウイルスは感染力がとても強いので、ほかの人にうつさないための対策が重要です。

手をせっけんと流水でよく洗い流し、タオルなどは個人専用として共有しないことです。ウイルスは目には見えませんが、ドアノブや手すり、机、椅子、衣服など、患者さんが触れるすべてのものに付着している可能性があります。

目やにや涙が出ると子供は手で拭ったりしがちですが、ティッシュペーパーなど使ったらそのまま捨てられるもので拭き取って、すぐに処分しましょう。

医師の許可を得てから登園・登校

はやり目は、第3種学校伝染病に指定されていて、診断時点で登園・登校が禁止されます。医師が伝染の恐れがないと認めるまでは、病気の治療に専念しましょう。登園・登校の再開はそれからです。

まとめ

はやり目の治療が完了した子供の瞳のイメージ
Lazy dummy

はやり目は、基本的には予後の良い病気です。ただし感染力が強いため、もしかかってしまったら周囲の人にうつさないよう手洗いに努め、タオルなどの共有はやめましょう。また、まれなことですが、角膜に障害が残ってしまうこともあります。早めに眼科を受診しましょう。

(文:久保秀実/監修:梁尚弘先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]医学書院「標準微生物学 第13版」p.393,2018

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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