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2024年02月20日 07:07 更新

小さなころから家庭で役割を持たせると、社会性が育つ!【おうちモンテッソーリ】北川さんインタビュー#2

かわいい我が子のためには、なんでもやってあげたい!  そんな気持ちは親なら誰しも持つものでしょう。しかし、その「親がなんでもやってあげる」の方向性を誤ると、子どもの成長を邪魔してしまいかねない状況に……!?

10年以上の保育園・幼稚園での現場経験を持ち、国際モンテッソーリ協会0-6歳ディプロマもある北川真理子さん。2023年に男の子を出産された3児の母でもある北川さんは、『ゆる~く楽しく続く!おうちモンテッソーリの知育あそびアイデア帖』(日本文芸社)など、子どもの育ちに役立つ本を多数書かれています。

インタビュー連載(全3回)の第二回となる本記事では、前回の「乳幼児期に大事なこと」に続き、北川さんに「子どもの“やりたい・できた!”の大切さ」についてお伺いしました。

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お話をしてくださった方
北川 真理子 さん
(国際モンテッソーリ協会0〜3歳/3〜6歳ディプロマ、元幼稚園教諭・保育士)

おうちで育む 子どもの「やりたい!」「できた!」の気持ち

―― モンテッソーリ教育を実践するうえで、家庭生活で大切にしたいことはどんなことですか?

北川真理子さん(以下、北川) 家庭で一番大切なことは、「家族の一員として過ごすこと」です。家族という枠組みの中で生活することによって、協調性が養われます。また人のために何かをして感謝されることで、自分は誰かの役に立つ人間なんだ、と感じることができます。

―― 家族の一員として家事も分担して、できたら「ありがとう」と感謝を伝えるのがいいのですね。

北川 そうですね。家族はお客さんではありません。お客さん=何でもやってもらえる存在になると、成長して社会に出たり家庭を持ったりしてからも「やってもらえてあたり前」と思ってしまうでしょう。

家族は誰かが一方的にやってもらうのではなく、協力しあう存在です。子どもが小さくても、よちよち歩きでも、食卓にスプーンを運ぶことはできます。みんなで家のことをやることで協調性も育ちますし、家族に「ありがとう」と言われることで、「自分は役に立つ人間なんだ」「お母さん、お父さんに感謝された、自分はすごいぞ!」と思います。そうやって大人になると、自然と人の役に立つようなことができるようになります。小学生になったらクラスや友だちのために自ら動いたり、中高校生になったらボランティアなどで誰かのために、働き始めたら社会や仲間・会社のために、結婚したら家族のために……と、人のために何かができるような人になっていくんです。

―― 家族の役に立つことを経験しながら育つことで、人のために自分から動けるようになるのですね。

―― 書籍では、日常生活の練習としてバナナやリンゴを切ることが紹介されていました。これも家族のために切って食べさせてあげることで、自分が役に立つ人間だと思えるということでしょうか。

北川 子どもと料理をするメリットは、料理を覚えることではありません。おままごとをやり始める時期の子どもは、本物でやったらとにかくうれしい。「こんなのできた!」とうれしいんです。そんなとき、家族みんなで作った料理を食べて「今日は〇〇くんが作ってくれたごはんおいしいね」などと褒められると「感謝された、誰かの役に立った」とすごい自信につながりますね。

役に立つことは、ちょっとしたことでもいいんです。和え物で材料を入れて混ぜるだけでもいい。食育にもつながりますし、調理は工程が多いこともポイントです。おもちゃで遊ぶことは、そんなに工程は多くないものです。料理をすると材料を出して、切って、作ったら運んで、とただ座って遊ぶよりも多くの工程をこなすことになります。小さいうちから料理をしていると、ものごとを順序立てて考えることができるようになりますよ。いきなりすべてすることはハードルが高くても、まずは一緒に準備をするところから始めて、次は1工程だけでもいいんです。それで様子を見てできるようであれば、もっとお願いする工程を増やしていけばいいと思います。

『ゆる~く楽しく続く!おうちモンテッソーリの知育あそびアイデア帖』より

―― おもちゃでなく、大人と同じ本物を使う体験が大切なんですね。

北川 大人はおもちゃを使わないし、生活に、生きるために必要なことしかしないものです。子どもは好きでおままごとをやったりしますが、本当の料理をやらせてあげると子どもも一人前になれます。すると達成感を味わうことができて、自立心を育てることにもつながります。それが大きな自信となって、その自信が次に挑戦する心になるんです。

―― コップやお皿は割れるものを使うこともモンテッソーリの基本となっていました。

北川 自分でコントロールができない1歳くらいの小さなお子さんが食器洗いをするときは、木製の食器ではじめてもいいと思います。気をつけて両手で持つことができるようになったら、陶器を持たせてあげるといいですね。ただ割れるものといっても、うすはりのような割れやすいものは危険でもあるのでおすすめできません。

―― 大人がある程度危険を除きながら、本物を使わせるということですね。

北川 大人もプラスチック製の食器はぞんざいに扱いがちです。これがガラス製になると、割れないようにそっと扱ったり、やさしく置いたりしますよね。それを子どもは観察しているんです。

―― 大人の行動を見て学んでいるなら、食器は日頃から気をつけて扱うものを使っていきたいですね。

北川 そうですね。子どもは本当に大人をよく見ているので。

「自分でおそうじできる!」が挑戦できる心を作る

―― おそうじには、まちがいの自己訂正の効果があるとのことでした。

北川 親御さんは普通、子どもがこぼしちゃうから、ばらまいてしまうからやらせたくない、と思うことがありますよね。モンテッソーリ教育を実践する親や先生はその逆で、むしろこぼすから・バラバラにするからやらせたい!と思っているんです。こぼしたら「こぼしちゃったね!」と言って、でも先生は実は喜んでいるんです。そのあと「これはこうやって拭くんだよ」とか、「これは拭いてもとれないから、バラバラになったからホウキではこうね」、などと言って、「間違ってもいいんだよ」という想いを伝えることができるから。「間違えてしまっても、自分で戻せればいい」ということを行動として伝えていますし、精神的な面でも「間違えてもいいんだよ、元に戻せれば大丈夫だよ」と伝えることになり、大人になっても間違えてもへこたれない、もう一度やってみよう、という精神を作っていくことになるんです。

―― 親は、子どもが何か失敗したら教えるチャンスと思った方がいいのですね。

北川 そうなんです。だから何かやらせてあげる前に、まちがいの自己訂正をできる環境を作っておいた方がいいですね。ふきんを子どもの手の届くところに置いたり、子どもが使えるようなホウキや塵取りを用意したり。

―― なるほど。失敗しても自分でリカバーしてくれれば、大人も助かりますね。

『ゆる~く楽しく続く!おうちモンテッソーリの知育あそびアイデア帖』より

子どもの「自分でしたい!」を応援するには

―― 子どもの「自分でしたい」という気持ちも大切とのことでした。

北川 自分でやりたい気持ちが育つと、自主性や主体性が育っていくので、最終的に自分の人生を切り開いていくことができるようになります。「自分はこうしたい」という想いがあることで、大人になってからも自分で人生を選んでいける。自分で選ぶことができていないと、「お母さん何したらいい?」と親に判断をゆだねたり、「お父さんがこう言ったから」と人のせいにしてしまったりする原因になります。自分で選択すること、自分から選んでいくことは、その子自身が幸せになるためには必要なんです。それでもしうまくいかなくても、自分で選んだから仕方ない、選んだことを一生懸命やろうと、前向きになれるので。

―― 小さい子でも、自分で選ばせることが必要ですか?

北川 そうですね。モンテッソーリでは自己選択、自分で選ぶことを大事にしています。たとえば、寒いのに自分で半袖を選んで着てしまう場合。外に出て寒い想いをしたら、親は「だから言ったのに」となりますよね。でも子どもは実際に経験することで、「今日は寒いから長袖を着よう」となって、自分から考えて選べるようになっていきます。そこで思考や決断力が育っていくんです。大人が仕事をする上でも「これがいいな」「こうしてみよう」などと、自分で考えて選びますし、これは生きるうえで必要な能力です。子どものころから自分で選んで結果を体験する、それが子どもにとって必要な経験です。それがあるからこそ、大人になったとき、この人と結婚しよう、この会社に就職しようなど、自分で大きな決断をすることができるのです。

北川 小さいときから自分で選択をしてこなかった、全部親が決めてきたという場合、いざというときに、自分で選択ができなくなります。どうしていいのかわからず、悩んで選択を先送りにしたり、正しい選択ができなくなったり。小さいときから選択をして結果を体験して「こうだったからああしよう」と思考回路を作ることが大切です。特に0~6歳はそれが大切な時期ですね。ただ、寒い日に半袖で出て行って風邪をひいてはかわいそうなので……可能な選択を与えてあげるのがいいです。夏服は片付けて、冬服の中から選ばせる、ということが大事になってきます。

―― その選択は、AかBの2択でもいいのでしょうか?

北川 小さいお子さんは選択肢が多すぎると選ぶことができません。2歳くらいまでは2択で大丈夫です。「Aがいい?それともBがいい?」「お父さんと行く? お母さんと行く?」など、「どっちがいい?」という枠が大事です。ただ2歳後半~3歳になってくると、「Aがいい?Bがいい?」と聞いても「Cがいい」と言ってくるんですよ(笑)。どの選択肢の中から選ぶといいのか、子どもが判断できるようになったら、もう2択は必要ないでしょう。そうなると、選択肢の数を増やしたり、どの服がいい? と聞いたりしても子どもが選べるようになってきます。

―― なるほど。イヤイヤ期の子にも選ばせるといいんですね。

北川 そうなんです。イヤイヤ期はお父さん・お母さんがああして、こうしてというのに対して、僕は・私は自分の意見があるんだ、と主張するためにイヤイヤをするんです。2択で自分で選ばせてあげると、イヤイヤも減るでしょう。

―― 子どもに選ばせるとき、迷って時間がかかったりしたらつい口を出してしまいそうです。特に「教えてあげなきゃ!してあげなきゃ!」という想いが強いタイプの親御さんは、どうすれば子どものサポート役に回れるでしょうか。

北川 「子どもは何もできない」「やってあげないとできない存在」ってほとんどの人が思い過ぎていると思います。それで、やらせる機会を与えない。親は伝えたり教えたりしつつ、「1回やってみる?」と言ってやらせてあげると、徐々にお子さんを信じられるようになってくると思います。

そもそも0~1歳は何も知らない時期。何が当たり前がわからなくて、当たり前を作っている時期です。この時期は教えてあげることが必要です。1~2歳で家の中のことがわかるようになると、外のことが知りたくなる時期に入ります。このときに「外ではこうするんだよ」とマナーを教えてあげると、どんどん身についていきます。そうやって必要な時期に教えてあげるのは大切なことです。ただ、教えてあげるけれども、「ほら、じゃあ今やって」などと押しつける必要はありません。子どもは理解できれば自分でするようになってくるので、見守るのが大事ですね。

そうやって日頃から伝えながら「やってみる?」などと言ってやらせてあげましょう。やらせてあげてそれができれば、「子どもってこんなにできるんだ」と親も気づいて、尊重してあげられるようになるでしょう。

―― なるほど。親も実践あるのみですね。

北川 先ほどの2択での自己選択も実際に選ばせてあげることで、親の方も「子どもにはちゃんと意思があるんだ」というマインドになっていくでしょう。

―― ありがとうございます。次回は、おもちゃの選び方や与えるタイミングについてうかがいます(2024年2月21日朝7時ごろ配信)。

(解説:北川真理子、文:佐藤華奈子、取材:マイナビ子育て編集部)

※画像はイメージです

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