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2023年09月23日 07:07 更新

「生きる力」ってどんなもの?学校の成績じゃ計れない「数学力」とは|植野義明氏インタビュー<前編>

数を数えること、空間を認識すること、量の感覚を捉えること……こうした数学の基礎となる力は、実は幼児期に発達するのだそう。もっと成長してからでは遅いかもしれません。書籍『子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ』の著者・植野義明先生に、幼児のうちに伸ばしておきたい「数学力」についてお話をうかがいました。

これからの時代を生き抜くために、子どもたちには自分で考えて判断する力を培ってほしいですね。数学力もそのひとつ。データを正確に読み取り、先を予測する力はなるべく育ててあげたいものです。そんなときにおすすめの書籍が『子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ』。2歳から6歳の幼児期に親の声かけで数学力を養う方法がたくさん紹介されています。

今回、著者の植野義明先生に数学力について詳しくお話をうかがいました。

学校の成績とは違う「数学力」ってなに?

植野先生
▲数学を教えて35年、現在も東京大学で教鞭を執る植野先生は、その経験から幼児期から数学的な力を育むことの重要性を感じ、東京・国立に『くにたち数学クラブ』を設立。“数学が好きになれる場所”として、幼児から60代の大人までが通っている。


――まず、「数学力」は、どんな力なのでしょうか?

植野先生 わたしが考える子どもの数学力は、いわゆる学校の教科としての数学の学力とは違います。それは子どもが身の回りのいろいろな現象に触れながら、それぞれの心の中に自分の数学の世界を作り、それを広げていく能力です。

――ただ勉強をして問題を解くよりも、高度な力ですね。そんな力を家庭で身に着けるのは、難しそうに思ってしまいます。

植野先生 実はこのような力は、人間には生まれながらに備わっています。子どもは環境さえ整えば、本能に従って自然にその能力を発揮するようになり、そのとき本源的な喜びを感じるようにできているのです。

――もともと持っている力で、環境さえ整えれば伸ばすことができるなら、ぜひ声かけを実践していきたいですね。

今後の世の中では数学力も必須に

――今、従来の理系と文系の壁が取り払われる傾向にあるそうですね。

植野先生 これからの社会では、理系の分野だけでなく、いわゆる文系の分野でも、数理的な考え方がますます重要になっていきます。たとえば、現代の政治学も経済学も数学なしでは考えられません。高度で抽象的な数学を応用したテクノロジーはますます生活を便利にするでしょう。その技術を支えている数学について、初等数学に関係する部分だけでも理解しておくことは、そのテクノロジーを使うのか使わないのか、使うとしたらどこまで信頼して使うのかを決める上で役に立つでしょう。

――確かにこれからの社会では、テクノロジーをどこまで応用するのか、その判断は理系・文系を問わず重要になってきますね。

算数・数学の教育にも大きな変化が

木箱
▲教室にある木箱。上から木の玉を入れると、心地いい音を立てながら箱の内部を転がり落ち、下の2つの引き出しへランダムに振り分けられる。「上から5つの玉を入れて……ほら、右の引き出しには3個入ってるね。では左の引き出しには何個入ってるだろう?」と、子どもに問いかけると、楽しみながら数学的な考え方が身についていく。


植野先生 教育現場での算数・数学の教え方も大きく変化しています。
大きな違いのひとつは、算数と数学の間にあった垣根が取り払われようとしていることです。現在の指導要領のキーワードのひとつに 「数学的活動」という言葉があります。新しいカリキュラムでは、教科名は算数でも、その中でやっていることは数学なのだという意識改革が進行し始めているといえます。

例えば、未知数をxと置いて方程式を立てることは、これまでは数学の問題でしたが、現在では算数でも教えられています。また、分数は従来は小学校の高学年で教えていましたが、現在では1/2、1/3などの簡単な分数を低学年でも教えられています。

変化の2つめは「データの活用」領域が新設され、「統計」の内容が充実されたことです。このことから、算数で学習したことが単なる知識で終わるのではなく、生活や社会に直結し、その中で生かせる人間になることを目標としていることが読み取れます。

変化の3つめは「アクティブ・ラーニング」「主体的・対話的で深い学び」という言葉に見られます。現代の指導要領では、すべての科目で主体的に問題を見つけ、解決法を探求することが目標とされています。また、探求によって発見したこと、考えたことを対話を通して言葉で伝えること、単に問題を解くだけでなく、問題が解ける原理まで遡って深く理解することが求められています。

――学校の算数や数学でも、数学力が重視されつつあるのですね。

授業
▲長いパンから「0.3」を切り出す幼児クラスの授業。「どのくらいだと思う?」とまずは問いかけることで、子ども自身が予想し、考え、気づく。

数学力は幼児期に育つ

――数学力が今後ますます重要になることがよく分かりました。この力を伸ばすには、なぜ幼児期からの働きかけが必要なのでしょうか。

植野先生 子どもは学校に上がる前に膨大な時間を家庭で過ごします。その期間に獲得する数的な判断力、空間認識力、規則性に関する感覚などの能力が数学力です。これらの能力は子どもの感覚や直感、そして情緒と深く結びついて発達します。子どもにとっての数学力は学習して身につけるというよりは、家庭での生活、環境からの刺激や親との会話の中で自然に獲得するのです。

――幼児期は数学力を獲得するうえで大切な時期なのですね。生活や会話の中で獲得されるなら、親もそのポイントを知って接していきたいです。

植野先生 ぜひ、親子の会話の中で数学力を意識してほしいと思います。本書にも書きましたが、子どもの身体を作るのは食物から取り入れた栄養ですが、子どもの心を作るのは信頼できる親との間で交わされる会話であり、言葉なのです。

まとめ

植野義明先生にこれからの社会を生きるうえで大切な「数学力」についてや、その数学力が幼児期に発達することを教えていただきました。次回の後編では、数学力を育てる声かけのポイントをうかがいます。

(マイナビ子育て編集部)

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いつでもできる簡単な言葉がけで子どもの数学力(算数力)は大きく伸びます。

■子どもの数学的な力を育む「言葉のかけ方」をお教えします
子育てでは、子どもへの声がけや話しかけが、とても大切です。子どもを伸ばす、子どもが変わるなど、様々な話しかけ方の書籍があります。本書は、子どもの数学的な力が自然と育つ、言葉のかけ方、話しかけ方を紹介する初めての本です。

■考える力の「芽」を育てよう
小さな子どもの能力は無限大。幼少時にちょっとした声がけをしながら一緒に遊んだり、ゲームをしたり、実験をしたりすることで、考える力の「芽」はどんどん育ちます。
「こっちには何個入っているかな?」
「点をつないだら、何に見える?」
「これと同じ形はできるかな?」
「どうしたらいいと思う?」……などなど、
少しのきっかけを作ってあげるだけで、子どもの頭はフル回転しはじめます。

■2~6歳のいまだから渡せる一生モノのギフト
著者の植野氏は、数学を教えて35年の経験から、幼少時の習慣が数学(算数)の力を育てることを実感しています。日々、いつでもできる話しかけで、お子さんに生涯使える大きなギフトを贈ってあげてください。

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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