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2018年02月16日 18:44 更新

内閣府が発表「子育て安心プラン」とは?前倒しの背景や詳細について

平成29年11月、内閣府より「子育て安心プランを前倒しで進める」という旨の発表がありました。実はこの子育て安心プラン、子育て世代に深い関係があるとても重要な政策なのです。そこで今回は、子育て安心プランの詳細や、その背景となる問題点について解説します。

内閣府が発表した「子育て安心プラン」

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子育て安心プランは、平成28年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」の一環で、平成29年6月に首相官邸で行われた経済財政諮問会議においては、骨太方針に向けた議論を行っている段階でした。

しかし、同年11月には首相が所信表明演説で子育て安心プランを前倒しで進めることを表明、平成30年度厚生労働省の主要施策として予算概算要求が行われる見通しとなっています。そのような背景をふまえ、子育て安心プランの概要について説明します。


●首相官邸ホームページ「待機児童対策~これからも、安心して子育てできる環境作りに取り組みます!~」
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/taikijido/

子育て安心プランの概要

内閣府が発表する子育て安心プランでは、次の2つのことを目的としています。

1.待機児童の解消
待機児童解消に必要な受け皿約22万人分の予算を平成30年度~31年度末まで確保。遅くとも、平成32年度末までに全国の待機児童の解消を目標とする。

2.5年間で「M字カーブ」を解消
「M字カーブ(※)」解消のため、平成30年度~34年度末の5年間で女性就業率80%を目指す。そのために、約32万人分の受け皿を整備。

(※就業率を表すグラフの形状がM字になる現象のこと。女性が出産などを機に仕事を離れ、子供の成長後に再就職する人が多いことが主な理由です)

これらを柱として「6つの支援パッケージ」を設定し、全ての人が無理なく保育と仕事を両立する社会を目指すとしています。

●首相官邸ホームページ「子育て安心プラン」
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/taikijido/pdf/plan1.pdf

●内閣府ホームページ「資料2『子育て安心プラン』における保育の受け皿整備量について」
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/kijun_35/pdf/s2.pdf

背景となる問題について

子育て安心プランが前倒しとなった背景には、主に以下の問題があります。

1.1~2歳の待機児童が7割
女性の就業率は増加していますが、1、2歳の子供を受け入れる保育の受け皿不足により対象となる子供の7割以上が待機児童となっています。

2.「M字カーブ」
保育の受け皿不足が理由で仕事から離れざるを得ない女性はまだまだ多いです。そのため、出産・子育て中の就業率が落ちるM字カーブ現象も続いています。

3.都市部における深刻な待機児童問題
都市部では人口流入が予想を超えて増加し、保育園用地の確保が困難です。そのため、待機児童問題が深刻化しています。

以上の問題点から、子育て安心プランが前倒しされる運びとなりました。

これまでの取り組みで解消したこと

政府は女性の活躍促進のため、平成25年度より「待機児童解消加速化プラン」にもとづく取組みを進めました。その結果、保育の受け皿は平成25年~27年度の3年間で約31.4万人分増え、現在までに年平均11万人のペースで増え続けています。

それに伴い、平成28年12月までに女性の就業者の増加は約150万人、中でも0~3歳の子を持つ25~44歳の女性就業者数は17万人増加しました。子育て安心プランはこの「待機児童解消加速化プラン」をさらに強化する形となります。

●首相官邸ホームページ「待機児童対策~これからも、安心して子育てできる環境作りに取り組みます!~」
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/taikijido/

6つの支援パッケージとは?

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次は、子育て安心プランの軸となる6つの支援パッケージについて、首相官邸が公表している資料をもとに、詳しく説明します。

●首相官邸ホームページ「6つの支援パッケージ」
http://www.kantei.go.jp/jp/headline/taikijido/pdf/plan2.pdf

①保育の受け皿の拡大

まずは、保育の受け皿の拡大における取組みを紹介します。

●高騰した保育園の賃貸料補助(都市部)
●大規模マンションの保育園設置促進
●固定資産税減免の普及
●幼稚園の2歳児受け入れや預かり保育の促進
●国有地、公園、郵便局、学校等の余裕教室などの活用
●家庭的保育の地域共同体の普及
●小規模保育や病児保育など多様な受け皿の確保
●市町村ごとの待機児童解消の取り組み状況の公表
●広域的保育園等利用事業
●地域提携コーディネーターの活用促進

これらの取組みにより、保育の受け皿となる「場所」を増やします。

②保育の受け皿拡大を支える「人材確保」

次に、保育に携わる人材を確保する必要があります。そのための取組みがこちらです。

●処遇改善をふまえたキャリアアップの仕組みの構築
●保育補助者から保育士になるための雇用支援の拡充
●保育士の子供の預かり支援推進や業務負担軽減の支援
●市町村における保育人材確保対策への支援
●保育士の就職に向けた働きかけやその取組みの「見える化」
●福祉系国家資格を持つ人への保育士養成課程や試験科目の一部免除
●保育士の退職手当共済制度の継続検討

以上の取組みでは、保育士等の育成や職場環境の改善などの「人材面での支援」を行います。

③保護者への「寄り添う支援」の普及促進

保護者に対する育児支援についても明記されています。

●保護者に向けた、保育コンシェルジュによる出張相談などの支援拡大
●待機児童数調査の適正化
●妊娠中からの保育園等の入園申込みの明確化

これらの支援により保護者が仕事と子育てをより両立しやすい環境を整えます。

④保育の受け皿拡大と車の両輪の「保育の質の確保」

保育の受け皿拡大のためには、認可外保育施設等の活用も必要不可欠です。

●認可外保育施設の認可や保育園等の移行促進
●保育士配置基準の維持及び向上
●新たな保育所保育指針の施行
●認可外保育施設の情報の公表および事故報告の義務化
●保育園等の事故防止の取り組み強化
●認可外保育施設等の届け出においてICT化を推進
●災害共済給付の企業主導型保育、認可外保育施設への対象拡大

以上のような支援や取組みにより、保育の受け皿の拡充を図ります。

⑤持続可能な保育制度の確立

政府は保育制度の確立に関するコストにも言及しています。

●保育実施に必要な安定財源の確保

これが、冒頭でお話しした、「子育て安心プランの目玉となる待機児童解消に必要な受け皿約22万人分の予算確保」です。

⑥保育と連携した「働き方改革」

「6つの支援パッケージ」には、保育と連携した「働き方改革」も含まれています。

●保育園に入れない場合の育児休業期間の延長
●男性による育児の促進
●ニーズをふまえた両立支援制度の確立

具体的には、平成29年10月施行の改正育児・介護休業法にもとづき、保育園等に入れない場合は2歳まで育児休業の再延長を可能となる制度が新設されました。

また、同時に男性の育児参加を旨とする「子育て休暇」も新設され、子育て中の女性がより就業しやすい体制を整えつつあります。

まとめ

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今回は、深刻な待機児童対策として策定された子育て安心プランが前倒しとなった背景や詳細などについて解説しました。

政府はこの政策を掲げることで、安心して子育てできる環境づくりに取組むことを約束していますが、実際に待機児童が解消されるかどうかはわかりません。ただこのような取組みが行う政府の対応は評価できるのではないでしょうか。

そのような事情をふまえつつ、今後も子育て安心プランの行く末をしっかり見守っていきましょう。

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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