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2021年01月24日 16:21 更新

【医師監修】ビタミンK2シロップとは? 飲ませ方のポイント

赤ちゃんが生まれると、すぐに「ビタミンK2シロップ」という薬を飲ませます。これは、赤ちゃんが脳出血などを起こさないようにするためで、早い時期に飲ませることが大切な薬です。今回は、ビタミンK2シロップについて詳しく説明します。

なぜ、赤ちゃんにK2シロップを飲ませるの?

k2シロップの前にミルクを飲む赤ちゃん
Lazy dummy

「ビタミンK2シロップ」(以下K2シロップ)は甘みのある液体のお薬。出生直後から生後数ヶ月ごろまでの赤ちゃんが「ビタミンK欠乏性出血症」にならないよう、予防のために飲ませます。なぜなら、赤ちゃんはビタミンKが足りない状態にあるからです。

新生児はビタミンKが不足している

生まれたばかりの赤ちゃんは、なぜビタミンKが不足しているのでしょうか? 

胎盤を通りにくい

理由はいくつかありますが、まず、ビタミンKは胎盤を通過しにくいので、赤ちゃんがおなかの中でママからもらっていたビタミンKの量が少ないことがあります。

自分で十分な量を作れない

さらに赤ちゃんは、ビタミンKを作るために必要な腸内の細菌叢(いろいろな細菌の集まり)がまだ未熟なので、体内で十分な量のビタミンKを作り出すことができません。

母乳に含まれる量が少ない

また、母乳に含まれるビタミンKの量は少ないうえ、母乳を飲む量は個人差があるので、母乳を飲んでいる赤ちゃんがおっぱいから摂取できるビタミンKの量が限られてしまうのです。

こうしたさまざまな理由から、生まれたばかりの赤ちゃんはビタミンKが足りていないのですね。 ビタミンKが不足すると「ビタミンK欠乏症」となり、胃腸や頭蓋内などで出血を起こすことがあるので、赤ちゃんには予防のためにK2シロップを飲ませる必要があるというわけです。

「ビタミンK欠乏性出血症」とは、どんな病気?

「ビタミンK欠乏性出血症」は、赤ちゃんの体内のビタミンKが足りなくなることで起こる病気です。症状が出やすい時期は、「出生後24時間(早発型)」「生後1週間(古典型)」「生後2週間~3ヶ月ごろ(遅発型)」[*1]です。

①出生後24時間、または生後1週間で起こるビタミンK欠乏性出血症

「新生児メレナ」とも呼ばれ、生後2~4日ごろに起こるのが一般的です。ただ、早い場合には生後24時間以内に発症する赤ちゃんもいます[*2]。
メレナとは、もともと黒色便(黒く変色した血が混ざったうんち)を指す言葉です。症状はおもに皮膚や消化管からの出血が多く、注射や採血などをしたときに出血がなかなか止まらない、吐血する、血便が出る、などのことも見られます。

②生後2週間~3ヶ月ごろに起こるビタミンK欠乏性出血症

この時期のビタミンK欠乏性出血症は母乳栄養、または育児用ミルクとの混合栄養でも母乳の割合の多い赤ちゃんに起こります。
性別では男児が女児の2倍多く、また初夏から晩秋にかけて多く見られるといった特徴があります。①とは違い、この時期に発症したビタミンK欠乏性出血症は8割以上の子に頭蓋内出血が起こります。また、予後も悪く後遺症が残ったり命にかかわることもあるため、特に予防することがとても重要です[*1]。

なお、赤ちゃんの生まれつきの病気(先天性疾患である胆道閉鎖症など)でビタミンKが吸収できないケースもあります。母子手帳にある「便カラー」の1番から3番に近い色のうんちが出るようであれば、小児科を受診しましょう。

K2シロップを飲んで副作用はないの?

K2シロップについて「生まれたばかりの小さい赤ちゃんに薬を飲ませて大丈夫?」と心配になるかもしれませんね。

ヨーロッパ諸国では、嚥下性肺炎がこれまで3件起きたという報告がありますが[*1]、それ以外の副作用の報告はありません。また、日本で発売されてるK2シロップの内服では、副作用の報告がほとんどありません。

乳児期にビタミンK欠乏性出血症になると、重篤な場合は命にかかわることもあります。それを防ぐためにK2シロップは不可欠な薬なので、赤ちゃんに飲ませましょうね。

K2シロップはいつ飲む?

赤ちゃんにK2シロップを飲ませるタイミングや回数は、次のように決まっています。

原則は少なくとも3回

ビタミンK欠乏症の予防※としてK2シロップを飲ませる場合は、一般的に次のようなタイミングで3回飲ませます[*1]。

※K2シロップは予防のためだけでなく、発症した時の治療薬としても使われます。

3回とも、1ml(2mg)[*3]を口から飲ませます。

1ヶ月健診のときに育児用ミルクメイン(混合栄養の場合、飲む量のおよそ半分以上が育児用ミルク)になっている赤ちゃんの場合は、それ以降のK2シロップの投与は中止してよいとされています。これは、育児用ミルクに赤ちゃんに必要なだけビタミンKが配合されているためです。

なお、ママがビタミンKを多く含む食品を食べると、母乳に含まれるビタミンKの量が増えます。そこで授乳中のママは、納豆、小松菜、ほうれん草、シソなどの野菜、海藻類など、ビタミンKが豊富に含まれる食品を意識して食事に取り入れるといいですね。

3回投与した以降にも飲み続ける場合

一般には、K2シロップを3回投与すればほとんどの赤ちゃんのビタミンK欠乏性出血症を予防することができます。

ただ、日本やEU諸国の調査によると、3回の投与後にビタミンK欠乏性出血症を起こしたという報告例がありました。そこで近年では、さらに予防を確実にするため、生後3ヶ月まで[*1](育児用ミルクを飲んでいる赤ちゃんは生後1ヶ月まで)毎週1回K2シロップを投与する方法が勧められています。

また、低出生体重児や合併症のある赤ちゃんには、医師が状態や経過を見て投与の量や回数を決めます。

なお、治療のためにK2シロップを飲ませる場合は、通常1日に1回、1mlずつ飲ませますが、状況によっては1回の量を3ml[*3]まで増量することもあります。いずれにしても、自宅で飲ませることになった場合は、医師の指示を必ず守って投与しましょう。

シロップを飲ませる方法 吐いた・忘れたら?

自宅でK2シロップを飲ませる必要があるときは、下記のポイントを参考にして飲ませましょう。

赤ちゃんがシロップを吐いてしまったら?

せっかくK2シロップを飲ませたのに、赤ちゃんが吐き出してしまった、などということもあるでしょう。その場合は出した量も考えて、1回量の半分以下しか飲めていないようであれば次回の分を飲ませましょう。

なお、次回分を飲ませたり、シロップをこぼしてしまったなどで処方された分がなくなってしまったときは、早めにかかりつけ医に相談してください。

K2シロップ飲ませ忘れてしまったら?

家庭で規定の時間帯に飲ませるのを忘れてしまったときは、気づいたらできるだけ早く飲ませてください。そして、次回からはいつもの時間帯に飲ませればよいでしょう。くれぐれも、2回分をまとめて飲ませるのは避けてくださいね。

まとめ

k2シロップの量は医師に相談を。眠る赤ちゃん。
Lazy dummy

K2シロップは新生児に飲ませることが推奨されていますが、頻度や量は赤ちゃんの状態によって違ってきます。医療機関や医師の方針もあるので、処方に従って必ず飲ませましょう。

(文:村田弥生/監修:丘逸宏 先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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