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2024年04月21日 08:11 更新

赤ちゃんの定期予防接種、4月から4種混合が5種混合に&肺炎球菌が13価から15価に…今までと何がどう違う?

4月から定期予防接種の4種混合ワクチンが5種混合ワクチンになり、肺炎球菌ワクチンが13価から15価に変更になりました。そこで具体的には何がどう変わったのかを小児科医の森戸やすみ先生に聞きました。

■定期予防接種の仕組みと変更点

小児科で診察を受ける赤ちゃん(※写真はイメージです)
(※写真はイメージです)

定期予防接種の場合、お子さんの接種年齢(月齢)が近づくと、もらった予診票を持って医療機関で無料で接種することになっていますね(任意予防接種の場合、医療機関に予診票があります)。

この春は、定期予防接種の予診票が手元に届いて初めて「4種混合ワクチンじゃなくて、5種混合ワクチンなの?」「肺炎球菌ワクチンの種類が増えたの?」などと驚かれた保護者もいるかもしれません。

そもそも定期予防接種は、市区町村長が保健所を通して各地の医師会に委託し、医師会に所属する小児科や内科が実施するのが一般的です。小児科などの実施医療機関は接種後に予診票を医師会へと送り、医師会から接種料が支払われるという仕組みになっています。

ワクチンの接種間隔や回数などの接種の仕方も、医師は保健所からの文書で確認しますが、なかなか通達が来ないことがあります。今回、私のクリニックのある自治体の保健所の通達は遅く、もう少し早く変更点をウェブサイトや文書で知らせてもらえると、医療者はもちろん、保護者の方も戸惑わないのではないかと思いました。厚生労働省からのお知らせがとても遅いことが原因です。

さて、今回の変更では、4種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ)が、ヒブワクチンを加えた5種混合ワクチンに変更になりました。2024年2月以降に生まれた赤ちゃんは、生後2カ月から、原則として5種混合ワクチンを受けることになります。

もう一つ、肺炎球菌ワクチンが13価から15価に変更されました。これは13種類ではなく、15種類の型の肺炎球菌を防ぐことができるワクチンに変更になったという意味です。より幅広い効果が期待できるということですね。

■以前から世界では5種混合が普通だった⁉︎

こうして多種類のワクチンが混合されると怖いと感じる保護者の方もいるかもしれません。でも、ワクチンを混合したからといって、効果が落ちることも、副反応のリスクが上がることもないことが確認されていますから、安心してください。

実際、日本以外の先進国では、すでに5種混合、6種混合ワクチンが普通でした。ところが、日本では3種混合、4種混合、5種混合と段階を踏んで増やしています。これはなぜかというと、海外からの輸入に頼るのではなく、国産ワクチンを開発し、きちんと繰り返し治験を行ってから導入してきたからです。

もしもワクチンを製造せず輸入だけに頼ると、その感染症が世界的に大流行した際に手に入らなくなるリスクがあるため、やはり国内で作る必要があります。そして子供が接種する定期予防接種は、安全性をしっかり確認する必要がありますから、どうしても時間がかかってしまうのです。

混合ワクチンのよいところは、なんといっても子供が痛い思いをする回数が減るところ。予防接種は重要ですが、やはり針を刺すわけですから痛みがないわけではありません。また、予診票を忘れたりして起こる接種もれを防ぐためにも回数は少ないほうがいいでしょう。

それでも新しいワクチンに抵抗を感じる場合は、未接種のまま様子をみるのではなく、医療機関にあれば4種混合ワクチンとヒブワクチンをそれぞれ接種してもいいと思います。体調不良などの事情で時期がずれてしまう場合は仕方がありませんが、接種時期を遅らせると感染症にかかるリスクが高くなるため、先延ばしにはしないでください。

一方、ワクチンの接種は基本的に初回を踏襲することが推奨されていますから、4種混合ワクチンとヒブワクチンを別々に接種した場合は、そのままの形で続けましょう。ただ、途中で5種混合ワクチンに変更しても問題があるというわけではありません。

■予診票が届いたら早めに接種しましょう

現在、麻疹が話題ですが、MRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチン)が逼迫しています。MRワクチンは日本国内の複数の製薬会社が生産していますが、このうち1社のワクチンが国内の承認規格基準を満たしておらず、回収されたためです。また海外から国内に感染を持ち込んだ例が相次いだために、MRワクチンを接種する人が急増したからでもあります。

じつはワクチンは、製薬会社が厚生労働省に事前届け出をした生産数(子供の数から計算)・出荷ペースで計画的に作られています。届け出通りにしなくてはならないので、急に生産数を増やしたり、出荷ペースを早めることは難しいのです。

ですから、何らかの感染症が流行し始めてから接種するのでは、速やかにワクチンを接種できない恐れがあります。定期予防接種の予診票が手元に届き、接種可能な年齢・月齢になったら、早めに接種しましょう。お子さんを感染症から守るためにも、また全員が接種するためにも大切なことです。

MRワクチンの接種時期は第一回が1歳代。そして第二回は小学校入学前の1年間 (6歳になる年度の4月〜3月までの間)です。しかし第二回のMRワクチンを3月末に駆け込み接種する人がとても多いと感じています。

「後にしよう」と置いておくと、なんでも忘れてしまいがちですよね。そして、3月末に受けようと思っていたら、熱が出て受けられなくなったという子もいます。定期予防接種を無償で接種できる期間には決まりがありますから、後で慌てないようにしましょう。

もしも予診票をなくした場合は、保健所に連絡すれば再発行してくれます。なんらかの理由で標準的な接種時期を逃した場合も、一部が自費になるかもしれませんが、キャッチアップ接種することはできますから、ぜひ保健所に相談してみてくださいね。

(監修=森戸やすみ/取材・文=大西まお)

■森戸やすみ
小児科専門医/どうかん山こどもクリニック院長。
一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都谷中のどうかん山こどもクリニック院長。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本の発表に意欲的に取り組んでいる。『子育てはだいたいで大丈夫 小児科医ママが今伝えたいこと! 』(内外出版社)、『祖父母手帳』(日本文芸社)など著書、監修多数。

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