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インフルエンザと異常行動の話【ママ女医と娘の○○な日常 vol.22】

インフルエンザと異常行動の話【ママ女医と娘の○○な日常 vol.22】

先日報道で、インフルエンザと異常行動についてのネットニュースがいくつか出ましたが、不適切なものも見かけましたので、簡単にご説明します。


記事の著者  
のんびり子育て中のママ女医   HAL先生
内科医。大学病院研修中にうつ病を発症し、数年間療養生活を経て復帰。その後、病気の間支えてくれた医者の夫と結婚し、娘を出産。現在は田舎で夫、3歳の娘と暮らす。自身の出産・育児の日々をもとに、医学的なエビデンスを交えて育児情報・ニュースなどをブログで発信。またTwitterでは、娘との会話や、ほっこりあたたまる育児エピソードも紹介し、注目を集めている。
http://halproject01.blogspot.jp/
https://twitter.com/halproject00

インフルエンザと異常行動の関係

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2005年にインフルエンザと診断されタミフル®を飲んだ14歳の男児が、9階の自宅から転落死した事が報道され、大きな騒ぎとなりました。他にもトラックに飛び込むなどの事例や、その後も更に転落して骨折するなどの事故が相次いだ事から、厚労省は「因果関係は不明だけれども、慎重を期して、10歳以上の小児にはタミフル®の使用を当面差し控えること」といった緊急安全性情報を出しました。これをうけ、小児科学会もその判断を受け入れるという見解を出しました。

その後、様々な調査が行われました。最初はタミフルだけと思われていた異常行動ですが、その他の抗インフルエンザ薬を服用している場合でも起こっている事がわかりました。更に抗インフルエンザ薬とは関係のない解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン)などを服用していても起こっており、なんと、なにも薬を服用していない場合でも異常行動を起こしている事がわかりました。

様々なデータを解析した結果、どうやらどれかの薬が原因で異常行動が起きているわけではないようだ、という事がわかりました。

2016年3月31日までの異常行動についてのデータをとりまとめた研究結果も出ています(※)。

この結果でも、薬剤の種類や使用の有無と異常行動の関連ははっきりしませんでした。ただ一つだけはっきりと言えるのは、「インフルエンザにかかった時は、薬の使用には関係なく異常行動を起こす可能性があるため、注意が必要である」という事です。

(※厚生労働省ホームページ「インフルエンザ罹患に伴う異常行動研究」http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000142736.pdf

どうしてインフルエンザで異常行動が起きるのか?

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どうして異常行動を起こすかは、原因ははっきりしません。インフルエンザ脳症ではないかという説も流れましたが、インフルエンザ脳症でも確かに異常な言動は認められますが、そうでない子でも異常行動が認められました。

また、熱せん妄と言って乳幼児が熱を出した時に、なにかを怖がったり、うわごとを言ったりという言動が見られる事があります(これは経験した方も少なくないのではないでしょうか)。インフルエンザでは当然発熱しますので、こういったものも含まれている可能性もあります。

インフルエンザの異常行動の対策は?

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異常行動としては、様々なものが認められています。

突然走り出す、窓から飛び降りようとする、突然会話が通じなくなる、怖がる、幻覚を見る、うわごとを言う、わめく、はねる、興奮状態になる、うろつき回る、無意味な動作を繰り返す……など。
10歳前後の男の子に多い傾向がありますが、〜10代の幅広い層で認められています(20代でも報告があります)。

また、これらの異常行動は、発熱後24〜48時間に多く認められる傾向があります。そのため「少なくともインフルエンザにかかってから2日間は子どもを一人にしない」事が重要です。また、異常行動は、眠りから覚めてすぐに起こる例が多いので、寝かせる場所にも注意が必要です。突発的に飛び降りたりできない場所、できれば1階の部屋に寝かせたり、ベランダに面していない部屋や、格子付きの窓がある部屋の方が安全です。

鍵については、「普段あける事ができる鍵であれば、異常行動時もあける事ができる」と考えておきましょう。窓だけはなく、玄関も同様です。普段使用しない補助の鍵をつけるなどの対策が効果的だと考えられます。

インフルエンザにかからない事が、異常行動を防ぐ一番の対策です

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また、インフルエンザの異常行動について、一番の対策は「インフルエンザにかからない事」だと思います。手洗いマスクといった予防も勿論なのですが、ぜひインフルエンザワクチンの接種をご検討ください。インフルエンザワクチンも決して万能ではありませんが、インフルエンザにかからないためには、ワクチンが最も効果的な方法です。

また、先ほど紹介した異常行動についての研究データを見ますと、2015/2016シーズンで異常行動を起こした報告の72%はワクチン未接種です。他の年もばらつきがありますが、57〜98%がワクチン未接種でした。(これについての解析はされていないようですので言及は避けます)

インフルエンザにかからないために、またかかっても軽く済ませるために、ワクチンを接種する事が重要だと考えられます。

インフルエンザワクチンについては過去にコラムでとりあげていますので、参考にどうぞ。

子どものインフルエンザワクチン、予防効果は?【ママ女医と娘の○○な日常 vol.17】

http://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/2121

大人も怖いインフルエンザですが、乳幼児は重症化のリスクが高いので特に注意が必要です。毎年流行するインフルエンザですが、今年は早い時期から流行が予想されています。さらに今年はワクチンが昨年より製造量が少ないことがわかっており、不足することが懸念されています。今回はワクチンの話を中心に書きたいと思います。

インフルエンザの子どもを一人にしないであげてください

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ニュースでは「施錠などの対策を呼びかける」といった事が大きく取り上げられましたが、一番大切なのは、「熱を出している病気の子どもを一人にしない事」だという事を繰り返させてください。難しい事かもしれませんが、それがあなたのお子さんを守る最後の一手になるかもしれません。

そして、「子どもがインフルエンザなので看病のため仕事を休みます」という事が、容易に受け入れられる社会であって欲しい。そう願ってやみません。

(HAL)

※記事内の画像はすべてイメージです

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

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