トライアンドエラーして目標に立ち向かう「調整キャリ」。株式会社ダスキン・廣瀬芽生さんの働き方
「バリキャリ」「ゆるキャリ」……女性の働き方って、本当にこの2つだけなの? 100人いれば100通りの働き方がある。一般企業で働く女性にインタビューし、会社の内側や彼女の働き方を通して、読者に新しい働き方「○○キャリ」の選択肢を贈る連載です。
取材・文:ミクニシオリ
撮影:渡会春加
編集:中納俊/マイナビウーマン編集部
今の自分がなりたい自分とかけ離れている時、どうしたらいいのでしょうか。
やってみたい仕事が自分の積んできたキャリアとかけ離れていたら、その夢は諦めるしかない……そう考える人も多いかもしれませんね。しかし、その問いに笑顔で「NO」と言い放ってくれた、笑顔が素敵な女性がいます。
新卒で株式会社ダスキンに入社した廣瀬芽生さんは、入社当初この仕事が自分にあっているのか不安を持ったまま業務をしていたといいます。しかし働き続ける中で目標を見つけ、新規事業開発部門に異動し、現在は世の中に役立つサービスを企画し、運営したいという夢を叶えました。
夢を叶えるために行動し、失敗してもPDCAを回し続けた廣瀬さんは、今もトライアンドエラーを繰り返しながら、イメージをビジネスとして落とし込むという難しさとやりがいに立ち向かっています。
夢だった事業開発部門で挫折を経験。選んだのは「学び続ける道」
廣瀬さんは新卒からダスキンに入社されたとのことですが、これまでの経歴について教えてください。
部署異動はご自身の希望だったのですか?
そうです。とはいえ、すぐ異動の希望が叶うわけではないので、アピールできる機会があればなんでもチャレンジしようとは思っていました。ちょうど、ダスキンの50周年記念大会で「未来戦略委員会」という公募があり、そのメンバーに選ばれたことがきっかけで異動することになりました。
事業開発部でのお仕事内容も教えてください。
現部署では大きく2つの事業を運営しておりました。1つ目は「集eat(つどイート)」という食関連サービスで、食材とレンタルの調理器具を手配して、ご自宅で簡単にパーティーメニューをお楽しみいただくものなのですが、全国導入させることができず現在はサービスが終了しております。
2つ目は現在も担当している「ダスキンウォッシュ」という洗濯代行サービスです。洗濯代行とは、普段ご家庭で行っている“水洗いできる洗濯物“を専用のランドリーバッグでお預かりし、個別に水洗い・タンブル乾燥をして、お渡しするサービスです。
どちらも全く違うサービスですが、廣瀬さんはどのように事業と関わっているのですか?
もはや一人で会社を立ち上げられそうな仕事内容ですね……!異動前に思い描いていたイメージとのギャップはありませんでしたか?
ギャップはなかったですが、思った以上にキツイなと思うことはありました。一番辛かったのは、自分が考えたビジネスモデルが、ビジネスとしての限界があると気づいてしまった時ですね。考えたのも作り上げていったのも自分なので、サービスが終了してしまった時は力不足を感じました。
そのツラさはどのように乗り越えたのでしょうか。
ツライだけでなく、悔しいという気持ちも強かったので、インプット量を増やしたくてビジネススクールに通いました。平日の夜と週末にビジネススクールへ通い、オフの時間はほとんどなかったですが、やってよかったなと思っています。インプットが増えることで自信もつきましたし、ビジネススクールで知り合った仲間たちの存在は、今でも大きいですね。
働きながらビジネススクールに通うだけでもすごいのに、その当時も新規事業は動いていたってことですよね?
ちょうどダスキンウォッシュの1号店をオープンさせた頃に通い始めたので、時間がないなという焦りはありましたが……以前サービスを終了させたときの悔しい気持ちが根底にあったので、学び続けることはやめませんでした。
事業がお客様に喜ばれる瞬間が一番のやりがい
ビジネススクールに通ってからは、会社でのパフォーマンスや働く姿勢などにも変化があったのでしょうか。
ロジカルシンキングをしっかり身につけることができたり、マーケティングや会計、戦略など経営の基本、プロジェクトチームでの課題など、理論と実践の両方を学んだので、事業の組み立て方、進め方などには変化があったと思います。迷いなく仕事を進められるようになったので、時間的にも精神的にも余裕ができました。
「事業立ち上げ」ってスケールが大きくて、想像が追いつかない部分もあるのですが…現在担当されているダスキンウォッシュについては、どのように事業がスタートしたのですか?
今は上司となった女性と私の2人で開発に着手したのですが、ダスキンはもともとモップやマットを洗浄してレンタルする事業からスタートしているので、洗濯サービスには以前から着目していました。企画段階では店舗を持つべきかどうか、何を提供価値にするのかから考えました。結果的にダスキンウォッシュは店舗型でスタートし、現在は地域限定でデリバリーにも対応しています。店舗の立地を考え、テナントを借り、店舗に立つ人員を手配するのも私の仕事です。
まさにすべてを実行していらっしゃいますね……! 洗濯代行を使ったことがないのですが、サービスの強みについても教えてください。
一人暮らしの方であれば、一週間分の洗濯を一気に終わらせることができます。平日に洗濯物を溜め込んでしまい、休日はコインランドリーを往復するだけで終わってしまうという方もいらっしゃると思うのですが、デリバリーならご自宅から動かずに、洗濯を終えることができます。キレイに畳んで納品させていただいている点も、ご好評いただいていますね。
畳みまでやってもらえるのは嬉しいかも。洗濯物って洗って干して畳んで……と地味に工程が多いですもんね。
業務用の大きな乾燥機を使用しているので、ご自宅で洗濯する時よりシワが気にならないのもメリットですね。羽毛布団やスニーカーなどのコースも用意しているので、コインランドリーいらずの生活ができると思います。
こんなに便利なサービスを少ないメンバーで作っているなんて、にわかに信じられません……。
実際に作業してくれているのはパートさんたちでもありますし、今はメンバーも増えました。オープン当時は売上が伸びず苦しい時期もありましたが、徐々にお客様が増えて、お礼の言葉を聞く機会も増えてきたので、感慨深いですね。中には、ダスキンウォッシュのおかげで育休から復帰できたという、ママさんからの嬉しいご意見もありました。こういったお声を聞けた時は、事業開発に携わっていてよかったと嬉しい気持ちになります。
私自身、家事や育児と仕事の両立が大変そうで将来に不安を感じていたので、家事を代行してくれるサービスが世の中に増えるのはありがたいです。
洗濯代行は外注できる新しいサービスとして、今後世の中に浸透していくと思います。ダスキンは創業時から、家庭にいることが当たり前だった女性に社会進出を促してきた会社なので、ユーザー様にとっても、働く人にとっても価値になるようなサービスを作っていきたいです。
「少しずつ調整すること」が目標に到達するコツ
廣瀬さんの強いモチベーションは、いったいどこからやってくるんですか?
性格だと思うのですが、PDCAを回しながら改善していくのは楽しいですね。新規事業開発の醍醐味は机上のプランを形にしていくことですが、そこがビジネスとして難しい部分でもあります。社内や外部と交渉して上手くいった時は、思わずガッツポーズしたくなるんですよね。
成功は大きなモチベーションになりそうですが、そもそも実行するのが大変とのことですが……悩んで立ち止まってしまう時はありませんか?
分からないことがあった時は、部署問わず詳しそうな人に頼っています。ダスキンの社員って、本当に優しい人ばかりなんですよ。「やさしさ」を大切にすることが経営理念でもあるのですが、理念に沿った採用がなされていると感じます。一度も会ったことがない人にメールや電話をしても、きちんと知識を共有してくれる親切な社員たちと働いていると感じるので、やりがいやモチベーションに繋がっていますね。
廣瀬さんのお人柄が伝わっているのもありそうですね。ちなみに、息抜きしたくなる瞬間などはありますか?
そんな一面もあるんですね(笑)。
本当に色々な活躍をされていらっしゃいますね。
すでに社会人として、積極的にご経験を積まれてきていると思うのですが、今後のビジョンについても教えてください。
社会人として、自分なりにこだわってきたことは色々あります。負けず嫌いなので、自分自身が納得するまで諦めないことや、色々な人に意見を聞いてみること。何かを変えたい時は、少しずつ方向を変えることで、目標にたどり着くことができることも学びました。
目指す場所やなりたい自分とかけ離れていても、少しずつ変えていけばいつかはきっとたどり着けるはずです。新規事業を開発する時も同じですし、私は人よりも少しだけ、心折れずにトライアンドエラーを続けるのが得意なんです。今後も今の自分を信じて、事業開発キャリアを通して困っている人・苦労している人の人生を切り開くサービス・事業を社会に提供したいです。
※この記事は2024年07月29日に公開されたものです