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2022年04月25日 12:28 更新

【医師監修】赤ちゃんの足(脚)はM字型⁉️ 股関節脱臼の見分け方と正しい抱っこ方法

赤ちゃんが足をバタバタと動かす様子を眺めていたら……あれ? どこかおかしいと感じることがあるかもしれません。赤ちゃんはまれに股関節の脱臼をおこすことがあります。赤ちゃんに起こる先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)の チェック方法や注意点を知っておきましょう。

赤ちゃんの足(脚)はM字型

赤ちゃんの脚
Lazy dummy

両膝と股関節が十分曲がっているのが正しい状態

大人の脚と赤ちゃんの脚には大きな違いがあります。それは脚の付け根の状態。大人の脚が股関節から膝下までまっすぐなのに対し、赤ちゃんの脚は両膝と股関節が十分曲がり、外側に開いたM字型をしており、その状態でバタバタとよく動かしているのが、好ましいかたちだとされています。

不自然な状態が続くと股関節脱臼を招くおそれが

赤ちゃんの脚が上記のようなM字型になっていない場合は、注意が必要かもしれません。なぜなら股関節脱臼を起こしているおそれがあるからです。股関節脱臼について詳しくは後述しますが、下記に当てはまるものがあれば注意して様子を見たり、必要に応じて医療機関を受診したりする必要があるでしょう。

 ・いつも顔が同じ方ばかり向いている
 ・両脚がM字型に開かず、ひざを伸ばしたような姿勢をとっている
 ・立て膝の姿勢や脚が内側に倒れた姿勢をとっている

股関節脱臼に要注意

赤ちゃん
Lazy dummy

股関節は脚の付け根の関節です。大腿骨頭という大腿骨(だいたいこつ)の先端の球形をした部分が、骨盤の臼蓋(きゅうがい)という骨にはまり込んだような形状をしています 。赤ちゃんの股関節は柔らかく、生まれた時に脱臼していたり、 注意していても発育の過程で脱臼してしまうことがあります。

先天性股関節脱臼とは

先天性股関節脱臼(発育性股関節形成不全)はこの股関節がはずれる病気です。
「先天性」といわれていますが、じつは生まれつき脱臼していることは少なく、その多くはおむつの当て方や抱き方、向き癖などの後天的な要因が加わって発症します。

発生の割合は1,000人に1~3人(0.1~0.3%)程度と元々まれですが[*1]、抱き方やおむつの当て方などを注意することで、さらに減少させることができます。また、早期に発見して早期に治療を開始すれば、多くは数ヶ月で治せる病気です。早期発見の方法と予防法についてはのちほど詳しく紹介します 。

先天性股関節脱臼5つの要因

先天性股関節脱臼には、発症しやすい5つの要因があります。下記のうち2つ以上の要因にあてはまる赤ちゃんはとくに正しい扱い方を心がけ、3~4ヶ月健診で股関節の状態を確認してもらうことが大切です。

向き癖がある

いつも顔が同じ方向ばかりを向いていると、顔の向きと反対側の足が立て膝になり、股関節の脱臼を誘発してしまうことがあります。向き癖には注意しましょう。

女児

女児は関節が柔らかく 、また股関節の構造が男の子に比べて不安定なことから、 股関節脱臼を起こしやすい傾向があります。実際、股関節脱臼を起こす女児は男児の5~9倍と圧倒的に多くなっています[*2]。

家族に股関節の悪い人がいる

先天性股関節脱臼には遺伝的要因も関係しています。家族、とくに母や姉妹など家族のうち複数の人が股関節脱臼であった 場合は要注意です。

骨盤位(逆子)で生まれた

骨盤位、いわゆる逆子はおなかの中で膝が伸びた姿勢をとることが多いため、股関節を脱臼しやすくなります。

寒い地域や秋・冬に生まれた

寒い時期は足を伸ばした状態で衣服にくるまれることが多く、そのために赤ちゃんが自由に脚を動かしづらくなって股関節脱臼を引き起こしやすくなります。

早期発見がカギ! 先天性股関節脱臼の発見法

先天性股関節脱臼は、いくつかのポイントをチェックすることで早期に発見することも可能です。そして早期に治療を開始すれば、多くは問題なく治ります 。次のチェックポイントを覚えて置き、普段から赤ちゃんの脚や股のしわの状態などに注意しておきましょう。

股関節脱臼のチェックポイント

☐ あおむけで両脚を曲げ、ひざが外に向くように広げてみたとき、開きが悪かったり、オムツが替えにくくないか
☐ 両脚をM字に開いたとき、片方の脚だけが開きにくくないか
☐ 股のしわが深く長くなっておりおしり側まで達していたり、左右で異なることはないか
☐ 太もものしわの数や位置が左右で異なっていないか

上記のうち、ひとつでも当てはまるものがある場合は股関節脱臼のおそれがあります。 当てはまるものがあったら、まずはかかりつけの小児科医を受診し、相談してみてください。

M字型を保つには

赤ちゃん
Lazy dummy

最後に、赤ちゃんの脚を正しいM字型に保ち、股関節脱臼を予防するためのポイントや注意点を紹介します。

きついオムツや服を避ける

きついオムツや洋服は、赤ちゃんの両脚を外から締めつけてしまいます。その結果、膝が伸びて、股関節脱臼を誘発してしまうことも。きついオムツや洋服は避けて、赤ちゃんが自由に脚を動かせる環境をつくってあげましょう 。

抱っこは正面抱き「コアラ抱っこ」で

赤ちゃんを正面から抱くと、両膝と股関節が曲がったM字型開脚でママやパパにしがみつくような姿になります。赤ちゃんがまるで木につかまっているコアラのように見える、この抱き方は「コアラ抱っこ」とも呼ばれています。

このような正面抱きの抱っこは股関節脱臼の予防に効果的です。両膝と股関節がM字型に曲がった状態になるようであれば、抱っこひもやスリングの使用も問題ありません。

ただし、スリングなどを使って横抱きにする場合は要注意です。開脚の姿勢がとれず、両脚が伸びた状態になって、股関節脱臼を引き起こしやすくなる可能性があります。

「向き癖」に注意

〈先天性股関節脱臼5つの要因〉でもお伝えしたように、いつも顔が同じ方ばかり向いていると、股関節の脱臼を誘発することがあります。

向き癖を直すには「常に向き癖の反対側から赤ちゃんに話しかける」「向き癖側の頭から体の下にバスタオルやマットを入れて、少し持ち上げてみる」といった方法が有効とされています。赤ちゃんに合った方法を工夫して、向き癖の改善を試みてみましょう。

まとめ

もしも股関節脱臼が発症したとしても、赤ちゃんは痛みを感じません。そのため、泣いて訴えたり知らせたりすることはなく、ママやパパなど周囲の大人が気付いてあげるしかないのです。股関節脱臼は放っておくと将来歩行に支障が出るおそれがあります。早期発見と適切な対処を心がけてあげましょう。

(文:山本尚恵/監修:大越陽一先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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