【医師監修】扁桃炎(扁桃腺炎)の症状とは?急性扁桃炎と慢性扁桃炎の症状と治療法
扁桃炎は年齢を問わず発症する可能性がありますが、特に子供を中心に多くみられる病気です。早期発見・治療につなげられるよう、扁桃炎の症状を理解しておきましょう。
扁桃炎ってどんなもの?
※画像はイメージです
よく、「扁桃腺がはれる」と言いますが、医学的には「扁桃」が正しい呼び方なのです。
私たちの喉(のど)の奥にある扁桃と呼ばれる部分ががなんらかの原因によって炎症を起こした状態を扁桃炎と呼びます。扁桃炎は年齢を問わず発症する可能性のある病気ですが、特に子供を中心に、多く見られると言われています。扁桃炎とはどのようなものなのか、具体的に見ていきましょう。
扁桃腺の場所と役割
口を大きく開いて舌をやや下げるようにした状態でのぞきこんでみると、のどの奥の左右にぷっくりと膨らんでいる部分があります。これが一般的にいわれる扁桃で、医学的には口蓋扁桃(こうがいへんとう)と呼ばれます。
扁桃は、喉を通過して体内に侵入しようとするウイルスや細菌などをブロックする働きを持っています。ただし、これは主に学童期までで、免疫機能がほぼ整った状態になる思春期を過ぎると扁桃の力を借りなくてもこれらの病原体に対抗することができるようになっていくため、扁桃は徐々に小さくなっていきます。
扁桃炎ってどういう状態?
扁桃はウイルスや細菌などが体内に侵入するのをブロックしていますが、風邪や疲れなどにより免疫力が弱まると侵入を防げずにウイルスや菌が増殖してしまうことがあります。すると、外からの侵入者と戦うために免疫が活性化し、炎症が起こります。これが扁桃炎と呼ばれる状態です。
そのため、ウイルスなどに感染すると扁桃は赤く腫れ、ときには白い斑点を伴うこともあります。これにより、食事や会話がつらくなるほどの激しい喉の痛みが生じます。痛みは、ときに耳や首のリンパ節にまで及ぶこともあります。また、発熱や頭痛、胃の不調などが現れることもあります。
扁桃炎の原因となるもの
多くの場合、風邪を引き起こすウイルスが原因となります。代表的なものには、アデノウイルス、EBウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルス、ライノウイルスなどがあります。
また、およそ30%の患者は細菌が原因になっているといわれます。 一般的に、小児にみられる扁桃炎はA群レンサ球菌が原因だと知られています。また、肺炎球菌や黄色ブドウ球菌、マイコプラズマ、クラミジアなどが関与することもあります。
扁桃炎は慢性化することも
扁桃炎を繰り返すと、慢性扁桃炎になる場合もあります(これに対して、繰り返さない単発の扁桃炎を急性扁桃炎と呼びます)。慢性扁桃炎とは何か、原因や症状の現れ方について見ていきましょう。
慢性扁桃炎の症状
慢性扁桃炎は、「慢性単純性扁桃炎」、「習慣性扁桃炎(反復扁桃炎)」、「扁桃病巣感染症(へんとうびょうそうかんせんしょう)」の3種類に分けられ、それぞれで症状の現れ方が異なります。代表的な症状や特徴は、以下のとおりです。
・慢性単純性扁桃炎 …のどの痛みや違和感、乾燥、熱など。
・習慣性扁桃炎 …急性扁桃炎の症状を年に4回以上繰り返す。
・扁桃病巣感染症 …扁桃の軽度の痛みや異物感(ほとんど症状がない場合もある)と共に、皮膚、腎臓、関節など、全身に
さまざまな症状が現れる。代表的なものには、掌蹠膿胞症(しょうせきのうほうしょう)、IgA腎症、胸肋鎖骨過形成症(きょうろくさこつかけいせいしょう)などがある。
扁桃炎の治療法
では、扁桃炎はどのように治療するのでしょうか。急性・慢性ごとの一般的な治療法についてお伝えします。
急性扁桃炎の症状
急性扁桃炎の治療では、多くの場合、鎮痛薬による対症療法が行われます。細菌が原因となっている場合は、抗菌薬も処方されます。また、口の中を清潔に保つよう、うがい薬が処方されることもあります。喉の腫れがひどかったり、熱が高くて食事や水分補給がうまくできないとき(特に脱水症状が見られる場合)は、抗生剤などの静脈注射や点滴治療を行うこともあります。
慢性扁桃炎の治療法
慢性扁桃炎になると扁桃の表面にあるくぼみから膿栓と呼ばれる白く小さな塊が出てきますが、これ以外の症状がほとんどない場合は特に治療は必要ないとされます。ただし、強い喉の痛みや発熱の症状を繰り返す場合や扁桃病巣感染症が見られるときは、手術による扁桃の摘出が勧められています。
日本の基準では、小児においては感染症が1年で4~5回以上、または2年で5~6回以上ある場合に手術の必要性があるとしています。また、抗菌薬による治療を行っても改善しない重度の急性扁桃炎や、扁桃の肥大による閉塞で睡眠障害が起こる場合などにも手術が検討されます。
扁桃炎になったときのケア
扁桃炎を発症したら、医療機関を受診して適切な治療を受けると共に、ご家庭でのケアもしっかり行いましょう。特に、水分補給とうがいはこまめに行ってください。また、免疫力をつけるために、無理をせず安静にすることが大切です。
まとめ
扁桃炎は、風邪がきっかけとなって発症することが多いです。特に、扁桃が発達している小児期には発症しやすいので、日ごろから手洗いやうがいなどで感染を予防することが大切です。急性扁桃炎を繰り返すと慢性扁桃炎になる可能性があり、また、喉の痛みがひどかったり高熱が出ると脱水症状も起こしやすくなるので、扁桃炎が疑われるときは早めに医療機関を受診し、適切な治療とケアを施しましょう。
※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.08.20)
※記事の修正を行いました(2019.06.12)