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2023年11月06日 07:07 更新

自己否定する子ども…自己肯定感upに、親はどう関わっていく?|加藤隆行さんインタビュー<後編>

子育て中、「親としてこうあるべき」「子どもにはこうしてあげないと」などと気負ってしまうことがあります。さらには、理想通りにいかないと“ダメな親”と卑下してしまったり……。子どもには自己肯定感の高い人間に育ってほしいと思いながらも、親自身が自己否定してしまうケースが少なくないのです。

今回は、『「どうせ自分なんて」と思う君に、知っておいてほしいこと』の著者で、自己肯定感の育て方に詳しい、心理カウンセラーの加藤隆行さんに「子どもへの関わり方とトリセツ」についてお話をうかがいました。

親自身が自分に「×」をつけていませんか?

※写真はイメージです

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――保護者の中には、自分自身が自己否定しがちで、コミュニケーションにも自信がないという人もいます。そうすると、子どもにどう働きかければいいかに迷われるかと思いますが、対応策はあるのでしょうか?
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加藤隆行さん(以下、加藤) 自分が自分を否定ばかりしていると、自分自身との仲が悪くなります。自分と自分の仲が悪いと、ほかの人とも仲が悪くなっていきます。なぜなら「自分のここがダメ、あそこがダメ」と「×」をつけ続けていると、それと同じ“ものさし”で他人も測ってしまって、コミュニケーションがうまくいかなくなるからです。

特に、親にとって子どもは他人ではないので、自分自身に接する時と同じように子どもに接してしまいがちです。そして、子どもの気持ちを考える前に、「子どもを自分のようなダメな子にしてはいけない、もっといっぱい何かを与えなきゃ、あれもこれも教えなくちゃ」と思い、子どもを信頼して見守れずに過干渉になってしまうのです。

自己否定ループから抜け出すには

加藤  でも、そんな親御さんは、子どものために一生懸命だからこそ、そうなっているんですよね。だから、まずはそのままの今の自分を「ねぎらう」ということを知ってもらえたらと思います。

具体的には「私よくがんばってるな」「私はよくやっている」といった言葉を自分にかけてあげることです。そうやって自己否定を手放して、自分を認めてあげることができるようになると、保護者自身の自己肯定感が育ち、子どもにも余裕を持って接しられるようになっていきます。

自分を否定することで何一つ良いことはありません。たとえば、子どもにイライラして怒っている自分に「×」をつけると、怒りを溜め込んでしまい、そのうち爆発して強く怒ってしまう。そしてそんな自分をまた否定し「×」をつけることで、子どもにもさらに干渉してしまってと、悪いループにハマっていきます。

そんな悪いループから抜け出すためには、やはり自己肯定感を育てていくことが大切です。自己肯定感は“今そのままの自分”に「〇」をつける能力です。

保護者の方も自分自身のトリセツ(取りあつかい説明書)を作って、子どもは子ども自身のトリセツを作って、一緒に自己肯定感を育てていけたらいいですね。

自分だけのリストで、「自分のトリセツ」を作ろう

自分が何が好きで、何を大切にしていて、何で元気が出てと、自分のことを知れば知るほど、自分のことを信じることができて、自信が持てるようになっていきます。
自分のトリセツを少しずつ作っていくこと、そんな自分を自分で使いこなしていくことが、人生でいちばんおもしろくて、いちばん大切なことなのです。


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『「どうせ自分なんて」と思う君に、知っておいてほしいこと』より

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――書籍の中では、以下のようなことを入れた「自分だけのトリセツ(取りあつかい説明書)」を作ることを勧めています。

■「あったか言葉」
自分が前向きで温かい気持ちになれる言葉、うれしかった言葉、元気が出た言葉
 例:だいじょうぶ、心配ないよ、つらかったね、君の味方だよ など
■「大切な人リスト」
自分が大切だと思う人、自分を好きていてくれる人
 例:家族、習い事の仲間、ペット、推しのアイドル など
■「安心リスト」
自分がしたら安心できること、ホッとした気持ちになれるとき
 例:ふかふかのふとんでねる、おばあちゃん家のにおいを思い出す など

トリセツを作るのには、どんな効果があるのでしょうか?
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加藤  自分を否定し、責めている最中には、そんな自分をなんとかしようと思ってもなかなか難しいと思います。そんな時に、作っておいたトリセツをさっと見ることで、「私には優しいおばあちゃんがいた」「こういう言葉を自分にかけてあげればいいんだ」安心する方法を思い出すことができます。

また、自分自身のことはわかっているようでわかっていないものです。普段から頭の中にぼんやりあるものを、実際に書き出してみると「自分はこんなことで安心するんだな」「こんな大切なものがあったんだ」と、改めて確認することができます。そして、そんな安心するものや大切なものがある自分を「そんなに悪くないな、けっこういい感じかも」と思えるようになっていきます。

心のままに書き出してみて

※写真はイメージです

加藤  リストは、順番などを気にせず、思いつくままに書いていきましょう。頭であれこれ考えず、自分の心の中に自然に出てくるものを書き出すのがいいです。

記憶に残りやすいので手書きするのがおすすめですが、スマホに書いた方がいつも手元にあって見やすいならそれでもいいでしょう。

できあがったトリセツには、あなたの人生にとって大切な人やものたちが書かれています。気分が落ちた時にぱっと開いて眺め、思いを馳せることで、安心した気持ちに戻ることができます。

子どものモヤモヤ・イライラはそのまま受け入れて

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――自分の子どもを見ていて「なんだかモヤモヤしてるみだいだな」「どうせ自分なんて、とよく言うな」と気づいた時、子どもに対して保護者はどんなアプローチをしていけばいいでしょうか?
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加藤  モヤモヤしていたり、「どうせ自分なんて」とよく言うお子さんのことを、まずは「そのままでいい」と思ってほしいです。

そのモヤモヤや自己否定には子どもなりの理由があります。子どものモヤモヤや自己否定を問題視して、「この子を変えなきゃ」と思ったり、モヤモヤを消そう、解決してあげようとすると、それ自体が子どもの否定となることがあるとともに、子どもが自分で解決する機会を逃してしまいます

「いつでも味方だよ」「ちゃんと見ているよ」

加藤  モヤモヤしていたらシンプルに「モヤモヤしてるんだね」と伝えてあげるといいと思います。そのままのお子さんを認めてあげながら、「お母さん(お父さん)は、ちゃんとあなたのことを見ているよ」というメッセージを伝えるのです。

子どもに必要なのは“注目”です。親が自分のことを見ていてくれている、わかってくれていると思うと、子どもは安心し、自分の課題に取り組んでいくことができます。また子どもはまだ自分を客観視する能力が発達途上にありますから、自分がモヤモヤしていることにさえ気づいていないかもしれません。だからまずはそれを伝えてあげるだけでいいのです。

親が子どもに考えを伝えるのは、子ども自身が「私どうしたらいいのかな」「お母さん・お父さんだったらどうする?」と話し始めてからです。

親が「ああしなさい、こうしなさい」と言い続けていると、それは子どもの自己肯定感を削っていってしまいます。「もし話したかったら、あなたのタイミングで話してね、私はいつでもあなたの味方だよ。あなたをちゃんと見ているよ」と伝えてあげましょう。

親に受け入れられたことで解決することも

※写真はイメージです

加藤  このとき大事なのは、「モヤモヤしてるのやめなさい」「そんなイライラしてるとお友だちが離れてくよ」と子どもに「×」をつけないこと。「モヤモヤしてるね」「イライラしてる」と、見たままを伝えてあげるのです。

そうすると、子ども自身も「モヤモヤやイライラしてていいんだ、それは誰にでもある当たり前のことなんだな」と自分を受け入れることができます。その上で自己否定せずこのモヤモヤをどうしたらよいかを自分で考えることができ、「話を聞いて」と相談するといったことも覚えていきます。親に気持ちを受け入れてもらえただけで解決することもあります。

ネガティブな気持ちを含めて、自分の気持を受け止めてもらっていると感じると、人はどんどん安心していきます。そして、自分の内面も話したくなってきますよ。

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――ジャッジしないで、子どものそのままの状態を受け止めるのがいいんですね。そうやって子どもを見守ることで、子どもの自己肯定感を上げることにもつながっていく。
つい何かしたくなってしまう親にとって、貴重なお話でした。ありがとうございました。
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(解説:加藤隆行、聞き手・構成:大崎典子)

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「友だちと比べて○○ができない」
「先生に怒られてばかり」
「ダメな自分がイヤになる」
「どうせ私なんて……」
そんなふうに思う君に読んでほしい。

今回お話をうかがった加藤隆行さんが執筆し、精神科医・名越康文さんが監修した、自分を好きになれない小学生のための本です。子どもが自分自身で自己肯定感を育んでいくためのヒントが詰まっています。
●失敗したときは「よくがんばったね」
●“ダメなところ”は“いいところ”でもある!?
●ガマンするより「助けて」と言えるほうが大事
●嫌いな友だちは嫌いなままでいい!?
自信をなくしている子どもに寄り添う優しい文章は、子どもの心に小さな自信が芽生えるきっかけを与えてくれます。

自己肯定感の下がりやすい子どもたちへ、そして、親として子どもへの接し方の参考にも是非おすすめの1冊です!

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