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2023年11月03日 16:16 更新

「きょうだい児」の気持ち…障害がある兄弟姉妹が抱えるジレンマや悩みとは?

「きょうだい児」という言葉をご存知でしょうか。子どもに病気や障害のある場合、保護者は世話などにかかりきりになるケースも多いでしょう。病気や障害がある兄弟姉妹がいる子どもたちは、彼らならではの悩みを持つことが多いようです。

本記事は、世界⽂化社・発達支援の保育専門誌「PriPriパレット」2023年10・11月号より一部抜粋してお届けします。

見落としていませんか? きょうだい児の気持ち

病気や障害のある兄弟姉妹(きょうだい)をもつ子を「きょうだい児」といいます。特性のある子のきょうだい児は、幼いながらもきょうだいとの関係性やまわりの大人からの対応に悩み、ジレンマを抱えていることも。最近、注目されている「きょうだい児」をめぐる課題について、園でできる支援を考えてみましょう。

大人のかかわり方できょうだい関係は変化

きょうだい児

「お姉ちゃんって、ぼくと少し違うのかな?」など、きょうだい児がきょうだいの障害や特性に気づき始めるのは4〜5歳頃です。これは、愛着形成において重要な時期でもあり、きょうだい間のかかわりだけでなく、両親(保護者)や保育者との心の結びつきと、その中でいかに安心感を得られるかが大切になっていきます。

一般的にきょうだいはお互いに影響を受けながら成長し、関係を築いていきます。しかし、きょうだいの誰かの発達に特性がある場合、きょうだい同士で一緒にあそぶなどの〝楽しい経験〞が少なかったり、保護者が当該児のサポートに注力することで、きょうだい児が「自分のほうを向いてもらえない」「ぼくばかりがガマンをしている」などと、葛藤を感じることもあります。一方で、周囲のかかわり方によって、きょうだい関係はよい方向に変わる場合もあります。園でできる、気持ちに寄り添う方法を探してみましょう。

知ってほしい きょうだい児の気持ち

きょうだい児は、当該児や周囲とのかかわりで複雑な思いを抱くことも。さまざまなケースを紹介します。

※発達障害や発達に特性がある子を本文中には当該児としています

まわりの大人が当該児に注力するほどモヤモヤした気持ちに

きょうだい児

保護者は、発達の特性のあるなしにかかわらず、子どもには平等に愛情を注ぎたいと思っています。しかし、さまざまな場面や特性によっては、当該児を優先せざるを得ないことも。たとえば当該児がガマンできないからと「そのおもちゃをお兄ちゃんに貸してあげて」などと言ってしまう場合もあるでしょう。そうした対応が習慣化すると、きょうだい児は「いつも、お兄ちゃんのことばかり……」とモヤモヤした気持ちになります。

また「ぼくのことは、どうせ見てくれないから……」などと、最初からあきらめてしまうケースも。幼児期のこうした理不尽やあきらめを感じた経験が、その後のきょうだい関係に深く影響を及ぼす可能性もあるのです。

「なぜいつも ぼくがガマンするの?」

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お兄ちゃんは、ぼくのおもちゃを横取りするし、ぼくが怒ると叩いてくる。
ママやパパに「いやだ」と伝えても「ゆるしてあげて」と言われるし、なんでぼくがいつもガマンなの……。
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こだわりが過度に強いなどの自閉スペクトラム症(ASD)の特性は、幼いきょうだい児には理解しづらいものです。そのため当該児に対して「おもちゃを取られる」「すぐに怒る」などの印象をもつことも。また、保護者も当該児に理解を促すのが難しいためきょうだい児に「お兄ちゃんにおもちゃを貸してあげて」などと言って、ガマンをさせてしまう傾向があり、きょうだい児が感情を抑えこんだり、理不尽さを味わう場合もあります。

「大切にされていない」

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ママやパパは、いつもお兄ちゃんを優先する。
私のことは好きじゃないのかな?
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当該児にかんしゃくを起こしやすい特性がある場合は、保護者はその対応に追われたり、きょうだい児を後回しにしてしまったりすることも。しかし、こうした接し方をくり返すと「自分は大切にされていない」「いつもお兄ちゃんが優先なんだ」と映ってしまいます。

「まわりに見られて恥ずかしい」

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弟は、静かに座っていられない。
みんなにジロジロ見られて、一緒にいると恥ずかしいんだ……。
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当該児の特性に気づき始めると同時に、恥ずかしさを感じることも。たとえば当該児が注意欠如・多動症(ADHD)の特性から落ち着きがない行動をとったときに、周囲の人にジロジロ見られて「恥ずかしい」と思うことも。

「自分にかまってくれない」

きょうだい児

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ママは、いつもお兄ちゃんばかり手伝ってあげている。
お兄ちゃんは、苦手なことがあるから手伝わないとダメなんだって。
私だって手伝ってほしいな。
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当該児に不器用さや過度にマイペースといった特性があると、身支度などを保護者が手伝うことも。そうした光景をいつも見ていると、きょうだい児は「ずるい! 自分も手伝ってほしい」という不満を抱きやすくなります。

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ママはずっとお姉ちゃんの勉強を見てあげている。
だから私があそんでほしくても、「あとでね」って言われるの。
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当該児が就学すると、保護者がマンツーマンで当該児に勉強を教えるケースも。毎日、宿題のサポートなど保護者も精一杯で、きょうだい児に目を配る余裕がなく、きょうだい児が寂しい思いをすることもあります。

根底にあるのは 自分を認めてほしい という思い

きょうだいの関係は、発達の特性や当該児が長子か末子かなど、さまざまな要因で違いがあります。前述のような例は、とくに年齢が近いきょうだいによく見られます。年齢が離れていて、下の子に特性がある場合は、上の子が理解を示してくれたり、手伝ってくれることなども。しかし、そこには「役にたつことでママやパパに認めてほしい」という複雑な気持ちを抱いているケースもあります。

保護者や保育者は、アンテナを張ってきょうだい児の心の声に耳を傾けましょう。

▶︎後編では、きょうだい児のリアルな声や、支援のポイントについてお伝えします。

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解説:川上あずさ(奈良県立医科大学医学部 看護学科 小児看護学教授)
博士(看護学)。小児看護学をはじめ、自閉スペクトラム症児と家族・きょうだいの関係について研究する。
取材・文:麻生珠恵

(世界⽂化社・発達支援の保育専門誌「PriPriパレット」2023年10・11月号より転載)
※画像はイメージです

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