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2021年01月09日 19:13 更新

【医師監修】B群溶血性連鎖球菌(GBS)感染症ってどんな病気? 胎児・新生児への影響は?

B群溶血性連鎖球菌(GBS)は、多くの人がふだんから持っている細菌ですが、通常はあまり問題を起こしません。ただ、妊婦さんから赤ちゃんに感染し、時に赤ちゃんの命に関わる病気を起こすことがあります。

B群溶血性連鎖球菌ってどんな細菌?

妊婦がB群溶血性連鎖球菌に感染すると母子感染の可能性もあり注意が必要でお腹を気にする妊婦
Lazy dummy

※画像はイメージです

B群溶血性連鎖球菌(GBS)とは

B群溶血性連鎖球菌とはどんな細菌かを、説明していきます。まず「球菌」とは、丸い球の形をしている細菌のことです。その球菌が鎖のようにつながっているのが「連鎖球菌」で、「溶血性」とは培養用の血液培地中の赤血球を壊す作用があるということを意味します。

溶血性連鎖球菌は、細菌の細胞壁の性質の違いから「A群」から「G群」に分けられています。「溶血性連鎖球菌」は「溶連菌(ようれんきん)」と省略して呼ぶこともありますが、そのように略す場合は、通常、A群溶血性連鎖球菌のことを指します。

B群溶血性連鎖球菌とA群溶血性連鎖球菌はどう違う?

A群、B群溶血性連鎖球菌はともにありふれた「常在菌」の一つです。常在菌とは、多くの人の体に存在していて、ふだんは健康上の問題にならない細菌のことです。常在菌は500種類以上あるとも言われています[*1]。

ところが、体が弱っている時や免疫力の弱い人などに感染すると病気を引き起こすことがあります。B群溶血性連鎖球菌で問題とされるのは、主に出産の際にお母さんから赤ちゃんに感染し、赤ちゃんに敗血症、髄膜炎、肺炎など重症の病気を引き起こす可能性があることです。

一方、A群溶血性連鎖球菌は主に子どもに咽頭炎や扁桃炎などの、いわゆるかぜの症状やとびひ(伝染性膿痂疹)などを起こす細菌として知られています。A群溶血性連鎖球菌が主に子供に起こす病気については下記の記事で紹介しています。

妊婦さんがB群溶血性連鎖球菌に感染していた場合のリスク

B群溶血性連鎖球菌の何が問題なのか?

B群溶血性連鎖球菌(以下、GBS)は常在菌の一種で、妊婦さんの10~30%が腟や直腸に持っていると言われています[*2]。まれに膀胱炎や子宮の感染症(羊膜炎、子宮内膜炎)を起こすことがありますが、普通は何も起こりません。しかし、GBSが新生児に感染した場合には重症化することがわかっているため、出産時の赤ちゃんへの感染を防ぐことが重要とされています。

・赤ちゃんにはどうやって感染するの?

お母さんの胎内にいる赤ちゃんは無菌状態ですが、出産の際に赤ちゃんが産道を通ることで赤ちゃんへGBSが感染することがあります。まれに赤ちゃんが胎内にいる時に上行感染(腟にいる細菌が子宮へと広がっていくこと)することもあります。また、生まれた後に母親以外から感染することもあります。

・GBSに感染した赤ちゃんはどうなる?

GBSに感染した赤ちゃんのすべてが病気になるわけではなく、病気を発症するのは1~2%ほどです[*3]。赤ちゃんがGBSによる病気を発症する場合、生まれてから6日目までに発症する「早発型」と、それ以降に発症する「遅発型」があります。

早発型は主に、お腹の中でお母さんから胎児に母子感染した場合で起こりますが、近年は母子感染の予防が行われるようになり、減りつつあります。ただ、GBSもつ妊婦さんで早産になった場合、赤ちゃんに早発型が起こりやすいことが知られています。

一方、遅発型は出生後にお母さん以外からGBSに感染することで起こる場合が多いと考えられています。

・病気を発症すると、赤ちゃんはどうなるの?

赤ちゃんに肺炎、髄膜炎(脳と脊髄を包んでいる「髄膜」に起きる炎症)、敗血症(本来は無菌であるはずの血液中に菌が存在し、臓器の働きが障害される状態)などの重症の感染症になることがあります。治療して回復しても、髄膜炎の後遺症で聴力や視力が失われたり、運動や学習面に障害が残ったりすることがあります。

GBSの検査、治療法・対処法は?

妊婦さんがGBSに感染しているかどうかは、妊娠35~37週に腟や直腸から検体を採取して、培養検査をして調べます。その結果、GBSが認められた場合は、赤ちゃんへの産道感染を防ぐために、次のような対策をとります。

抗菌薬で産道感染を防ぐ

GBS を保菌している妊婦さんでは、陣痛が始まってから分娩が終了するまで抗菌薬の点滴投与を続けます。これによって赤ちゃんへの感染の多くを防ぐことができます。

なお、妊娠中の培養検査の結果が陰性でも、過去に出産した子がGBS感染症を発症していた場合には「感染あり」の場合と同様の予防対策を行います。

赤ちゃんの治療は?

GBS感染しているお母さんから生まれた赤ちゃんは、しばらく経過を観察しますが、特別なことをするわけではありません。おっぱいの飲みが悪くなったり、元気がなくなったり、発熱したりなど、赤ちゃんの体調が悪いと判断した場合に、他の病気である可能性も考えつつ、GBS感染症についての検査をします。赤ちゃんがGBSによる感染症を発症した場合には、抗菌薬を投与します。血液や脳脊髄液から細菌が確認できなくなるまで治療は続けられます。

まとめ

GBSは多くの人が持っている細菌で、妊婦さんの10~30%が保菌していると言われています[*1]。ただ、妊娠中の検査によってGBS感染の有無を確認しておけば、お母さんが感染していた場合でも赤ちゃんへの感染を抑えることはできます。元気な赤ちゃんを産むために、妊娠中に推奨されている検査はしっかりと受けておきましょう。

(文:久保秀実、監修:太田寛先生)

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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