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2021年04月14日 17:10 更新

妊婦が塩分を取りすぎるリスクと1日の目安摂取量【管理栄養士監修】

妊娠中、特に妊娠後期は大きくなったお腹で足の付け根が圧迫されることなどでむくみが起こりやすくなります。むくみのコントロールには塩分の取りすぎを避けることが大切です。今回は妊娠中の食塩の取り方について解説します。

塩分の取りすぎはむくみにつながる

脚がむくんだ妊婦

妊娠中は多くの妊婦さんがむくみに悩まされます。特に妊娠週数が進んでくると、今まで履いていた靴がきつく感じるなど脚のむくみがひどくなることも。

妊娠中に限った話ではありませんが、塩分を取りすぎるとむくみやすくなります

妊婦健診などで特に指示されていない限り塩分を制限する必要はありませんが、塩分の過剰摂取には気をつけたほうがいいでしょう。


妊娠中のむくみについては以下の記事も参考にしてください。
▶︎妊娠中はむくみやすい!?妊婦の注意したいむくみは?

塩分が多いおかずで体重増加のリスクも

濃い味付けのおかずを食べると、白いご飯をたくさん食べたくなります。おかずから塩分を取りすぎてしまうだけでなく、ご飯を食べすぎてしまうことで肥満につながる心配もあります。

妊娠中は適正に体重を増やす必要がありますが、炭水化物に偏らせず、バランスよく栄養を取ることも大事です。

妊娠中はどれくらい塩分を控えめにすればよい?

塩を大量にかけるフライドポテト

成人女性の食塩の目標量は6.5g/日です[*1] 。日常生活で塩分を計算しながら食事を取ることは難しいですが、成人女性は平均して9〜10g/日の食塩を摂取しているといわれているため[*2] 、より薄味を心がけることが大切です。

塩分は取りすぎでも取らなすぎてもよくない

塩に含まれるナトリウムは身体の水分の調節や様々な化学反応に関与しています。取りすぎは良くありませんが、全く取らないことも良くありません。

とはいえ身体の機能の維持にナトリウムで200〜500mg/日(食塩で0.5〜1.3g程度)とされていますので[*1]、普通に生活する上では不足の心配はほとんどなく、意識して多めに塩分を取る必要はないでしょう。

妊婦の1日の塩分目安摂取量

妊娠中は6.5g/日という成人女性の目標量を意識したいです。1日3食として「1食につき2g」と考えると良いでしょう。


以下の各調味料の食塩量を目安にしてみてください[*3] 。
・しょうゆ 大さじ1:2.6g
・めんつゆ(ストレート)100cc:3.3g
・中濃ソース 大さじ1:1.0g
・マヨネーズ 大さじ1:0.3g


低カロリータイプの調味料は塩分が高い傾向がありますので、注意が必要です。

特に注意したい、塩分の取りすぎになりがちな食事

料理が苦手だったり、忙しくて外食や中食が多い場合は塩分の量に注意が必要です。また、家で調理する料理でも塩分の取りすぎになりやすいメニューがあります。

外食

外食は味の満足度を重視したメニューが多く、食塩が多くなりがちです。また、ラーメンなどメニューによっては高塩分のものもあります。汁を残す、ソースは半分にするなど、意識して減塩できるといいでしょう。

お惣菜・レトルト食品

コンビニのおにぎり

おにぎりは1個あたり1.0〜2.0gの食塩を含んでいます。サンドイッチも1包装2.0g以上の食塩を含むものがあり、これらとおかず類を組み合わせるだけでかなりの食塩量となります。パスタソースなどのレトルト食品については1食分で3.0gを超えるものもあるため、おかずの組み合わせや前後の食事での調整が必要です[*4,5,6]。

汁物

日本には食事に汁物を添える文化があり、味噌汁などを取る機会も多いですね。手作りでも味噌汁1杯で約1.5gの食塩量となります。具沢山にして汁の量を減らすなどの工夫をしてみると良いでしょう。

妊娠中の上手な塩分の控え方

ちょっとしたことで食塩が多くなってしまいがち。どのように普段の食生活を考えれば良いでしょうか? 食塩を1食2gを目指すためのポイントをお伝えします。

外食は控えてできるだけ手作りで

妊娠中は可能な範囲でいいので自炊を意識してみましょう。

自炊が習慣になることで、出産後、赤ちゃんを連れて買い物や外食が難しくても食事が整いやすく、また赤ちゃんのお食事の準備も楽になりますよ。冷凍野菜やカットされた冷凍肉、お魚の缶詰なども料理に活用できます。材料を切って調理器にセットするだけの調理家電などをチェックしてみることもおすすめです。

それでもお仕事をしていたりすると中々難しいこともあるかもしれません。買って食べる時には栄養成分表示の食塩相当量を参考に少ないメニューを選んだり、スマートミール認証を受けた商品の選択をすることもおすすめです[*7]。

▶︎スマートミールとは

調味料を工夫する

レモンを搾る

調味料を低塩タイプにしたり、だし汁を利かせた味わいにすることも減塩のポイントです。香りの良いゴマを使う、レモンなどの酸味の利用も塩分を控えた味付けにすることができます。

また、食卓でソース類などの味付けをする場合は、食材にソースを「かける」のではなく、別皿にソースを盛って、そこに食材を「つける」ことにより、調味料の量をかなり減らすことができます。

素材の味を活かした調理法にする

食材をじっくり焼いたり煮込んだりすることで旨味や甘味が増し、少量の味付けでもおいしく食べることができます。

また、和え物にするのではなく蒸し野菜に少しタレをつけるなどの食べ方もおすすめです。

カリウムを意識してとる

食塩を取りすぎないことに加えて、ナトリウムの排泄を促すカリウムの摂取も有効です。食事にカリウムを含む野菜類をたくさん取り入れてみてください。

妊娠高血圧症候群ならば塩分はダメ?

妊娠中に高血圧を発症した場合を「妊娠高血圧症候群」呼びます。妊婦さんの20人に1人の割合で起こる珍しくないものですが、お母さんとお腹の赤ちゃん両方にリスクがあり、注意が必要です。

実際、食塩を取りすぎは高血圧のリスクになります。しかし、妊娠高血圧症候群の原因や予防方法については研究が進んでいるものの、まだ結論は出ていません。

また、妊娠高血圧症候群と診断された後も、塩分を制限しすぎることについては否定的にとらえられており、医師の指導のもと管理を受けることが必要です[*8]。

妊娠高血圧症候群について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
▶︎妊娠中毒症とは?妊娠高血圧症候群の症状と治療法

まとめ

妊娠中はただでさえむくみやすくなるので、塩分の取りすぎには注意したいものです。食生活における減塩は自身で意識して実践できることですので、減塩のポイントを参考に食事を考えてみてくださいね。薄味を心がけることで出産後、赤ちゃんとの食事を考えることも簡単になります。凝ったお料理をする必要はありませんので、蒸すだけ、焼くだけ、茹でるだけなど色々な調理を試してみてくださいね。

(文:奥野由 先生/監修:川口由美子 先生)

※画像はイメージです

参考文献

[*1]「日本人の食事摂取基準 2020年版」. 厚生労働省, 2020年.
[*2]厚生労働省. 「令和元年国民健康・栄養調査報告」. 参照 2021年3月22日.
[*3]「日本食品標準成分表 2020年版(八訂)」. 文部科学省, 2020年12月.
[*4]セブン‐イレブン~近くて便利~. 「おにぎり」. 参照 2021年3月22日.
[*5]セブン‐イレブン~近くて便利~. 「サンドイッチ・ロールパン」. 参照 2021年3月22日.
[*6]ハインツ日本. 「パスタソース|商品情報|ハインツ日本株式会社」. 参照 2021年3月22日.
[*7]「健康な食事・食環境」認証制度. 「スマートミールの基準」.
[*8]「妊娠高血圧症候群|公益社団法人 日本産科婦人科学会」. 参照 2021年3月22日.
西川善之, と灘本知憲. 新 食品・栄養科学シリーズ 基礎栄養学. 化学同人, 2003年.

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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