小説
化石女の恋

週明け、会社に着くと、生意気な後輩がすでに席についていた。 「遅刻ですよ。センパイ」 空気が凍りそうなぐらい冷たい声で言われ、朝からムッとしてしまう。 「まだ就業時刻になっていない
週明け、会社に着くと、生意気な後輩がすでに席についていた。 「遅刻ですよ。センパイ」 空気が凍りそうなぐらい冷たい声で言われ、朝からムッとしてしまう。 「まだ就業時刻になっていない
どうしよう。武藤主任の「将来とか真剣に考えた」上での、お付き合いの申し込みを。 恋人は、慎也以外に考えられないし、先のことばかり考えても仕方ない。それはわかってる。 でもこの、理屈
楽しい時間ほど、あっという間に過ぎてしまう。翌日の朝には、帰りの車に乗り込んだ。スキー場からの道も、しだいに雪が少なくなり、チェーンを取り、トンネルに入って出ると、そこは日常に続く
詩織は淡々とした口調で「大阪に異動だってね」と言った。だけど、その目は寂しそうで、少しでも僕の存在を惜しんでくれる人がいることをうれしく思った。そして、詩織の寂しさが僕にもうつった
「お米、もう研げてるよ」詩織に言われて、手元を見た。白かったはずの研ぎ水が、いつの間にか透明に澄んでいる。米を飯ごうに移したところで、困って手が止まった。「水加減って、どうすればい
エレベーターを降り、いつも通りに廊下を行き、同僚に挨拶し、週明けの報告連絡の打ち合わせのあと、パソコンに向かうと、いつも通りに業務に取り掛かる。 ああ、今日ほど、仕事がありがたいと
そのうち額に冷たいものが当たって、わたしは目を開けた。気づくと冷えピタシートがおでこに貼られていた。そしてずいぶん前に修二とおたがいの家の鍵を交換したことを、頭の片隅でぼんやりと思