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20代で会社を辞めた理由。フリーアナウンサー田中みな実の挑戦 #Lifeview

あこがれの人、がんばってる人、共感できる人。それと、ただ単純に好きだなって思える人。そんな誰かの決断が、自分の決断をあと押ししてくれることってある。20~30代のマイナビウーマン読者と同世代の編集部が「今話を聞いてみたい!」と思う人物に会って、その人の生き方を切り取るインタビュー連載【Lifeview(ライフビュー)】。

2018年3月に横浜アリーナで開催され、約3万2,000人が来場したファッションイベント「マイナビ presents 第26回 東京ガールズコレクション 2018 SPRING/SUMMER」(以下TGC)。煌びやかなステージを作り上げるのは、何も衣装を着たモデルたちだけではない。マイクを持って場を仕切り、会場全体を盛り上げる司会進行役。その大役に抜擢されたのが、フリーアナウンサーの田中みな実だった。

TGCの舞台裏でお会いしてみると、テレビで見る以上に綺麗で驚いた。さらに頭の回転も速く、こちらが投げかける質問に素早く的確に回答してくれる。

彼女ほど「才色兼備」という言葉が似合う女性はいないと思う。誰もが羨むその魅力がどのように作られてきたのか、わずか10分間のインタビューから紐解くことにした。

20代のうちに、いろんな挑戦をしてみたかった。

「大学時代に所属していたサークルで、マドンナ的存在の素敵な先輩がいたんです。なんでも器用にこなされて、美しくて、みんなから愛される方でした。どんなお仕事に就かれるのか気になっていたら、アナウンサーになったと聞いて。そういう道もあるんだ、と知りました。先輩の影響で私もアナウンススクールに入ってみたら、日本語について考えたり、フリートークを学んだりするのがすごく楽しくて、アナウンス試験を受けたんです」

かつては翻訳の道を志し、大学時代も翻訳のゼミを取りながら、日々英語の勉強に勤しんできた田中アナ。その道から外れてまったくちがう世界に飛び込むことは、その後の人生を大きく左右する挑戦だったにちがいない。

それからTBSのアナウンサー時代を経て、30歳になる手前、彼女はもうひとつ大きな挑戦を決意した。TBSを退社し、フリーへの転身。彼女いわく“20代後半”というタイミングが重要だったという。

「会社の中にいると制約も多く、限られたお仕事しかできないけど、外に出てやれることってたくさんありそうだなと思ったんです。30代になってからだと落ち着いちゃって決心がつかなくなりそうだったので、20代のうちにフリーになろうと。自分がアグレッシブでいられる時期に、いろんなことに挑戦してみたかったんです」

会社には自分を守ってくれる安心感がある。その感覚が心地よすぎて、依存してしまう人は多い。私もそのひとりだ。だけど20代のうちに殻を破ってフリーになる、田中アナのような女性が羨ましくなるときもある。

「それまでは進行する仕事がメインだったのが、フリーになってからは番組にゲストとして出演させていただくことが増えました。そのおかげで、ゲスト側の気持ちを考えられるようになったんです。『ゲストはこういうことが気になるんだ』『こういうことを求めているんだ』と気づき、自分が進行側のときに活かせるようになりました」

ハキハキとした口調で明るく話す田中アナ。とはいえ、フリーになっていいことばかりではない。苦労したことを聞くと、少し低めのトーンで語り出した。

「ゲストとして出演したとき、自分について喋らなければいけないことが多くて苦労しました。おもしろいエピソードとか全然ないですし。自らエピソードを作って、みんなに楽しんでもらうようにお話ができるってすごいことですよね。それができる芸人さんやタレントさんを本当に尊敬します。自分にはあまり向いていないとわかったので、だからこそアナウンサーのお仕事をよりがんばりたいなと思いました」

学ばせてくれたTBSに、いつか恩返しをしたい。

大変だった経験も、しっかりと自分の糧にしている前向きさ。彼女のような向上心と強いメンタルがないと、到底フリーではやっていけないだろう。毎日お昼にMCを務める生放送番組『ひるキュン!』(TOKYO MX)の話でも、その一面が垣間見えた。

「いい意味で自由度の高い番組で、すごく楽しいです。ほかの番組とちがってニュースを扱っているわけではなく、出演者の方々とのコミュニケーションが番組の核。会話のキャッチボールは台本に書かれているわけではないので、アドリブ力が磨かれますね。毎日お昼の時間に何気なく見てホッとできるような番組にしていけたらなと思います」

また、番組で一緒にMCを務める大御所キャスター・徳光正行さんから学ぶことも多いと語る。

「徳光さんって、絶対に否定しないんですよ。誰かの意見を聞いたとき『なるほど、そうですよね』って受け止めるんです。私は一度ちがうと感じたらずっと気になってしまうタイプなんですが、それを『そっか、この人はこういう考えを持っているんだ』といったん自分の中に入れることが大事だと、徳光さんを見て学びました」

フリーになって冠番組を手にしても決して驕れることなく、学びの姿勢を崩さない。学生時代から決して変わらない、そのひたむきな内面こそが、彼女が才色兼備と呼ばれる所以なのかもしれない。

「テレビ局を退社したら、アナウンサーという肩書きはなくなるんですよ。だから“フリーアナウンサー”という職種は、本来は存在しないんです。それでもフリーアナウンサーと呼んでいただけることが本当にありがたいし、アナウンスの技術を学ばせてくれたTBSにも感謝の思いでいっぱいです。いつかこの仕事でTBSに恩返しができたらいいな」

今後のキャリアに悩みがちな20代後半。彼女が退社を踏みとどまっていたら、この現場で出会えたかどうかすらわからない。自信に満ちあふれて楽しそうな彼女を見ていると、少し勇気はいるけれど「会社を辞めてフリーランスになる選択肢もアリだなぁ」と思えてくる。

一歩踏み出すも、踏み出さないも自分次第。思いきって決断したその先の未来は、意外と明るいかもしれない。

(取材・文:高橋ちさと/マイナビウーマン編集部、撮影:前田立)

※この記事は2018年04月18日に公開されたものです

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