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クールな役の裏にある、少年の素顔。『曇天に笑う』古川雄輝インタビュー

聡明で、冷静沈着。とはいえ、その中には少しの熱と狂気が混ざる。そんな役を古川雄輝に演じさせれば、それはもうこの上なくハマる。3月21日公開の映画『曇天に笑う』で彼が演じるのは、主人公・曇天火(福士蒼汰)の元親友で、政府の直属部隊・犲(やまいぬ)の隊長、安倍蒼世。暗殺剣の使い手で、冷徹だが志高いキャラクターは、私たちが彼に抱くイメージそのものにかぎりなく近い。

でも、話を聞いてみれば、共演者との仲のよさを楽しそうに話す少年のような素顔も見えてくる。イメージ通りの役柄と、イメージとはちがう目の前の古川雄輝。それがまたおもしろい。クールな安倍蒼世というキャラクターの裏には、彼の意外なギャップがあった。

初挑戦のアクションシーンは「超大変」

――まずは出演が決まった時の気持ちをお聞かせください。

本広(克行)監督とお仕事するのははじめてだったので、純粋にうれしかったし、同世代の役者さんも多いので、現場が楽しくなればいいなと思っていました。でも、それと同時にアクションをやったことがなかったので「できるかな?」というちょっとした不安もあって。

――でも、アクションシーンは楽しみではあった?

もちろん「やってみたい!」という気持ちもありましたし、楽しみでもありました。だけど、やってみると難しかったです。それに「ちゃんと練習して、ある程度固めてから現場に入るから大丈夫だよ」って聞いていたんですが、いざ現場に入ってみるとそうじゃなかった。だいたい20分前に覚えたものをいきなり本番でやる、みたいな。想像していたのとは全然ちがったんです。ちょっと遅めに動いて、あとで映像のスピードを変えるのかなと思ってたけど、そういうことも一切せずにやりました。だから、動作がめちゃくちゃ早いんですよ。実際にやってみたら超大変だった。

――アクションそのものはもちろんですが、動きの段取りを覚えるのも大変そうですね。

そうなんです。しかも僕が演じた安倍蒼世は強い役なので、基本1対1じゃなくて1対数人が相手だったりするんですよ。だから、次から次へと人が襲ってきて、とにかく大変で……。

――完成した作品を観て、ご自身のアクションシーンをどう感じましたか?

隊長なので強くなきゃいけないんですけど、そう見えていたのでひと安心でした。ただ、ラストのアクションシーンが大幅にカットされていたのはショックでしたね。まぁ、僕だけじゃなくてみんななんですけど。ものすごくいっぱい撮ったんですよ。でもほとんど使われてなかった(笑)。

――それは残念! そんなアクションシーンも含めて、漫画原作が実写映画になることで楽しんでもらいたい部分はどこですか?

やっぱりこの作品を通してのいちばんの魅力はアクションだと思うので、映画でもそこを楽しんでもらえたらいいですね。あと、原作とちょっと変わっているのが、小関(裕太)くんのキャラクターを女の子から男の子に変えて、オール男性キャストにしていること。そこは監督も「『萌え』をテーマにしたい」と言っていました。僕らキャスト側は、別に「萌え」を意識して演じているわけではないんですが、監督はそういう部分を引き出すよう撮っていたらしくて。『曇天に笑う』は、兄弟愛とか幼なじみの男の友情とか、男同士のいろんな関係性が描かれた作品。もしかすると女性の方が見たら、そこに「萌え」を感じるのかもしれないですね。

――ということは、監督から何か演じる上でオーダーがあったんですか?

「絶対にこうしなきゃダメだよ」みたいなことはあまりなかったですね。基本こちらからの提案にすごく耳を傾けて相談に乗ってくださいました。最初に監督と相談したのは、髪の色をどうするかってことくらい。僕が最初のほうに衣装合わせをやったこともあって、まだ具体的に全体像が決まっていなかったんです。僕は「原作ファンや舞台ファンが観たときに、金髪じゃないとおかしいから金髪にしたい」って言ったんですけど、監督は「金髪にするとアニメに近づきすぎるから黒のままにしてほしい」って。そこで、間をとって茶髪にしました。でも、そのあと衣装合わせをした人たちはかなり(原作や舞台に)寄せていたんですよね。だから、僕もあとのほうに衣装合わせをしていたら金髪になってたんじゃないかな?

ライバル心はない。絆の理由はサウナとUNOと、過酷な撮影

古川雄輝演じる安倍蒼世が率いる、犲のメンバー

――共演シーンが多かった犲のメンバーとは、かなり仲がよかったとか。

犲はみんな仲がよかったです。大東(駿介)さんがいちばん年上なので、兄貴みたいな感じで僕たちを引っ張ってくれていました。「UNOやろうよ」って待ち時間に遊んだり、みんなで銭湯に行ってサウナに入ったり。犲のメンバーではないですけど、(桐山)漣さんとも共演以来ずっと仲よくしていて、年末年始も一緒に飲んでました。

――でも、桐山さんとはクライマックスシーンくらいしか共演シーンがないですよね?

そうなんです。セリフのやりとりも一切ないんですよ。にもかかわらず「仲よくなっちゃったね」ってお互い話していて。漣さんは(犲の)敵なのによく僕たちと一緒に行動してましたね。

――桐山さんにご取材したときもそんな話題が出て、サウナでUNOをしていたと聞きました(笑)。

もうおかしくなってたんです、感覚が。UNOがやりたすぎて、みんなでドンキへ買いに行きました。そしたら「ヤバい! プラスチックの、水の中でできるUNOがある!」って盛り上がって。で、そのまま銭湯に行って、サウナでUNOをやってました。(ゲームで)上がらないとサウナから出られないので、あれは過酷でしたね(笑)。

――本当に仲がよかったんですね。

同世代の男が集まるときって、ライバル心みたいなものが芽生えて、バチバチしちゃうパターンが多いんですよ。でも、この作品の現場はそんな空気にならなかった。たぶん現場が過酷すぎて、みんな仲よくなったんじゃないかな。「みんなでがんばろう!」って。夏なのに撮影場所が10度くらいの気温で、ベンチコートを着ないとキツイくらい寒かった……。サウナでやるUNOもそうだけど、撮影だってかなり過酷でした。

――最後に、映画の見どころをお願いします。

カッコいい人たちが「強くカッコよく」をテーマに演じているので、観たらスカッとする映画だと思います。監督が言っていた「『萌え』をテーマに」という部分でいうと、主人公の天火と蒼世の仲が悪そうで、でも最後はちょっと仲が深まっていくのが見どころ。そのあたりにも『萌え』が詰まっていると思うので、映画館で観てぜひ『萌え』てください!

映画『曇天に笑う』

舞台は、文明開化が進む明治初期。琵琶湖のほとりにある大津では曇り空が続き、町の人々はオロチ(大蛇)の復活が近いのではないかと不安を抱いていた。そんな中、町を守ってきた曇(くもう)神社の14代目・曇天火(福士蒼汰)がその復活を阻止するべく、たったひとりで背負う決意をする。一方、政府が管轄する特別チーム・犲(やまいぬ)も、隊長の安倍蒼世(古川雄輝)を筆頭にオロチを封印するために動きはじめ……。

2018年3月21日(水・祝)全国公開
(C)2018映画「曇天に笑う」製作委員会 (C)唐々煙/マッグガーデン

(取材・文:落合由希、撮影:三宅祐介、ヘアメイク:赤塚修二(メーキャップルーム)、スタイリスト:五十嵐堂寿)

※この記事は2018年03月16日に公開されたものです

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