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「今がいちばん楽しい」ならそれでいい。瑛茉ジャスミンインタビュー

ああ、もう予定変更だ。今日は、彼女のとびきりハッピーな話だけ切り取ろう。

まるで、女友だちに話しかけるようなナチュラルで気取らない話し方。モデルをはじめた決断や生き方について聞きたいと言えば、「重い!」と楽しそうな笑顔に一蹴された。待って待って、どうしよう。彼女の言う「重い話」を聞く気満々で質問を用意していた私は、当然焦る。でも、彼女の話を聞けば聞くほど、そんなことはどうでもよくなった。だって彼女の口からは、ネガティブな言葉なんてひとつも出てこなかったから。

1枚の写真が好き。だから、その一部になりたかった。

「モデルをはじめたのは、正直流れだった。友だちが神戸コレクションのオーディションに応募したことがきっかけで、モデルをやることになりました。なんかよくわからないけど、最終選考に残っちゃったから。最初は『やろう』って特に決めていたわけではないかな」

天真爛漫な彼女は、いつもレンズの向こうで楽しそうに笑う。この仕事がやりたくてやりたくて、自ら選んで立っているのだと思っていた。だから、流れという言葉が紡がれるのはあまりにも意外で。それでも「最終的にやるって決めたのは自分自身?」と聞けば、「もちろん」と自信たっぷりに頷いてくれた。「やるって決めたときには、覚悟を持ってた」と。

そして、その覚悟の裏にあったのはこんな気持ち。

「モデルをやろうって決めたのは、写真が好きだったから。撮られるのが好きというよりも、1枚の写真そのものが好きでした。背景、人物、洋服……、写真を作っているものすべて。だから、その一部に自分がなりたかった。写真に対する思いが、覚悟のいちばん大きな理由だったと思う」

「好き」ほどの原動力って、きっとない。この仕事をはじめてからたくさんの人にインタビューをして、その度に感じること。話を聞きたいって思うほどに眩しい存在は、みんな好きなことと一生懸命向き合っている。彼女もそのひとり。もちろん、それは簡単なことじゃない。私自身、働いてお金をもらうようになり、好きなことをやって生きていくのがどれだけ難しいことかを教わった。でも、彼女は息をするように、それを自然と仕事にできている人だ。

責任もひっくるめて、今がいちばん楽しい。

どこまでもフラットで、フレンドリー。はじめて対面したとは思えない空気感に包まれると、自然とこちらまで笑顔になる。彼女は周囲までをもハッピーに変える、不思議なパワーを持った女の子。それは、今も昔も。約15年前、『天才てれびくん』に登場していた幼いころの彼女も、また同じように楽しそうな笑顔を見せていた。

「『天才てれびくん』は、たしかオーディションが5回くらいあったんだよね。しかも5,000人の中から選ばれるのは、3人とか4人とか。あのころの私はけっこうな変わり者で、おかしなことばかりしてた。それが逆に目立ってたから受かったのかもしれない」

懐かしそうに当時のことを振り返り、ゲラゲラ笑う。みんなが悲しいときに楽しくて、みんなが笑っているときはつまらない。極端にズレた感覚を持っていた彼女は、まわりからよく「変わってるね」なんて言われていたらしい。でも、それが最大の魅力だってことは、はじめて言葉を交わした瞬間からなんとなく感じていた。だって、彼女と話していると「しっかりインタビューしなきゃ」「この場をうまくまわさなきゃ」っていう、くだらない虚勢がはがれていく。『天才てれびくん』のプロデューサーも、そんな瑛茉ジャスミンが持つ天性の魅力にやられたにちがいない。

「昔は、仕事というと『学校に行かなきゃ』ってくらいの認識だった。ちっちゃいときは自分の意思なんてないから。でも、無知がゆえの楽しさはあったかな。お仕事っていう感覚はなくて、遊びと一緒」

テレビの画面越し。当時の彼女が羨ましいくらい楽しそうに見えたのは、きっとこんな感覚があったから。そして、次に紡がれたのは彼女らしい言葉と満面の笑み。

「今はいろんなことがちょっとずつわかってきたし、責任もある。でも、それをひっくるめて今のほうが断然楽しい。やりたいことがちょっとずつ見つかったり、それをみんなにわかってもらえたり。そんなことがどんどん増えてきて、今がいちばん楽しい!」

誰しも、とびきり楽しくて前向きな瞬間がある一方で、ネガティブでどん底にいる瞬間だって絶対にある。話を聞くなら、やっぱりその2つを聞くべきなんだろうけど、最高にハッピーな彼女を前にしたらどうだってよくなった。好きなことを仕事にして、楽しいって思えるほどに責任を持つまでには葛藤もある。でも、無理にそんな部分を知ろうとするより、仕事を楽しいって純粋に話す彼女の姿を切り取りたいと思った。

「今がいちばん楽しい」――予定変更なんてどうってことない。こんな最高のひと言が聞けたのなら万事OKだ。

(取材・文:井田愛莉寿/マイナビウーマン編集部、撮影:前田立)

※この記事は2018年02月17日に公開されたものです

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