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彼は一体何者? 謎の美少年・ゆうたろうインタビュー

彼は一体何者なんだろう? 最初は単純な好奇心だった。

私が初めて彼を見たのは、約1年前、取材で行ったポストペット20周年記念イベント。ゲストとして登壇した彼は、中性的な美しい顔立ちでピンクのタートルネックを着こなし、ポストペットのキャラクター「モモ」のぬいぐるみを抱えていた。まさに「謎の美少年」という肩書きがふさわしい彼の名前は、ゆうたろう・19歳。

イベント後も、なぜか彼のことが頭から離れなかった。調べてみてわかったのは、古着屋「サントニブンノイチ」のスタッフだということ。バラエティ番組『マツコ会議』に出てから話題になり、モデルとしても活躍しているということ。最近はそれに加えて、舞台にも出演しているというのだから驚きだ。

彼はまだ19歳。未成年だというのに、一体どれだけのキャパシティと可能性を秘めているんだろう。私はTGC広島のバックステージで、謎の美少年・ゆうたろうと、初めての対面を果たした。

マスクしないと外出できないくらい、自分の顔が嫌いだった

「僕の地元が広島で、ちょうどこの会場からすぐのところに住んでいたんです。ライブやイベントがあれば、たまに遊びに来たりもしていました。広島にいたころの自分は、今その舞台に立てるなんて想像できなかっただろうなぁ」

うれしそうな顔で、昔を懐かしむゆうたろう。「サントニブンノイチ」で働きはじめたのも、広島で過ごした日々がきっかけだった。当時、広島に開店した「サントニブンノイチ」のポップアップショップに姉と一緒に行った彼は、その場でオーナーに声をかけられ、大阪本店のスタッフとして働くことになったという。

「それまでは、洋服自体にあまり興味がありませんでした。黒い服ばっかり着てましたし、こだわりも特になかったです。だけど『サントニブンノイチ』で働くようになってから、古着の楽しさを知るようになりましたね」

それに……と、彼は少しためらいながら言葉を続ける。

「実はずっと自分の顔が嫌いで、学校にもあまり行っていなかったんです。マスクをしなきゃ外にも出られないくらい。だけどファッションで自己表現することで、自信が持てるようになりました。あのころの自分には『もっと早く行動しとけ!』って言いたいですね」

オーナーからの後押しで決心した、芸能界デビュー

それから再び、ゆうたろうに転機が訪れる。たまたま東京の原宿で竹下通りを歩いていたとき、『マツコ会議』のスタッフに声をかけられ、あっという間に芸能界デビュー。奇跡のようなめぐり合わせの連続に、彼自身も最初は戸惑いを隠せなかった。

そんなとき背中を押してくれたのが、「サントニブンノイチ」にスカウトしてくれたオーナー。「ゆうたろうに出会ったときから、そういう(芸能の)道に進むべき子だと思ってたよ」と、芸能界デビューを我が子のように喜んでくれた。

「広島から大阪にひとりで通っていた16歳のころから、ずっと面倒を見てくれた人で。第二の家族みたいな感じですね。その言葉を受けて、芸能界でがんばろうと決心しました」

オーナーに限らず、家族やショップの仲間など、まわりの人たちが自分の「やりたいこと」を後押ししてくれると、ゆうたろうは語る。12月末公演予定の舞台『笑う吸血鬼』の稽古現場でも、そう感じることが多いという。

「僕、否定的なことを言われすぎると塞ぎ込んでしまうタイプなんですけど、舞台の演出の方が『ゆうたろうがしたいようにやっていいよ』と言ってくれて、演技で自由に表現できるようになりました。すごくやさしいんですけど、大事なときはちゃんと厳しく接してくれる方で。あと共演者のみなさんからも『俺たちに気を遣わなくていいから、思ったことがあれば何でも言ってほしい』という言葉をもらったときは、本当に楽になりましたね」

19歳のゆうたろうが秘めている、無限の可能性

私はゆうたろうと話しはじめてから、その落ち着いた物腰と丁寧な言葉遣いなど、かわいさの裏に19歳とは思えない大人っぽさを感じていた。だけど、やっと気づいたことがある。ゆうたろうは多くの大人たちと接することで、彼らの言葉遣いや仕事スキル、やさしさまでをもたくさん吸収して、自分の一部にしているのかもしれない。また、それだけ背中を押してあげたいと思わせるほどの魅力と可能性が、彼にはあるのかもしれないと。

長女として生まれた私は昔から甘えるのが苦手で、目上の人に接することに抵抗感があった。だけど上京してから尊敬できる先輩方に出会い、私が知らない分野や仕事の話を聞くことで、ぱっと視界が開けた気がした。「編集はその人の生き様を表す仕事だから、自由にやりたいことをやっていいんだよ」というのは、私を編集者の道に押し上げてくれた先輩からの言葉。それ以外にも、目上の人たちの言葉で今までどれだけ救われてきただろう。

どんなに目まぐるしい日々でも、多くの人と接したらそれだけの成長があると思う。広島からひとり上京したゆうたろうも、たくさんの大人たちからさまざまな影響を受けて、新しい「ゆうたろう」を形作っている途中なのだ。

「僕もこれから大人になっていくので、ショップ店員・モデル・役者と枝分かれした道で、自分の色を濃く出していきたいです。同じ人物だけど、それぞれの道で見せる顔は全然ちがう。そんな人になれたらいいですね」

ゆうたろうという男の子は、何者なんだろう?
彼は古着屋のショップ店員であり、モデルであり、役者でもある。

それぞれの道で、一体どんな「ゆうたろう」が見られるのか。どんな大人になるのか。まだ19歳の彼に秘められている無限の可能性が、今から楽しみでならない。

(編集・文:高橋ちさと/マイナビウーマン編集部、撮影:前田立)

※この記事は2017年12月26日に公開されたものです

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