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【少女マンガに学ぶ不倫】第9回『東京タラレバ娘』

和久井香菜子

少女マンガ攻略・解析室室長の和久井香菜子が不倫を扱った少女(女性向け)マンガを毎週1冊ピックアップ! そこに描かれた男女の姿から、不倫の哀しさ恐ろしさを学んでいく連載です。美しく描かれることも多いけど、不倫はダメ、絶対!

こんにちは、少女マンガ攻略・解析室室長の和久井香菜子です。

他人にプンプン腹を立てたり、誰かを非難したりしていませんか?
それって、やればやるほど自分が辛くなるんですよ。だって誰かに超絶文句を言ったあとって、自分はぜったい同じミスをできないじゃないですか。
そのときに「自分の場合は仕方がなかった」って言い訳するのは、超絶みっともないですよね。
誰にだって事情はあるんです。それを人に見せるか見せないかの違いだけ。事情があってもなおミスをするかしないかだけ。

やっちまったものは仕方がないから、失敗をしたら、次に同じことをしないように対策を考える。そうやって人は「できなかったこと」ができるようになっていくんだと思うんです。そのときに「今回は仕方がなかった」と言い訳すると、失敗の原因を突き止めることができないから、また同じことを繰り返すかもしれません。

「原因究明」と「状況説明」と「言い訳」って、同じになってしまうことがあるんですよね。事情を説明しているつもりが実は単なる言い訳になっているかもしれないし。

相手の失敗や至らなさに寛容になるのは、大人として必要なことだと思います。
でも、それが「寛容」なのか「言い訳」なのかよくわからなくなっちゃう場合もあるようです。

今週の教科書『東京タラレバ娘』

ほんとうにこの作品は、グサグサ女を攻撃してきますよね。恋愛がいいことばかりじゃないことをこれでもかと教えてくれます。
主人公は3人のアラサー女性。脚本家の倫子、ネイリストの香、そして父のやっている居酒屋で働く小雪。3人は何かというと小雪の店に集まり、くだまいて酒飲んでます。

合コンの後に女子だけで反省会をしてはいけないという話があります。たいていの場合、合コン参加者の男性に対する厳しい批判で終わってしまい、「ちょっといいな」と思う人がいたとしても、その気持ちの芽を摘み取られてしまうからです。女子会ばっかりやってる女に男ができないというのも同じ理由ですね、きっと。

さて3人は、倫子を筆頭に三人三様の男性事情を抱えることになります。
倫子は、小雪の店で会ったKEYというモデルとなんやかや。香は元カレだったバンドマンと再会してセカンド(セカンド以下?)に。そして小雪は、倫子と香がゴキブリ退治のために連れてきたサラリーマン丸井と……。

このサラリーマン、小雪の作るおでんを「うまい」と言ってモリモリ食べます。小雪はこのサラリーマン丸井がめちゃくちゃタイプでした。そして丸井も小雪のことを「美人だ」と言い、2人は出会ったその日から急接近。

翌日、飲みに行った2人は、とてもいい感じです。そうして丸井は猛烈に小雪にアプローチした後、言うんです。
「僕、結婚してますけどいいですか?」

いいわけねえだろ!(『流星の絆』の二宮くんのセリフ)ですよ。

「でも 嫁とは別居中です」
「嘘つく気も隠す気もありません」
「でも小雪さんが嫌なら諦めます」

そして小雪は思うんです。
「でも 正直に言うだけ、この人は誠実だ」
「真実を話した上で選択権を私に委ねてくれた優しい人だ」

……ねえそれ、ホントに?

小雪に学ぶ「不倫をスタートさせない対策」

本当に誠実な人なら、口説く前に真実を言いますよね。もっと誠実なら、既婚者なら口説かないですよね。
妻とは本当に別居中だったけれど、妻は妊娠中でした。別居中というより、里帰り中と言った方が正しいですね。

「(妻との結婚は)僕が思い描いた幸せとはずいぶん違ってた」
「幸せでいえば、ここでこうして小雪さんと岩盤浴しながらおしゃべりしてるほうがよっぽど幸せだよ」

そう聞いて、小雪は「クズ…」と思います。ホントにクズですよね。
生活のかからない無責任な関係の女と遊ぶほうが、リアルをともにする妻といるより楽しいに決まってるでしょうに。

だけど小雪はこう思ってしまうんです。
「でも正直で可愛い」「子供好きでもないのに幸せふりかざしてくるそのへんの男よりよっぽど正直だわ」

いやいや、そこも大目に見るところじゃないから!
そうして、結局小雪はズルズルと泥沼にはまっていってしまいます。

関係が始まってしまったら、切るのは難しい。実際に小雪は、別れる別れると言いながら、ズルズルと引きずってしまいます。
ほんのつかの間、いい夢を見るために目をつぶってもいいの?
結局、いい終わり方をしなければ「あれは無駄な時間だった」と思うことにならない?
だって小雪たち3人は、つかの間の恋がしたいんじゃなくて、結婚できるパートナーを探してるんだから。

相手を肯定するだけが大人じゃないですよね。小雪の彼に対する肯定は、もはや不倫をすることへの言い訳のようです。
だけど、関係を持ってしまったら、否定するのは難しい。最初に既婚だということがわかった時点で、ハッキリと断る強い意志を持っておくべきなのでしょう。

だって、どんなに家庭が壊れていても、寂しくても、不倫しない人はしないのだから。新しい恋をしたいのなら、古いしがらみをしっかり終わらせるのが筋じゃないのかしらん。相手ともめてしまってうまく別れるまで時間がかかるというならともかく、配偶者に内緒の不倫は極悪ですよ。

まとめ

男性といい感じになる前に「結婚してないの?」と確認しないといけないですね。
あれこれ自分に言い訳して、図々しくも不倫を持ちかける男っているんだから。

それにしても、丸井みたいに無責任な理由でのうのうと不倫されたら、嫁としてはたまったもんじゃないなあ、もう。

(文・イラスト:和久井香菜子)

★次回の『少女マンガに学ぶ不倫の実態』は12月10日(土)掲載予定です、お楽しみに!

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※この記事は2016年12月03日に公開されたものです

和久井香菜子

少女マンガ攻略・解析室 室長(http://kanako-wakui.net/index/)、編集・ライター。卒業論文で『少女マンガの女性像』と題して、女性の社会進出と少女マンガの主人公の描かれ方がどうリンクしているかを研究。以後、各種少女マンガレビューの執筆を始める。著書に『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)がある。

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