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ライフネット生命CEO出口治明さんに聞く、働く女性の「お金の不安」は一体どこからきてどこへいく?

島影真奈美

それなりに貯金もしているけれど、将来を考えるとなんだか心配……。そんな漠然としたお金の不安を抱える働き女子は少なくありません。一体どうすれば、この不安から解放されるんでしょうか。ライフネット生命の代表取締役会長兼CEOで、『働く君に伝えたい「お金」の教養』の著者でもある出口治明さんに聞きました。

マイナビウーマン世代の働く女子は、「将来の不安」を抱えています。この不安から脱出できるものなんでしょうか。

出口さん:できますよ! まず、率直に言うと現在、みなさんが抱えてる「不安」の多くは、”思い込み”によるものです。

──思い込みですか!

出口さん:そうです。例えば、「日本政府も年金もアテにならないから、マジメに年金を払うだけ損だ。自分で資産運用しよう」なんて意見をSNSなどで見かけたことはありませんか?

──よく見かけます。

出口さん:もし本当に政府が年金を払えなくなるときが来るとしたら、それは日本政府が破綻するときです。国がつぶれたら、金融機関もつぶれます。みなさんが「政府は信用にならない」とせっせと金融期間に預けた財産も、紙くずになるでしょう。

──自分で積み立てるより、国民年金のほうがよほど安心ということですか?

出口さん:その通りです。近代国家では、その国以上に安全な金融機関は存在しません。なのに、なぜ「年金は危ない」と言うと思いますか? 答えは「不安を煽ると商売がやりやすくなるから」です。

「安心してください。年金制度は崩壊しません」と聞かされたら、資産運用のための金融商品なんて買いたくなりませんよね。不安な情報に出会ったら、「これで儲かるのは誰?」と考える癖をつけることが大切です。

──そうなると、老後資金として年金を頼りにしても大丈夫なんでしょうか。

出口さん:“年金だけ”に頼るのはおすすめしません。一般論で考えれば、年金制度は破綻しないし、税金を投入している以上、支払い損にはなりません。でも、将来の支給額が生活を維持するのに十分なだけもらえるのかはまた別の話です。定年も関係なく、働き続けることも含め、自助努力はもちろん、必要です。

新刊『働く君に伝えたい「お金」の教養』には、「知る」「使う」「貯める」「殖やす」「稼ぐ」の5つの講義が収録されています。「知る」の次に「貯める」ではなく、「使う」が来ているのは珍しい構成のように感じました。

出口さん:「知る」の次に「使う」を解説するのは、ポプラ社の編集・天野さんのアイディアです。彼自身も20代半ばなんですが、「僕たち若い世代は、お金は使うよりも、まず貯めなくちゃという意識がある」と言うじゃないですか。うちの会社の若手社員に聞いても、みんなそうだと言う。これはマズいぞと思い、まずは「使い方」を解説することにしたんです。

──「使う」より、「貯める」を優先するのはマズいことなんですか?

出口さん:20~30代の方々と話をしていると「貯める」に対する執着が、お金に対する不安を生む原因になっているような気がしてならないんです。お金は、人生を楽しくするための手段に過ぎません。お金そのものに価値があるわけではなく、何かと交換したときにはじめて価値が生まれるんです。

──なるほど。では、正しくお金を使うためにはどうすればいいでしょうか。

出口さん:お金を使うときのルールはたったひとつ、「楽しいかどうか」です。ただし、「楽しく使う」と「何も考えずに使う」のはまったく違います。収入の範囲で、優先順位を考え、自分が納得できるよう使うことが大切なんです。

──20~30代女性が、お金に縛られずに生きていくために今すぐ始めておくべきことがあれば、教えてください。

出口さん:投資ですね。特に、おすすめしたいのは「自分への投資」です。現在の会社員の生涯賃金は高卒で2億円、大卒で2億5000万円と言われています。2億円の価値を秘めた自分自身に投資し、将来その価値が2倍になれば、4億円のリターンが得られます。今のみなさんにとって、もっとも価値が高く、成長性が高いものは”自分自身”なんです。

──「自分への投資」というと、具体的にはどんなことをすればいいんでしょうか。

出口さん:好きなことや面白いと感じることを一生懸命勉強すればいいんです。興味のある分野の資格をとるのもいいでしょう。人生の選択肢を増やせるものはすべて「自分への投資」になります。「これならできる」という得意技を磨くことが、”稼ぐ力”の底上げにもつながります。

──“得意技を磨く”というのが、また難しそうでもありますが。

出口さん:全然難しくありませんよ。小学校や中学校のクラブ活動を思い出してください。バレーボールやバスケットボール、書道でも何でも構いません。まったくの初心者だった頃、どうやって上達しましたか?

──練習……ですか?

出口さん:そうです! いきなりうまくやろうと思うから頭を抱えてしまう。でも、じつはみんな、何かのジャンルでは上達した経験を持ってるんです。遠回りに思えても、コツコツ努力するのがいちばんの近道なんです。あとは「良い本を読むこと」ですね。

──”良い本”を見分けるコツは?

出口さん:まず、根拠となるデータが明示されているかどうかを確認するのは、基本中の基本です。その道のプロが書いたものも参考になります。本を読んで、自分のアタマで考える。そして、また本を読む。それを繰り返すうちに、本を選ぶ目も自然と養われていきます。

(島影真奈美)

※この記事は2016年01月29日に公開されたものです

島影真奈美

フリーのライター&編集。モテ・非モテ問題から資産運用まで幅広いジャンルを手がける。共著に『オンナの[建前⇔本音]翻訳辞典』シリーズ(扶桑社)。『定年後の暮らしとお金の基礎知識2015』(扶桑社)、『レベル別冷え退治バイブル』(同)ほか、多数の書籍・ムックを手がける。ハーバー・ビジネス・オンラインにて『仕事に効く時代小説』連載中。書籍や雑誌、マンガの月間消費量は150冊以上。マンガ大賞選考委員でもある。

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