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先生教えて! 働く女子が知っておきたい「ノロウイルスの基礎知識と対策」

寒い季節になると、全国各地で流行するノロウイルス。昨年から今年にかけて新型ノロウイルスの発生が確認されるなど、最近ではその動向に注目が集まっています。「ノロウイルスってどんな病気?」「症状がツラそうだけど、予防ってできるの?」など、その症状や対策が気になるという人も多いのでは? 今回は、そんなノロウイルスに関するあれこれを、東京医科大学微生物学分野主任教授の松本哲哉先生に聞いてみました!

知っておきたい! ノロウイルスの基礎知識

■ノロウイルスってどんな病気?

ノロウイルスは、腸の感染症です。喉や鼻など、主に「気道系」に感染する風邪のウイルスとは異なり、腸管の中でウイルスが増殖して、「消化管」で感染するのがその特徴です。多くの人にみられる症状としては、「嘔吐」「腹痛」「下痢」など。特に寒い時期に感染しやすく、人から人へ感染が広がりやすいという点では、風邪に共通する部分もありますね。しかし、基本的に風邪とは「感染する部分」と「症状」のちがいがあります。

■ノロウイルスの感染経路はどこから? 「生牡蠣」に要注意!

ノロウイルスは、主に「生牡蠣」など二枚貝の中に潜んでおり、冬になって人々がこれを食すことで、感染していきます。「生牡蠣」を食べて“当たった”という表現をすることがありますが、たいていの原因はノロウイルスだという場合が多いですね。そして、次は感染した人から人へ、とウイルスは拡大していくのです。感染者の嘔吐物や下痢便の中にはたくさんのウイルスが含まれているので、それらを触っただけで感染リスクは高まります。また、その感染者が食品を扱うことで、いわゆる“食中毒”が発生する恐れも。つまり、人から人へ感染したり、食べ物を介して、“食中毒”という形で広がったりしていくのが、その感染経路です。

■ノロウイルスの初期症状とは? 症状が出ないケースも

先ほど話したように、ノロウイルスの主な症状は、「嘔吐」「腹痛」「下痢」の3つがポイント。一部の人は熱が出る場合もあります。典型的な症状のパターンとしては、吐き気を感じたら我慢できず、すぐにその場で吐いてしまうというもの。水のような下痢も繰り返し起こるため、トイレから離れられないという人もいます。しかし、最近では必ずしも全員がそこまで症状がひどいわけではない、ということもわかってきました。「なんとなくムカムカして、便がゆるい」という人でもノロウイルスに感染している恐れがあります。今までは典型例だけが注目されてきたわけですが、場合によっては、ほとんど症状が出ない「不顕性感染」があることも明らかになってきました。とはいえ、「不顕性感染」の人もウイルスは持っており、他の人にうつす可能性はありますので注意をしてください。

私たちにできることとは? ノロウイルス対策

■ノロウイルスの予防には何をすればいいの?

ノロウイルスにはワクチンがないので、直接的に予防をする方法がないというのが現状です。また、ノロウイルスには直接有効な薬もありません。したがって、①ウイルスを体の中に入れない、②ウイルスを体の中で増やさない、という2つの手段で防ぐほかありません。①の場合は、「手洗いをする」「食べ物を加熱する」といったリスクを減らす工夫をすること。②の場合は、「体内でのウイルスの増殖を防ぐ食品を摂取する」ことが挙げられます。この3つの予防法のポイントは以下のとおり。

・手洗い
手を洗うタイミングが重要。汚染されたトイレや、電車の手すり、エレベーターのボタンといった不特定多数の人が触っているものに接触したあとが危険。そのようなものに触ったあとや、外出先から帰ったタイミングで、流水と石けんで30秒以上しっかり洗う。指の間や指の先は洗い残しが多い部分なので、ていねいに洗うと◎。

・食べ物を加熱する
基本は、85~90℃で90秒以上加熱することでウイルスは死んでしまう。とはいえ、料理の度に温度を測ることは難しいので、“ぐつぐつと沸騰するまで火を通す”ということが重要。

・体内でのウイルスの増殖を防ぐ食品を摂取
ノロウイルスの増殖を防ぐ物質として、母乳などに含まれるラクトフェリンというたんぱく質が有効。ナチュラルチーズにも含まれるが、あまり含有量は多くないため、ラクトフェリン入りヨーグルトや錠剤などで摂取するとよい。冬の時期にはできれば週に4日以上、これらを摂取することで、発症のリスクを減らすことができる。

■働く女子必見! オフィスでのノロウイルス対策

ノロウイルスは、感染している人に必ずしも症状が出ているわけではないので、そんな「不顕性感染」の人が一緒にオフィスで働いている可能性は十分にあります。症状がない人が近くにいても、よほどの接触がない限り、直接感染する可能性は低いでしょう。しかし、共同で利用するトイレや、ドアノブ、電話など共通でみんなが触るものなどはウイルスで汚染されている場合も。したがって、そのような場所へ行ったとき、触れたときは、こまめに手を洗うことが大事です。なお、ノロウイルスには通常のアルコール消毒薬は無効です。もし誰かが嘔吐して消毒が必要となった場合は、塩素系の消毒薬を適切に希釈して使用しましょう。

■もしノロウイルスに感染してしまったら……

ノロウイルスに感染した人が仕事に復帰したとしても、1カ月くらいは腸の中にウイルスが潜んでいます。たとえ下痢などの症状がなくても、その期間は“他者への感染のリスクがある”ということです。もし自身が感染したら、手洗いをこまめに行って、まわりに感染させないという気配りが重要です。周囲も“うつる可能性がある”ということはわかった上で、対応したほうがいいですね。

激しい下痢や嘔吐、そして腹痛……。もしもノロウイルスに感染してしまったら、日常生活や仕事に支障をきたしてしまうことはたしかですよね。そうならないためにも、ノロウイルスに関する知識を深めた上で、しっかりと予防をしていきましょう!

今回お話をお伺いした、松本哲哉先生

東京医科大学微生物学講座主任教授。昭和62年長崎大学医学部卒業後、同附属病院第2内科入局。平成5年大学院修了後、東邦大学医学部微生物学講座助手に。平成12年ハーバード大学研究員、平成17年東京医科大学微生物学講座主任教授、平成19年東京医科大学病院感染制御部部長を務める。

(取材協力:松本哲哉、文:マイナビウーマン編集部)

※画像はイメージです

※この記事は 総合医学情報誌「MMJ(The Mainichi Medical Journal)」編集部による内容チェックに基づき、マイナビウーマン編集部が加筆・修正などのうえ、掲載しました(2018.08.09)

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください

※この記事は2016年01月19日に公開されたものです

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