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女性は運転がへたくそだって!? 本当かどうか専門家に聞いてみた。

伊藤康江

紅葉シーズンが到来! ドライブデートや女子旅で車を運転する機会が多くなるこれからの季節、安全運転で行楽を楽しみたいもの。ただ世間では“女性は運転が下手! ”なんて、ひどいレッテルを張られているのが実状。そこで本当に女性は運転が下手なのか、交通事故防止コンサルタントの上西一美先生にお話を伺ってきました。女性が起こしやすい事故やそれを防ぐための対策も必見です!

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女性は本当に運転が下手なのか

――よく“女性は運転が下手”と言われますが、本当に女性ドライバーの事故って多いのでしょうか?

上西先生:“下手”というのは、偏見のような気がします。事故率は男性と変わりません。ただ一般的に男性と比べると、運転している距離や時間が短いこともあり、経験や知識が不足しているのは確かです。運転というのは「認知・判断・動作」の3つが大切なのですが、この経験や知識不足というのは、判断能力の低さにつながります。また動作はスポーツと一緒なので、普段から運動不足気味の人は、反応が遅い可能性がありますね。そして認知については、脳科学的に空間認知力が女性の方が低いと言われています。そういったことから、“女性は運転が下手、事故を起こしやすい”と思われているのかもしれません。でも経験を積めば、運転技術は確実にアップするので安心してください。

また、よく運転するのが怖いという女性がいますが、“怖い”という意識があると、安全運転を心がけるようになるので、事故の抑止力にもつながります。男性に多い事故原因は、女性とは対照的な“過信”。ヘンな自信を持って運転しているため、スピードを出し過ぎるんですね。雨天は事故が少ないけれど、雨上がりは事故が多いのと同じ。雨は上がっていても路面はまだ濡れているため、スリップしやすいんです。油断は禁物ということですね。

●女性ドライバーの現状

・事故率は男性と変わらない
・運転している距離や時間が短いため経験や知識が不足している
・脳科学的には空間認知力が男性より低い
・運転に対し「怖い」という意識が強いため大きな事故を起こしにくい

女性ドライバーに多い事故って?

――女性ドライバーが起こしやすい事故ってあるのでしょうか? 

上西先生:女性ドライバーに多い2大事故は車庫入れと車線変更時の事故です。後ろを振り返りながらバックするときに、どちらにハンドルを切ればいいのかわからなくなったり、壁との距離感がわからずぶつけてしまったり……。車線変更では、行っていいタイミングがわからず、怖がる女性が非常に多いです。これは自分の視点でしか見ることができていない、まさに空間認知力の低さが原因ですね。また、どちらも経験不足からくる判断能力も関係してきます。

●女性ドライバー特有の事故

・車庫入れ(空間認知力が低いため、壁との距離感がわかりにくい)
・車線変更時(同じく空間認知力と経験が少ないため、行っていいタイミングがわからない)

女性特有の事故の防止策

――では、そのような事故を起こさないためにどのようなことに気をつければいいですか?

上西先生:車庫入れに関しては、壁や障害物との距離感を音で教えてくれるバックセンサーや映像で視覚的に車庫入れをアシストしてくれるバックアイカメラをつけることをおすすめします。車線変更については、なるべくしないようにすること。する場合は、後ろからくる車やバイクに注意すること。また左折に対し、右折の方が圧倒的に事故率が高いので、なるべく右折をしない、というのも手です。左折→左折→左折すれば右折したことになりますからね。幹線道路でのUターンも事故の原因になりがちな行為、なるべく避けましょう。

●女性特有の事故の対策

・車庫入れ→バックセンサーやバックアイカメラをつける
・車線変更→右折を避けた走行などで、なるべく車線変更しない。

事故を起こさないためにできること

――ほかに、事故を起こさないためにできることってどんなことがありますか? 経験不足も原因のひとつのようですが、どうしたらいいのでしょう?

上西先生:事故防止のために経験値を積むという点では、実際に運転する機会を増やすことも大事です。もしそういう機会をなかなか持てないという方は、客観的に自分の運転を確認するというのも有効です。最近は、事故の前後だけでなく常時録画タイプのドライブレコーダーがあるので、自分の運転を一度見てみるのもおすすめです。どれだけ自分が怖い運転をしていたのか体感できるはずですよ。また、あえて事故映像を見ることも、予測や判断能力を高める経験のひとつになります。

きっと事故映像を見ると、シートベルトの大切さも実感できると思います。お子さんがいる方は、チャイルドシートは絶対です。最近はタクシーでも、シートベルトの装着を促すアナウンスが流れますが、みなさん、ちゃんとシートベルトをしていますか? 面倒くさくてしていない人も多いと思いますが、自分のためではなく、家族のためと思って、シートベルトは絶対にしてください。シートベルトをしないと車外に放り出されてしまい、道路などで強打して人は亡くなります。車は強いショックが加わるとドアが開いてしまいます。大事な家族をシートベルトで守って欲しいのです。

●事故を起こさないため、命を守るためにすぐ取り組めること

・実際に運転する機会を増やす
・自分の運転をドライブレコーダーなどで確認する。
・あえて事故映像を見て予測や判断能力を高める
・車ではいかなる場合(後部座席やタクシー)でもシートベルトを着用

運転中に避けた方がいい習慣

――運転中に、音楽を聴いたりナビを見たりするは、集中力が散漫になるのでやめた方がいいのでしょうか?

上西先生:人は五感の中でも聴覚が非常に敏感です。耳から入る情報には、気を取られがち。見ているつもりでも、一点に集中してしまうと見えていないことが多いです。聞き流せる音楽くらいなら問題ないですが、ハンズフリーにして携帯電話でしゃべったり、ナビの音声や画面を見るのも危険な行為です。ナビを使う場合は、運転前に順路を予習することをおすすめします。助手席の人にナビをお願いするときは、「次の交差点を右」と直前に指示してもらうのではなく、「500メートルくらい先を右」と事前に言ってもらった方がいいでしょう。

また、目に入るところに動くものを置かないこと。よくあるのがバッグを置いていて、運転中にバッグがコロンと落ちてしまい、気を取られるという事例。また後部座席のチャイルドシートに座らせたお子さんがぐずってしまい、ちょこちょこと振り返ったりするのも絶対にやめてください。振り返る行為は、アイマスクをして運転しているのと同じことですから! お子さんへの対応は、車を安全なところに止めてから行いましょう。

●やりがちだけど避けるべき運転中の行動

・ハンズフリーにして携帯電話で通話
・ナビの画面を見入る、操作する
・目に入るところに動くものを置く
・子どもがぐずってチャイルドシートを振り返る

事故を減らす観点から、女性におすすめの車種とは

――事故を防止するために、女性におすすめの車はありますか?

上西先生:事故防止の観点で言うと、おすすめの車種に男女差はありません。どんな車でもフロントピラー(運転席と助手席のそれぞれ斜め前にある柱)が細い車がおすすめです。このフロントピラーが太いと、視界が狭められてしまいます。またフロントピラーと人が重なってしまい、人が見えなくなってしまう可能性があるからです。

万が一、事故を起こしてしまったときの観点から見ると、車高が高い車よりも低い車、ワンボックスカーよりもセダンタイプを選んだ方がいいでしょう。車高が高いと人が車体の下に巻き込まれる可能性が高くなるのです。ワンボックスカーだとクッション代わりになるボンネットの長さがないため、ぶつかった人に直に衝撃が加わったりしてしまいます。

また命を守るためにも、サイドエアバッグがついた車を選びましょう。事故というのは、自分は気を付けていても巻き込まれるという可能性もあります。横から当てられる事故は、相手の信号無視や一時停止の無視などによるものがほとんどです。車はサイドからの衝撃に弱いので、しっかりしたつくりの車を選びましょう。選べるなら高級車がおすすめ。まずドアの厚みがぜんぜんちがいます、そのため横から当てられたときの衝撃がまったくちがうのです。もちろん高級車はなかなか手が届くものではないので、難しいならサイドエアバッグが搭載された車がおすすめです。

フロントガラスとサイドガラスの境目にある「フロントピラー」

●安全運転に向いた車

・フロントピラーが細い車
・車高が高い車よりも低い車
・ワンボックスカーよりもセダンタイプ
・買えるなら高級車
・サイドエアバッグ搭載車

まとめ

どうやら“女性の運転が下手”問題は、偏見だったようです。ひと安心! ただ、運転経験が少ない女性が多いというのも一方で事実です。運転は経験と知識がとても大事ということなので、この機会に実際に運転する機会を増やす、または一度ドライブレコーダーなどで自分の運転を客観視してみるのはいかがでしょう。また女性が苦手とする車庫入れも、便利グッズを上手に活用すれば難なくクリアできそうですね。自信を付けすぎて過信してしまうのは禁物ですが、経験を積めば運転技術は確実に向上します。もっともっと安全で快適なカーライフを楽しみましょう。

(伊藤康江)

※この記事は2015年11月17日に公開されたものです

伊藤康江

出版社勤務を経て独立。現在はフリーランスの編集・ライターとして女性誌や書籍、ムック本を中心に活動中。

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