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「ビッグバン」の意外な名付け親とは?~宇宙誕生の秘密に挑んだ人類の歴史~

宇宙のはじまりと聞いて皆さんは何を想像しますか?

【宇宙ではゲップを我慢したほうがいい―無重力でゲップをすると……】

中には「ビッグバン」という言葉が頭に浮かんだ人もいるのではないでしょうか。

でも、本当に宇宙はビッグバンから始まったのか……。どうしてこのような考え方が生まれたのか…。そもそもビッグバンはどこで起きたのか……。

そこで、今回はそんな謎多きビッグバンの真実に迫っていきたいと思います。

宇宙は永久不変ではなかった!

世紀の天才科学者「アルバート・アインシュタイン」。そう、言わずと知れた相対性理論の生みの親です。

20世紀の初めに活躍した彼でさえ、宇宙は不変のものであると信じていました。

それを根底から覆した歴史的大発見と言えるのが、「宇宙は膨張している」という事実でした。

アインシュタインが活躍していたのとほぼ同時期にあたる1912年、アメリカの天文学者「ヴェスト・スライファー」は、光のドップラー効果(赤方偏移)から観測している銀河が遠ざかっていることに気がついたのです。

この発見により、科学者たちの宇宙に対する認識は大きく変わり始めます。続いて登場した「エドウィン・ハッブル」は、さらに詳しい観測結果から、その遠ざかる速度(後退速度)は地球からの距離に比例しているという関係性を見つけ出し、これを1929年に「ハッブルの法則」として発表しました。

地球から遠ざかる速度がその距離に比例しているということは、宇宙全体が膨張していることを示しており、この事実はそれまで宇宙を永久不変なものと考えていた当時の人々にとって、たいへん衝撃的なものとなりました。

ビッグバン宇宙論の誕生

宇宙が変化していることを示す「ハッブルの法則」が登場したことをきっかけに、宇宙の成り立ちを探ろうとする論争が盛んになりました。

その中でも、現在に至るまで主流となっているのが「ビッグバン宇宙論」です。

ビッグバン宇宙論は、1940年代半ばにアメリカの理論物理学者「ジョージ・ガモフ」が提唱した理論で、これによると初期の宇宙は小さな1点から始まりました。この小さな点は、超高温・超高密度でひじょうに高いエネルギーを持った火の玉のようなもので、これがあたかも大爆発を起こしたかのように膨張を始め、今のような巨大な宇宙になったと考えています。

現在の宇宙が膨張しているのなら、それを逆にさかのぼって宇宙は1つの点から始まったに違いないと考えるのは、当時の人々にとって自然の流れだったのかもしれませんね。

「ビッグバン」の意外な名付け親とは?

ところで、宇宙最初の大爆発を意味する「ビッグバン」という言葉を生み出したのは、実はガモフではありません。

当時、ビッグバン宇宙論と並んで有力な理論と言われていたのは、「定常宇宙論」という考え方でした。これは、宇宙は膨張によって希薄になった部分に新しい物質が次々と誕生することで、その密度を常に一定に保っているというもので、ビッグバン宇宙論の登場から数年後にイギリスの天文学者「フレッド・ホイル」らによって提唱された理論です。

そして、最初にビッグバンという呼び方を使ったのは、何とライバルである定常宇宙論の提唱者ホイルだったのです。

当時、ガモフが提唱する宇宙論は「火の玉宇宙論」と呼ばれていましたが、この理論を批判していたホイルは、あるラジオ番組の中で「宇宙はバーンって大きな爆発(Big Bang)で始まったみたいだよ」とからかって話しました。

ところが、これを聞いたガモフがその表現を気に入ってしまったことから、世界中に広く定着したというわけです。

まとめ

宇宙は不変ではなく膨張しているという発見から始まった、宇宙誕生の秘密を解き明かそうとする科学者たちの挑戦。

その中で、現在の標準的宇宙モデルとなっているのが「ビッグバン宇宙論」ですが、本当にビッグバンが起きたという科学的証拠はあるのか…?

この続きについては、またの機会にお話したいと思います。

(文/TERA)

●著者プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2015年01月21日に公開されたものです

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