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昔の結婚適齢期は10代中盤! 正妻か愛人かを決めるポイントは女性の経済力だった

堀江 宏樹

女性

平安時代は男女ともに、最初の結婚は10代のうちがフツーです。

10代中盤が(すくなくとも最初の)結婚適齢期といってもよいです。特に女性は、初潮を迎えるとすぐに結婚の算段がくまれました。こうして、どこそこのお坊ちゃまが、○日に来るということが決定し、娘以上に親のほうがワクワクして彼がやって来るのを待ちかまえている……なんてコトが起きていたのです。

相手が3夜連続で通ってきたら、それだけで結婚成立。この時、お祝いとして2人で、お餅を食べることくらいが特別なイベント(「3日夜の餅(みかよのもち)」)。しかしそれもおたがいに普段着で、でした。

それでも女性の家族は、ある意味、娘以上に「今晩もホントに彼は来てくれるか!?」とヤキモキして待っていたので、2人が仲良くしている雰囲気をつかむと、踊りだしたくなるくらいに嬉しかったでしょう。

男性からすれば「妻問い」でも、女性と同居のその両親からすれば、「婿取り」ですからね。将来性のある男性が娘の元に通ってくることになったと知ると、女性の両親が男性が履いてきたクツを抱いて寝る……なんてオーバーな習慣までありました(笑)。

「妻問い婚」も、彼が好きな時間にフラッとやってくるわけではなく、正式な時間帯というものが実はありました。訪問と滞在は夜11時から翌朝5時頃まで。少なくとも同居が確定するまでは、夜明け前の薄暗い時間に男性は帰っていくのがルールなんです。

しかし同居が始まる場合、3日目の朝、モチを食べた男性は帰らず、朝になっても居続けます。女性の両親や親族たちと正式に面会し、嫁側の家族の一員となるわけでした。ちなみにこうやって「婿取り」された男性のあらゆる面倒をみるのは、女性の家族の仕事だったのです!

将来性のある男性ほど、多くの家庭から「婿取り」を希望されますので、その中で一番いい条件のお屋敷のお嬢様と同居を開始……というイメージですかねぇ。逆玉ねらいの男ばっかりだったのです。

だから女性を訪ねていく、いわゆる「妻問い婚」はその時点で、第2夫人を探す行為なんですよね。「結婚っても、現代でいえばセフレとかじゃん!」って思うあなた、ある意味では正しいです。しかし、平安時代の恐ろしいところは、正妻になれるか、それ以外の妻に留まるかを決めるのは、男の愛情の強さと、女の経済力なんですよね。結婚した順番じゃないんですねぇ~。

ある調査によると、現在でも「モテる男」の上位1~2割ほどは、複数の彼女の間を渡り歩くのがフツーらしいので、女性の両親が娘を積極的にサポートすると良いのかも……って現代日本なら、よけいに事情がややこしくなるか(笑)。「親が彼のクツを抱いて寝ていた」とか男にバレたら、2度と来てくれなくなりそうです。

女性が、男性の家に嫁ぐという風習が、上流階級の間でフツーになっていった頃、結婚式もスペシャルなイベントになっていきます。平安時代後期~鎌倉時代初期の貴族の女性は、白い上着を8枚重ね、結婚衣裳として着はじめたそうですが、貴族はレイヤード系のコーデがホントに好きなんですねぇ……。

これは現代の結婚式の和服の定番、白無垢姿のプロトタイプといえるかもしれません。女性の嫁入り、そして結婚の儀式はこの頃から、20世紀、昭和になってもずーっと夜に行われている地方が多かったみたいですよ。貴族が信じていた「陰陽道」の教えでは、女性=陰で、夜と相性が良いので、女性を迎える時間帯は夜が吉、と考えられていたのです。ちなみに男性が女性の家族になる「婿取り」が朝に行われていたのにも注目してください。「陰陽道」で男性は「陽」ですから、朝に儀式をするのが吉だったということです。

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著者:堀江宏樹
角川文庫版「乙女の日本史」を発売中
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※写真と本文は関係ありません

※この記事は2014年12月12日に公開されたものです

堀江 宏樹

プロフィール歴史エッセイスト。古今東西の恋愛史や、貴族文化などに関心が高い。

公式ブログ「橙通信」
http://hirokky.exblog.jp/


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