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女性管理職の義務化でどうなる?―2020年をめどに、管理職の3割が女性になる予定

この10月、女性の管理職登用の義務化が発表した。2020年までには30%程度を女性がしめるように、企業に対して数値目標が求められるようになるのだ。

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女性が活躍しやすい世の中は大歓迎だが、「3割」の条件付けは意味を持つのだろうか? 管理職はある意味で「経営者」の意味だから、だいじなのは能力や資質で、性別などの条件で「人数」を決めてしまうと矛盾が生じる。

義務をクリアするだけの「名ばかり管理職」が増え、「産業競争力強化法」とは真逆の会社が登場しそうだ。

変えるべきは会社の「風潮」

女性の活躍は政策のなかでも強く打ち出され、これまでにも起業支援や学び直しなど、女性を支援する制度が誕生してきた。これらに共通するキーワードは「子育て」で、第一子の出産がきっかけとなる女性の離職率はおよそ6割もあり、その後の復職率は4割程度と低く、働き盛りである30代の女性が少ないことが原因だ。

そこで起業したい女性に好条件で融資したり、子育て期間のブランクを埋める教育支援がなされてきたが、今回は在職中の女性が対象で、まずは大企業に対して管理職への登用を「義務化」することで、活躍の場を増やすのが狙いだ。

女性が活躍できる場が増えるのは多いに賛成だ。だが「3割を」と条件づけられるのは違和感が残る。性別や年齢など、本人の努力で変えられない条件をつけるべきではないからだ。

まず「管理職」の定義を確認しよう。東京労働局の資料では、

1. 経営者と一体的な立場

2. 出社/退社など、勤務時間に制限を受けていない

3. その地位にふさわしい待遇

と記され、すべてに当てはまるひとが「管理職」として扱われる。つまり取締役や役員、部長や係長などの肩書きは業務の範囲や責任の程度の差であり、どの役職でも「経営者」にほかならない。管理職になると残業代がもらえなくなるのもこれが理由で、勤務時間も自己裁量で決められるからだ。

ここに性別などの変更できない条件を持ち込むとどうなるのか? たとえば管理者の3割を「20代から登用」しなければならないとすると、さきの2.3.は会社の規則を変更すれば対応できるが、肝心の1.は当人次第で、肩書きがついたからと急に「管理職」ができるとは限らない。

ふさわしい人材であればこのルールがなくても登用されているはずで、制度を優先すれば「かたちだけの」管理職が登場するに過ぎない。女性が登用されにくい会社が問題ならその風潮を是正するのが「筋」であり、義務化して女性比率を増やしても、根付いた風潮が変わるとは考えにくいからだ。

形式的な肩書きと、形式にとらわれない働き方?

さらに説明がつかなくなるのが「残業代ゼロ」制度だ。産業競争力会議の名のもとに今年4月に発表されたこの制度こそが、本当の意味での「管理職」だからだ。

残業代ゼロ制度は、意欲と能力のあるひとを働きやすくするのが目的とされ、要点は、

・労働時間の長短ではなく、成果を評価すべき

・労働時間は、自分で管理すべき

だ。表現が異なるものの、求められている人材は「管理職」にほかならない。

この制度は、最初は年収一千万円クラスのひとを対象に、会社と本人の両方が合意した場合に適用するとうたわれているが、年収一千万円クラスなら常識的に「管理職」をしているだろうから、いまさら残業代の話をしても意味がない。

また、最終的にはこのスタイルを全員に適用するもくろみなのかもしれないが、そうなれば「みんな管理職」状態となるので、男女比を論じるのはなおさら意味をなさない。

管理職などの「要職」は、性別や比率などの形式ではなく資質が重要であることを証明するできごとが起きているので、単なる「儀式」にならないことを祈ろう。

まとめ

・2020年をめどに、管理職の3割が女性になる予定

・管理職の定義は「経営者と一体的な立場」

・残業代ゼロ制度と矛盾が生じる

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年10月29日に公開されたものです

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