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ラウンドアバウトで、日本の道路事情は変わるか?

9月1日から、信号のない交差点・ラウンドアバウトの本格運用が開始された。以前からロータリーとして存在していたのが「本格運用」と報じられているのは、道路交通法の改正によって実用的になったからだ。

環道と放射線の道路を合体させたラウンドアバウトは、交差点内ではすべてのクルマが時計回りに走るため、「対向車」がなく事故が起きにくい。左折しかおこなわないので信号機もない画期的なシステムだが、どの放射線が渋滞しても影響はすべてに及ぶ。

小規模なラウンドアバウトでも直径30mほどの土地が必要なため、都市部へ導入は容易ではなく、渋滞解消の切り札になるのは少し先の話になりそうだ。

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ぐるっと回って直進する?

ラウンドアバウトはロータリーと同じ円形の道路から放射線状に道が広がる構造で、左折で入って時計回りに進む。時計の12、3、6、9時方向に道が延びていた場合、

・12時方向から環道に左折で進入

・時計回りに進む

・目的の出口で左折

のように「左折」しかおこなわない。右折したい場合は、4分の3周した後に、やはり左折で出る仕組みだ。

右折だけでなく、直進も存在しないのも特徴で、環道を半周するかたちで進む。「わざわざ遠回りするの?」と思うのも当然だが、信号機がないので直進だけ別ルールにはできない。時間がかかる反面、環道に入ることで自然と速度が落ちるし、全車が時計回りに進むため対向車が存在しないので、事故が起きる可能性を大幅に減らせるのだ。

信号機不要で事故も起きにくいラウンドアバウトの弱点はスピードで、ロータリーの場合は一時停止が必要だった。そこで道路交通法も改正され、新設されたラウンドアバウトの標識がある交差点では、

・環道に入るときは、一時停止もウィンカーも不要

・環道から出る際は、左ウィンカーを出す

となり、交差点よりも高速道路などの「合流」に近いイメージとなった。停まらず、ゆっくり進み続けることで、渋滞を解消するのが狙いなのだ。

東京だけでも224.3万台

ラウンドアバウトは日本で普及するのか? 必要な面積と交通量を考えると、非常に困難といえるだろう。

アメリカの連邦道路管理局(FHWA)の資料から、ラウンドアバウトの種類と外径(m)、クルマの速度と目安となる交通量は、

・ミニ … 13~27m / 時速25~30km / 15,000台/日

・1車線 … 27~55m / 時速30~40km / 25,000台/日

・他車線 … 46~91m / 時速40~50km / 45,000台/日

とされ、歩道を合わせると少なくても直径30mほどの土地が必要となるので、ほとんどの都市部では、ラウンドアバウト化のまえに区画整理が必要になるだろう。環道を多重にした他車線型なら速度/交通量ともに申しぶんないが、直径およそ100mともなると、都心でなくても土地の確保が難しい。

日本の道路には、どれくらいのクルマが走っているのか? 警視庁の資料から、2012年・東京の1日の交通量を抜粋すると、

・東京全体 … 224.3万台

・一般道 … 114.3万台

・環状七号線の内側 … 81.3万台(12時間調査)

もあり、平均時速は22.5~22.6kmと、慢性的な渋滞が続いている。速度だけで比較すれば1車線ラウンドアバウトでも対応できるだろうが、環道につながる道路の渋滞までは解消できない。さらには、直進には1/2周、右折なら3/4周しないといけない構造のため、どこか1つの道路が渋滞してもすべてに影響し、今よりもひどい渋滞になってしまう。

海外に多い他車線ラウンドアバウトは、車線変更が必要になるため事故も多いので、交差点の形状を変更しても、事故と渋滞の両方を解決するのは困難なのだ。

まとめ

・信号機のない交差点・ラウンドアバウトの本格運用が開始された

・道路交通法も改正され、環道への流入時は「一時停止」不要

・ラウンドアバウト化には、少なくとも直径30m程度の土地が必要

信号がなくなり、中央に噴水でも造れば素敵な景観になるだろうが、日本に普及させるには課題の多いシステムだ。

一時停止不要とはいえ、新ルールに変わったばかりなので、くれぐれも安全運転を。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年09月25日に公開されたものです

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