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気鋭のポジティブ心理学者が説く、誤った「幸せに関する神話」―人生に幸せをもたらす5つの方法とは?

ソニア・リュボミアスキー

「今よりも高収入の仕事に就きたい」「理想の結婚相手に出会いたい」といった願望は誰もが抱くもの。また、その願いが実現しなかった未来を想像すると、悲観的な気持ちになりがちです。

『リュボミアスキー教授の人生を「幸せ」に変える10の科学的な方法』(日本実業出版社)

『リュボミアスキー教授の人生を「幸せ」に変える10の科学的な方法』(日本実業出版社)

しかし、そうした理想を現実のものにできなかったとき、果たして人は不幸になるのでしょうか? その答えは「NO」だと断言するのが、『リュボミアスキー教授の人生を「幸せ」に変える10の科学的な方法』(日本実業出版社)の著者である、ソニア・リュボミアスキーさん。

リュボミアスキーさんといえば、世界的ロングセラーとなった『幸せがずっと続く12の行動習慣』で、幸せな人を観察・研究してわかった「幸福度の高め方」を紹介したことで知られる、“人の幸福”にまつわる心理学のスペシャリストです。

■幸せを遠ざける「思い込み」とはさよならしよう

その彼女によると、人間は、「こうすれば幸せになれる」という思い込みから解放されることによってこそ、幸せを手にすることができるのだとか。

どういうことかというと、たとえばあなたが、「理想の仕事に就けば幸せになれるのに…」と理想と現実とのちがいに悔しい思いをしているとします。しかし、実際のところ、たちまちその願いがかなったとしても、真の幸せは手に入らないそう。

「理想の仕事に就きたいと思うのは、給料や業務のやりがいなどに関して満足していない点があるからですよね? だとしたら、まずは、今の自分が何に対して不満を持っているのか、現時点での成功度はどれほどなのかを理解することが必要です。その理解ができて初めて、もっとも健全な選択が可能になり、次のステップへ進む準備ができるのです」

■日常に幸せを感じられなくなる最たる要因は「慣れ」

リュボミアスキーさんいわく、この理解を深める上で大切なことは、「仕事に対する“慣れ”によって、幸せを感じにくくなっている可能性があることを考慮すること」。

なんせ人間とは、自分に起こっているポジティブな出来事のすべてを「当たり前のこと」とみなす傾向にあるもの。はじめのうちはやりがいを感じていた仕事でも、慣れるに従って退屈だと感じてしまいがちなのです。

「こうした状況に陥ったとき、“新しいキャリアを求める”のはもちろんひとつの手ではありますが、次の職場でも、時を経るとまた同じ状況に陥ることが考えられるなら、今の仕事を続けるほうがよい選択かもしれないのです」

とはいえ、現在の仕事を続けて、かつ不満を減らすことなどできるのでしょうか?

「心理学的に有効な方法は5つ考えられます。まずはその5つを実践しながら、少しずつアレンジしてはいかがでしょうか」

リュボミアスキーさんの提案する5つとは、「再体験」「観察」「感謝」「基準点の変更」「今日という一日を、仕事における最後の一日だと思うこと」。

■感謝の気持ちは、書き起こすことによってしっかりと脳に刻まれる

1つめの「再体験」とは、今よりも満足度が低かった以前の仕事を思い出すこと。また、たとえば以前は現在より収入が少なかったのなら、期間を決めて、その当時同様に財布のひもをかたくすることも有効だとか。

こうした行為によって、現在の仕事のよさをあらためて確認できるので、やる気が再燃してくるそうです。

2つめの「観察」は、自らの職場や業務内容を客観的な目を持って見てみること。また、許可を得て友人や知人、元同僚などの職場を尋ね、自分の職場と比べてみることによっても、自分の仕事のよさを理解することができるのだとか。

「感謝」は、職場の人や仕事で接した人に対する感謝の気持ちを日記やスマートフォンに書きためること。言葉に起こし、それを目で見て確認することで、自分の仕事のポジティブな面について考察できます。

「基準点の変更」は、「夢の仕事」を基準点にして他には目もくれないことで、他の仕事のよさを見落とすことを避けるためにも必要なのだとか。「時には、これまで考えてみたこともなかったタイプの仕事などを思い浮かべて、基準点を変更することを意識してみるといいですよ」

■幸せを得るためには想像力も不可欠

そして最後の方法を真に実践することはなかなか難しいものですが、「今日を最後にこの仕事をすることは二度とない」との想定のもと、一日の業務を行ってみると、普段自分がどれだけ力を抜いていたか、いかに周囲が自分のためにがんばってくれていたかがありありと分かることだってあるかもしれません。

もちろん、これらの方法を実践した暁には、今まで気づかなかった仕事の楽しさやすばらしさにまで気づいて仕事に対する意識が変わり、その結果としてあなたの業績が高く評価され、あなた自身に大きな幸せが還元されることだってあるはず。

そう。思い込みを捨て、ほんの少し意識を変えるだけで、誰もが必ず幸せになれるのです。今の仕事に納得いかずジレンマを感じているという人は、状況を変えようとあがく前に、一度、リュボミアスキーさん提案の5つの方法を試してみるのもいいかもしれませんね。

(観月陸)

※この記事は2014年09月04日に公開されたものです

ソニア・リュボミアスキー

米国カリフォルニア大学リバーサイド校の心理学教授。ハーバード大学で学士号を取り、スタンフォード大学で博士号を取得。2002年度のテンプルトン・ポジティブ心理学賞など、これまでに多数の賞を受賞。米国国立精神衛生研究所から助成金を受けて、数年にわたって「永遠に続く幸福の可能性」について研究している。著書『幸せがずっと続く12の行動習慣』(日本実業出版社)は19カ国で翻訳された。

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