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「夜鳴きゼミ」が増えてるって本当?

夏も終わりに近づき、ときおり肌寒い風を感じるようになった。セミもラストスパートがかかっているようで、必死でメスにラブコールを送り続けている。

夜は鳴かないはずのセミが、都心部では「夜鳴き」するのはなぜか? 街灯や24時間営業のコンビニなどの照明と、ヒートアイランド現象による熱帯夜が、セミの鳴きやすい条件を作り出している。80dB(デシベル)にも及ぶ大音量の鳴き声に刺激され、野鳥も「夜間営業」を開始し、苦情の原因になっているのだ。

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セミの鳴き声は公害レベル!

「鳴く」と表現されるものの、厳密には腹部の発音筋によって音を立てている。メスを引き寄せるための求愛行動でもあり、鳴くのはオスだけだ。広範囲にアピールできるようにオスの腹には空洞があり、これを振動させて大音量を生み出している。

ちなみに、成虫の寿命は「1週間程度」が通説だが、実際は2~3週間、長いものでは1ヶ月ほど生きている。はかない命の代名詞として使われているわりには、昆虫界では長寿の部類なのだ。

夜鳴かないのが相場だが、都心部で「夜鳴きゼミ」が増えているのはなぜか? 街の明るさと気温が、セミが鳴く条件に合っているからだ。多くのセミは明るさに反応して鳴くため、街灯や24時間営業のコンビニなどの照明が夜鳴きの一因となっている。

また、25℃以上になると活発に鳴く種類が多く、ヒートアイランド現象で夜でも気温が下がりにくい都心部は、セミの夜鳴きにうってつけの場所なのだ。

セミの鳴き声は、どれくらいの音量なのか? 環境省の「騒音に係る環境基準」では、住宅地は昼間が55~60dB(デシベル)、夜は40~50dBが基準として定められ、これを超えると公害になる。目安は、

・40db … 図書館

・50db … 扇風機やエアコンの室外機

・60db … 自動車のアイドリング

なのに対し、セミの鳴き声は80dBにも及び、地下鉄の車内や赤ちゃんの泣き声にも匹敵する。夏らしい光景ではあるものの、夜に鳴かれてしまうと「公害」以外のなにものでもないのだ。

セミがネットワーク障害を引き起こす

セミの夜鳴きは生態系の変化をも引き起こしている。鳴き声に刺激され、捕食者であるカラスやヒヨドリも「夜間営業」を始めるからだ。夜に野鳥が活動したところで直接被害を受けるわけではないが、もとより夜鳴きするカラスが加わると、ますますやかましくなる。

東京都庁によせられたカラスに関する苦情は、2013年だけでも300件を超えるほど多いため、なるべくおとなしくしていて欲しいところだが、セミの夜鳴きが文字通り「寝た子を起こす」役割を果たしているのだ。

クマゼミは光ファイバの故障原因でもある。卵を産み付け、ケーブルを断線させてしまうのだ。

本来は枯れ木に産卵するのだが、間違えて光ファイバに鋭い産卵管を突き刺し、通信障害を引き起こす。クマゼミの多い西日本では、1年間で千件以上の被害が起きているのだ。現在は、産卵管が刺さらないように皮膜を強化したり、生木に似た感触の素材に変更することで被害を防いでいるが、気温の上昇にともないクマゼミは北上しつつある。

セミにヤラれてインターネットにつながらない!ではシャレにならないので、関東以北も早めに対策されることを祈ろう。

まとめ

・セミは明るくて高温になると、鳴きやすい

・夜も明るく高温な都心部には、夜鳴きゼミが多い

・セミが光ファイバを断線させることもある

やかましいほどのセミの鳴き声が聞けるのは、自然な環境が残されているからにほかならない。

夜鳴きや通信障害が多発し、セミが害虫として扱われないことを祈ろう。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年08月31日に公開されたものです

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