アルミ缶の「缶コーヒー」が増えているのはなぜ?
アイスでもホットでも、季節を問わず楽しめる缶コーヒー。少し小さめのスチール缶がお約束だったが、最近ボトルタイプのアルミ缶が増えているのはなぜか?
スチール缶は、中身が傷むと膨らんで「食べられません」合図を送ってくれるが、アルミ缶ではできないため、酸度が低くミルク入り製品が多いコーヒーには自主規制されていた。
技術の進歩でアルミ缶も安心して使えるようになったが、弱いアルミを内側から膨らませているため、炭酸なしでも開けた瞬間に中身が吹き出す場合がある。「コールド専用」缶を温めると惨事が起きるので、暑い車内に置き去りは厳禁だ。
ふくらむアルミ、ヘコむスチール
アルミ缶の利点は1.軽さ、2.熱伝導性だ。
スチール缶の約3分の1程度に軽くなるため、持ち運びが楽なのはもちろんのこと、輸送コストも下がるのでメーカーとしても望ましい。
また、熱を伝えやすいので、短時間で中身を適温にできる。熱の伝わりやすさは熱伝導率kで表され、複雑な単位なので説明は省略するが、値が大きいほど熱を伝えやすい。身近な素材の0℃/100℃近辺の熱伝導率をあげると、
・鉄 … 83.5 / 72
・アルミニウム … 236 / 240
・銅 … 403 / 395
・銀 … 428 / 422
・白金(プラチナ) … 72 / 72
と、アルミニウムは鉄よりもはるかに加熱/冷却しやすい。短時間で「飲みごろ」にでき、電気代も抑えられるので、缶入り飲料には最適の素材なのだ。
缶コーヒーにアルミがあまり使われていなかったのはなぜか? これは衛生面での配慮で、1988年の取り決めでメーカーが自粛していたからだ。
アルミ缶の弱点は「弱さ」で、中身が入った状態でも変形しやすい。それを補うために、なかから膨らもうとする「陽圧(ようあつ)缶」が一般的で、多くの炭酸飲料に使われているのはこのためだ。
対してスチール缶はなかの気圧を少し下げ、つぶれようとする力が働く「陰圧(いんあつ)缶」が一般的だ。この方法では、なかの酸素を少なくできるので保存性が高まるのと同時に、内容物が傷むと発生したガスで缶が膨らむのでひと目でわかる。
酸度が低く、ミルク入りもあるコーヒーや紅茶にスチール缶が使われていたのは、傷んだらすぐにわかるからだ。
「コールド専用」缶は、温め厳禁!
「アルミ缶コーヒー」の特徴をあげると、
・開ける前に「振るな」の注意書き
・キャップ式のボトルタイプ
・「コールド専用」「ホット/コールド兼用」がある
が一般的で、いずれも「圧力」関連なのは、缶がつぶれないように、炭酸の代わりに窒素が充てんされているからだろう。
「コールド専用」は、まさにスチール缶との相違点で、つぶれようとする陰圧缶なら多少が熱くなっても大丈夫だが、常温でも吹き出そうとする陽圧缶を温めたら、内圧が増して惨事はまぬがれない。ヤケドをせずに済んでも、あたり一面にコーヒーをぶちまけることになるからだ。
ホット/コールド兼用缶には表面にひし形のデコボコがあり、フタを開けて圧力が抜けると高低差が増し、ザラザラとした感触がはっきりする。缶にスプリングのような役目を与え、圧力を吸収させているのだ。
この方法はすでに缶入りチューハイにも使われ、「ダイヤカット缶」として知られているが、装飾性だけでなく底を薄くできるメリットもある。つまりは内側からかかる圧力を、表面のデコボコで和らげられることを意味しているので、ホット時に役立つのも納得できる。
まとめ
・コーヒー/紅茶は酸度が低く、ミルク入りもあるため傷みやすい
・アルミ缶が使われなかったのは、メーカーの自粛
・アルミの強度を補うため、内側から圧力がかけられている
・「コールド専用」缶を温めると、中身が吹き出して危険…
熱伝導率の高いアルミ缶は、冷えやすいのと同時にぬるくなりやすい。
せっかくスクリューキャップになっても、一気飲みしてしまいそうなのは私だけだろうか。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年08月04日に公開されたものです