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高速道路の路肩の車線化で、渋滞がなくなるか?

国土交通省は、一部の高速道路の路肩を車線に変更すると発表した。渋滞をなくすのが目的だが、本当に解消できるのだろうか?

路肩は故障したクルマを停めたり、ガードレールに近づきすぎないようにするためのスペースだから、無くしてしまうとかえって危険が増える。渋滞時には緊急車両の通り道にも使われるので、路肩がなくなると事故の被害が拡大する恐れもあるのだ。

771万時間を渋滞で過ごす!

クルマが走る車道から、ガードレールなどの「道路の外」までのエリアを「路肩」と呼ぶ。存在理由は、

・道路の保護

・故障車の退避

・車道余裕を持たせ、安全性を高める

ためだ。幅にもルールがあり、高速道路なら2.5m以上、首都高速などでは1.25m以上と道路構造令でも定められているほど重要な部分だ。そのため、走行はもちろん、故障や危険回避以外の目的でクルマを停めることもできない。

渋滞時に路肩を走るクルマやバイクを見かけるが、違反だけでなく危険な行為なのだ。

日本の高速道路は、どれぐらい渋滞しているのか? NEXCO(旧・日本道路公団)の2009年のデータから、渋滞しやすい区間と、その渋滞で1年間に失うのべ時間をあげると、

・1位 … 名神高速道路(大山崎JCT~茨木) / 167万時間

・2位 … 東名高速道路(音羽蒲郡~岡崎) / 91万時間

・3位 … 中央自動車道(上野原~大月) / 85万時間

・4位 … 東名高速道路(横浜町田~厚木) / 75万時間

・5位 … 中国自動車道(宝塚~西宮山口JCT) / 71万時間

もある。1~10位を合計すると771万時間となり、1日8時間勤務に換算すると、年間2,642人の労働時間が失われたことに等しいのだ。

路肩をなくすと、渋滞が激化?

渋滞をなくすには、車線を増やすのが一番だが、道路を拡張するのは容易ではない。そこで中央線を移動させ、渋滞が起きやすい方向の車線だけを増やす「リバーシブル・レーン」が採用されている区間もある。例えば合計6車線の道路を普段は3:3、混雑する時間帯のみ4:2に変更する方法だ。

低コストで実現できるものの、中央線がズレる=逆送している状態となるため事故が起きやすく、リバーシブル・レーン区間は、全国平均の2.6倍も重大事故が起きているのだ。さらには高速道路の中央分離帯を移動させるのは事実上不可能なので、路肩に目をつけたのは当然ともいえよう。

路肩がなくても法律的にOKなのか? これも道路構造令によると、中央帯(中央分離帯)があるか、緊急用の停車帯があれば、路肩はなくても良いと定められている。首都高速のように、ところどころに「非常駐車帯」を用意すれば、車線化しても構わないのだ。

路肩の車線化で、本当に渋滞が解消されるのか? 順調に流れているときは確かに効果的だろうが、事故が起きてしまうと、かえって渋滞を激化させる可能性が考えられる。

故障車が突然止まってしまうケースはまれで、惰性でなんとか非常駐車帯までたどり着けるだろうが、事故で車線がふさがれてしまうと、後続車は路肩がないので逃げ場を失う。また、事故で渋滞してしまうと、緊急車両の到着も遅れ被害が拡大する。

つまり、順調ならメリットが大きいが、事故が起きると大きなデメリットになりかねないのだ。最初は中央自動車道の小仏トンネル~調布インター間で導入され、その後にほかの区間にも広まるのだろうが、まずは結果をみて、本当に効果的か判断する必要があるだろう。

まとめ

・路肩は、道路と道路外をつなぐ部分

・緊急時以外は、走行も停車も禁止

・中央分離帯があれば、路肩がなくてもOK

・事故などで渋滞してしまうと、路肩なしでは対応が遅れる

盆休みに帰省するひとは、渋滞しても路肩走行は厳禁で願いたい。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年07月21日に公開されたものです

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