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壮大なストーリーが!地球上にある物質はどこからやってきた?

この地球には岩石や金属、気体といったさまざまな物質があります。私たちはこれらの恩恵を受けて、豊かな生活を送ることができていますが、これらはいったいどこからやってきたのでしょうか。

【宇宙は過去を見せてくれるタイムマシン―129億光年の彼方に存在する天体「ヒミコ」】

すべての物質は元素からできている

「水兵リーベ 僕の船…」というフレーズを皆さんは憶えていますか?

…そう、元素周期表の語呂合わせですよね。きっとテスト前に頑張って記憶した人も多いでしょう。

酸素・水素・窒素・鉄などはすべてこの元素周期表に載っていますが、このような元素は現在までに110種類を超える存在が知られています。たとえば、水なら水素と酸素、塩なら塩素とナトリウム、100円玉なら銅とニッケル…といった感じで、すべての物質はこのような元素の組み合わせで作られているのです。

私たちの体だって、酸素・炭素・窒素・水素・カルシウム・リン…といった元素からできています。

鉄はどこからやってきた?

では、このような元素たちはいったいどこからやってきたのでしょう?

そこで、身近な金属の代表格で、私たちの体にとっても大切な元素である鉄(Fe)を例に挙げて、この誕生の歴史をさかのぼってみたいと思います。

工業製品などに使われている鉄はもともと酸化鉄が主成分の「鉄鉱石」と呼ばれる鉱石から取り出しています。製鉄所では、鉄鉱石をコークスと呼ばれる石炭燃料と化学反応させることで、酸素を取り除き、純度の高い鉄を精製しているのです。

ところで、この鉄鉱石は地球上のどこから採掘しているのでしょうか。

残念ながら日本はそのほぼすべてを輸入に頼っていますが、世界的に見るとブラジル・オーストラリア・中国などで多く産出されています。そして、この鉄鉱石の鉱山の多くは、かつて海底に眠っていたものが地表に隆起してできたものです。

今から20数億年前、地球上ではシアノバクテリア(藻の仲間)のように光合成を行う生命が繁殖を始めました。すると彼らは、太陽エネルギーを利用した光合成によって、二酸化炭素を取り込んで酸素を作り出しため、地球全体の酸素濃度は一気に上昇します。

これがもともと海水中に溶けていた鉄イオンを酸素と結びつけて、海底に沈殿・堆積したものが「鉄鉱床」を形成し、これが後の鉄鉱石のもととなりました。

鉄の歴史は地球の歴史

それでは、鉄イオンはどうしてもともと海水中に溶けていたのでしょう?ここには実は地球、そして太陽系誕生の歴史が大きく関わっています。

今からさかのぼること46億年前。

宇宙空間に漂っていた水素とヘリウムを主成分とするガスの中から、重力の影響によって太陽は誕生しました。超高温状態の太陽は「核融合反応」によって光り輝き始めます。核融合反応とは、複数の原子の原子核同士が融合して新しい原子核が作られる反応のことで、太陽の内部では4つの水素原子が融合して、そこからヘリウム原子が1個作り出されています。

その際、全体の質量がわずかに軽くなる代わりに、莫大なエネルギーが光や熱として放出されているのです。

なお、太陽が誕生した時、そこに飲み込まれなかったガスの一部や塵は太陽の周りに集まり、そこからいくつかの惑星が生まれています。その中の1つが「地球」なのです。

太陽はそのエネルギーによって、周りにあった軽い元素(水素やヘリウム)を遠くへと吹き飛ばしてしまいました。しかし、幸いなことに岩石や金属の成分となるような比較的重い元素はそれほど遠くまで飛ばされませんでした。

地球は太陽から近い距離で生まれたため、このような重い元素が集まってできた惑星となったのです。

その後、地球は冷えて固まり、やがて海が作られます。地球誕生当時、鉄分は地表にも多くありましたが、それらの一部は酸性雨などによって溶かされ、少しずつ海へと流れていきました。これが、海水中に鉄イオンが溶けるまでのメカニズムです。

核融合反応と鉄

夜空を見上げると、今宵もたくさんの星(恒星)たちが輝いています。このように星が光り輝いているのは太陽と同じく「核融合反応」によるものです。核融合反応が起こると、エネルギーの放出によって陽子や中性子の質量は軽くなっていきますが、鉄の原子核にある陽子や中性子はすべての元素の中で最も軽いため、鉄が核融合反応の終着点となっているのです。

鉄の原子番号は26ですが、これよりも原子番号が小さい元素は核融合反応によって生成され、徐々に鉄へと変化していくのです。言い換えれば、核融合反応では水素(原子番号:1)がヘリウム(原子番号:2)を生み出し、それがさらに炭素や窒素、酸素を作り出し、その最終形態が鉄であるというわけです。

宇宙空間に存在している元素のほとんどは水素とヘリウムで、それ以外の元素というのは、実はごくわずかしか存在しません。ただし、上のような理由から鉄だけはその中でも少しだけ多めに存在しています。

超新星爆発で生まれる元素?

一方、鉄よりも重い元素は、巨大な星が最期に迎える「超新星爆発」の莫大なエネルギーによって作られることが分かっています。この爆発の際の超高温状態下で生まれた重元素が宇宙空間へと拡散していくことで、それらを原料とする新たな星が誕生するのです。

つまり、地球上に金や銀など鉄よりも重い元素が存在するということは、地球誕生以前に別の恒星が超新星爆発を起こしたことを意味しています。

ビッグバンで生まれた水素原子

核融合反応によって鉄(原子番号:26)までの軽い元素が作られ、さらに超新星爆発によって鉄よりも重い元素が生まれることがお分かり頂けたと思います。それでは、もっとも軽い元素であり、すべての元素の親玉ともいえる水素原子はいったいどうやって誕生したのでしょう?

その歴史は宇宙の始まりとされるビッグバンの頃にまでさかのぼります。?

ビッグバンからしばらく、宇宙は超高温の状態だったため、元素を作るはずの陽子や電子は互いに結合することなく、バラバラの状態で自由に宇宙空間を飛び回っていました。それからおよそ38万年が過ぎた頃、ようやく3,000℃近くまで温度が下がってきた宇宙で最初に登場した元素こそ、もっとも軽くて単純な構造(陽子1個と電子1個)をしている水素だったのです。

そのため、現在でも宇宙全体に存在している元素の中でもっとも多く、数にして実に90%以上を占めているのがこの水素なのです。

陽子や中性子は何からできている?

最後に、すべての元素を構成している陽子や中性子が何からできているのかを簡単にご説明しましょう。

この宇宙に存在している物質を極限までバラバラに分解した時に、それ以上分けることができない最小の単位を「素粒子」と呼んでいます。

電子はそれ自体がこの素粒子の1つである「レプトン」の仲間ですが、陽子や中性子は素粒子グループの1つである「クォーク」が集まってできたものです。クォークは宇宙の始まりからほんの一瞬で生成され、それはさらに1万分の1秒程度のうちに陽子や中性子へと変わっていったと考えられています。

つまり、宇宙誕生とほぼ同時に誕生したもの。それが陽子や中性子なのです。

まとめ

地球上にあるすべての物質の起源をたどっていくと、最終的には宇宙の始まりにまで到達してしまいました。すなわち、宇宙誕生の瞬間に生まれたものが、長い時間をかけて姿・形を変え、今私たちの手元に届いているわけです。

そういう観点で見てみると、私たち自身も含めて、すべてはまさに「スペースチルドレン」ですね。

(文/TERA)

●著者プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2014年06月18日に公開されたものです

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