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卵子若返りの技術で妊娠タイムリミットは先送り!?

妊娠・出産というと、まだ遠い先の話かもしれませんが、産む産まないに関係なく「産むのに必要なカラダ」について知っておいて損はないはず! “そのとき”が来たら、はたして自分は産めるカラダなの? そもそも、妊娠・出産ってどういうもの? 自覚症状がないまま進むカラダの異常って!? 知らないことだらけの「いつかそのとき」のために、ぜひ女子のみなさんに見ていただければと思います。

妊娠タイムリミットを遅らせたいと願う女性は多いはず。妊娠タイムリミットが生じる原因といえば、卵子の老化。では、私たちが卵子の老化に対抗する手段は存在しないのでしょうか? 生殖医療がご専門の片桐由起子医師(東邦大学医学部准教授)に聞きました。

 

 

―妊娠力のタイムリミットとは?

卵巣には以下の2つの側面があります。

 (1) ホルモンを分泌する臓器
(2) 排卵する臓器

妊娠力というと、後者の「排卵する臓器」としての役割が問題となります。精子と出会ったら、きちんと分割して、発育できる卵子を生成できるかどうかということです。

妊娠力を下げる原因には、「加齢による卵巣機能と卵子の老化」や、卵巣以外の臓器の疾患、ホルモン異常など、さまざまな要因があります。中でも「加齢」は、卵子の質に直結するもっとも大きい、解決できない問題です。ですから、妊娠力といえば「≒卵子の質」とも言えるでしょう。

卵巣が老化するスピードは、おおむね年齢に比例しますが、誰しも一律なわけではありません。人によって異なり、年齢相応よりも早くに老けてしまう場合もあります。

―「卵子の若返り」は可能?

老化した卵子の細胞を、正常な細胞に置き換える技術は、ウシやニワトリを用いた実験では存在します。ヒトの妊娠に用いる研究も国内外の生殖医療研究機関にて進められていますが、細胞質置換の結果、他人のDNA(ミトコンドリアDNA)が混じる可能性があるとして、技術を治療に用いることは日本では禁止されています。(※)

―「凍結卵子」の技術が最近注目を浴びていますね。

すでにがんなどの治療で卵巣機能が低下する可能性が懸念される方や、早期に閉経を迎える可能性の高い疾患を持っている方を対象にした対応として(「医学的適応」として)、未受精卵子を凍結する技術があります。その一方で、加齢などの要因により性腺機能の低下をきたす可能性を懸念する場合を「社会的適応」として、一部の企業と医療機関が技術をビジネスとして提供する動きも見えはじめました。

不妊治療の現場では以前から、「受精卵(精子と出会い受精したもの)」を凍結して、融解後に用いる技術が広く利用されていますが、前述のように受精する前の「未受精卵子」を取り出して凍結した「凍結卵子」で出産できた事例はごくわずかです。

その理由としては、

「卵子を凍結する→融解する→受精させる→赤ちゃんになる」

というステップをクリアする確率が低い技術だからです。今のところ、凍結卵子は、健康な女性が妊娠力の低下する将来のために行う、標準的な治療法ではあるとは言えません。

この技術を、「産む時期を遅らせるためだけに使いたい」と言われても、保証がないため「使えば必ず将来妊娠・出産できますよ」と申し上げることはできません。

「卵子凍結をしたから、もう大丈夫」と勘ちがいする女性が出てくることを、私は懸念しています。

>(次ページ)中絶経験は、妊娠力があることの裏返しか?

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