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今注目のキーワード!ノルウェー「スローファッション」ブームを解説―「ソルヴ/SOLV」「Finn.no」

ノルウェーの首都オスロで開催されたファッション・コンフェランス「ノルウェジアン・ファッション・ハブ」

ノルウェーのファッション業界は「人と地球に優しいサステナブルなファッション」を目指し、重要な変化期を迎えています。サステナブルとは、環境を保全しつつ、持続することが可能な産業や開発のこと。

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2月10~12日には、ノルウェーの首都オスロにあるノルウェーデザイン建築センター「ドガ/DogA」にて、ファッション関係者が集まる「ノルウェジアン・ファッション・ハブ」が開催されました。

デザイナー、投資家、経営者らが次々とステージに立ち、ファッションの未来について、約15~30分の持ち時間で自らの哲学を発表。そして、この舞台で何人ものプレゼンターの口から登場してきたキーワードは、「サステナビリティ(環境や社会にやさしいこと)」でした。

ノルウェーの首都オスロで開催されたファッション・コンフェランス「ノルウェジアン・ファッション・ハブ」

素材だけでなく、労働環境も見直す動きに

ここ数年、スウェーデンをはじめとする北欧では、大手ファッションブランドが所有する縫製工場環境の実態や毛皮製品に関する、厳しいメディア報道が目立つようになってきています。

適切な労働環境、動物実験の見直し、地元の素材利用、地域への利益還元、リサイクル活動への積極的な介入、情報の透明性。さまざまな面で、これまでのファッション道の在り方が見つめなおされ始めています。

「大量のお金と時間を投資してでも、企業は従来の経営路線をシフトし、“サステナブルな企業”というブランドの確立を目指すほうが、長期的には消費者に指示されるでしょう」。

そう語るのは、スウェーデン発のメンズブランド「Uniforms for the Dedicated」の共同設立者のひとりであるMichael Lindさん。

「再利用できるファッション、服の“セカンドライフ”をデザインできるブランドが求められている。デザイナーも消費者も、ひとりひとりがエコな意識改革が必要。僕たちは服を必要以上に、過敏に毎日洗いすぎていると思わないかい? 汚れを感知して、“そろそろ洗濯したほうがいいよ”と教えてくれる機会があったら便利だろうね」。

会場の笑いを誘いながら、必要以上の大量生産・大量消費の現代社会にLindさんは警告を鳴らします。

売れ残りを防ぐための工夫も

ファッション・ハブの会場で特に大きな注目を集めたのは、ノルウェーの「スローファッションブランド」で知られる2010年設立の「ソルヴ/SOLV」。ノルウェー産ウールの衣服を注文後に生産ラインへのせることで、無駄な売れ残りを防止しているそう。

消費者がコートを特注してから手元に届くのは、なんと6カ月後!

「SOLV」のウールコートは、注文後に消費者の手元に商品がとどくまで約半年を要します

「果たして女性のお客さまに私たちのスタイルが受け入れられるのか、当初は不安もありました。しかし、結果的には数カ月待ってでも、“ずっと愛用できる特別な1着”を求める人々のニーズが高いことがわかったのです」。

そう発表したのは、創立者である2人の女性デザイナー、Oda Midtlyng KlempeさんとMari Stolanさん。

プレゼンをするSOLVの設立者 Oda Midtlyng KlempeさんとMari Stolanさん

プレゼン後は、会場から大きな拍手が響き渡り、同業者に強烈なメッセージを与えたであろうことが感じ取れました。SOLVの意表を突いたビジネススタイルは、質の高いプレゼンターが集まるTEDトーク×Osloでも過去に招待され、紹介されたほどです。

SOLVのウールの帽子とマフラー。雪国ノルウェーではぽかぽか暖かい防寒具の需要が高いのです

ノルウェーの国民性に合ったスタイル

「モノを長く大切に扱う」というスローファッションの精神は、北欧の人々にとっては自然と身についているものです。各地で開催されて好評を得ている蚤の市は、まさにその象徴。ノルウェーでは、「フレテックス/FRETEX」という企業が不必要となった服の回収箱を国内各地に設置しており、衣服は新たにヴィンテージショップで販売されます。

また、「Finn.no」というノルウェー国内最大の検索サイトでは、一般の人々が気軽にアクセスし、中古品の贈呈・売買が自由に行なわれています。

ノルウェーには、祖父母や両親から譲り受けた衣服を愛用する若者も多く、モノを大事にする精神がすでに国民の間で浸透している国ともいえます。ファッションメーカーは、強力な「サステナブル」なブランド構築を成功させることができれば、信頼を得て、根強いファン層を獲得できるともいえるでしょう。

古着が大好きな国で、ファッション企業はどう生き残ってゆくのか――。今後の動きが楽しみです。

※「SOLV」とMari Stolanさんの「O」は、ノルウェー語表記では右上から左下へ向かって斜線が入ります。

著者プロフィール

鐙麻樹(あぶみ あさき)。上智大学フランス語学科2008年卒業。オスロ大学メディア学学科2012年卒業。同大学大学院メディア学修士課程在学中。ジャーナリスト、フォトグラファーとして、雑誌、WEB、旅行ガイドブックを中心にノルウェー現地から数多くの原稿や写真を寄稿。6カ国語の海外ニュース翻訳家、メディア/企業コーディネーター兼アドバイザーとしても幅広く活動中。
ホームページ http://www.asakiabumi.com/
All Aboutノルウェーガイド http://allabout.co.jp/gm/gp/1080/
地球の歩き方オスロ特派員ブログ http://tokuhain.arukikata.co.jp/oslo/

※この記事は2014年03月25日に公開されたものです

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