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電力自由化で、電気代は安くなるの?

今年2月、電力の小売全面自由化が決定した。住所によって自動的に電力会社が決まるシステムが、2016年からはユーザーが選べるようになる。

【もしも自転車で電気を作って売電したら「全力で8時間こいでも日当は182.4円」】

自由化で電気代は安くなるのか? しばらくは現行の規制料金のままなので、いきなりお得になることはない。その後も安くなるとは限らないし、停電のリスクも高まる。本気で自由化するなら、まずは異なる周波数を統一すべきだろう。

電気も選べる時代!

電力には3つの要素があり、1.発電、2.送配電、3.小売に分かれる。現在は一般電気事業者と呼ばれる10の電力会社がほとんどを担っているため、自由に選べない。昭和13年の電力管理法から始まり、9年後の過度経済力集中排除法でかたちが変わったものの、国が「地域独占の電気事業者」と定義しているからだ。

対して2016年から始まる小売自由化では1.~3.を分離し、好きな小売電気事業者から買えるシステムに変わる。現在も大規模なビルや工場は自由に選べる仕組みがあるのだが、完全自由化と呼ばれるように、一般家庭でも電力会社を選べるようになるのだ。

小売自由化のメリットはなにか? もちろん低価格/サービス向上だ。現在は独占販売なので、売る側に競争が生じない。だが2016年からは買い手に選ばれることになるので、当然ながら価格競争も始まる。ただし2~4年の経過措置期間が予定され、この間は現行と同じ規制料金が適用されるので、電気代が安くなる「かもしれない」のは少し先の話となる。

発電する会社が同じなら、電気代は変わらないのでは? 疑問も当然で、小売りがいくらがんばっても、作り手がムリと言えば値下げは困難だ。そこで1995年から発電も新規参入が認められ、独立系発電事業者(IPP)や特定規模電気事業者(PPS)と呼ばれるいわば発電会社が誕生しているのだ。

周波数の違いが足かせ?

本当に好きな電力会社を選べるのか? 制度的にはYesだが、電気の特性と日本の特異性を考えると、かなりの制限が生まれるはずだ。

まずは距離の問題だ。電気は送電線を流れるだけでロスが生じ、一部が熱に変わってしまう。これは送配電損失率と呼ばれ、数値が大きいほどムダが多いことを意味する。資源エネルギー庁の平成23年の資料によると、日本は5.0%と優秀な部類なのだが、これは現在の地域独占型の平均値だ。

対して損失率は送電線が長くなるほど増えるので、例え単価が安くても、遠い発電所から買うと結果的に損することになる。発電機にも負担がかかるので、売る側も望ましくない。つまり、発電所ごとに供給できるエリアが限定される可能性が高い。

周波数の違いも大きな問題だ。ご存じのように、日本は50Hz(ヘルツ)と60Hzの地域があり、そのまま接続できないからだ。

乾電池のようにプラスとマイナスがはっきりしている直流に対し、コンセントにはプラス/マイナスの記載がない。これはプラス/マイナスが高速で入れ替わる「交流」だからで、50Hzは毎秒50回、60Hzは60回入れ替わる。

50Hzと60Hzを混ぜちゃダメなの? もっともシンプルな解決策だが、答えは絶対No!で、電圧が不安定になり大電流が流れてしまう。長時間続くと発電機にもダメージを与え、大規模停電のもとになるので、「混ぜるな危険」と貼っておこう。

周波数変換所も存在するが、3か所しかなく、変換時にロスが生じるため、決して得な方法ではない。あえて周波数の違う地域から買ってもメリットはまったくないのだ。本当に自由化を進めるなら、まずは周波数を統一すべきだろう。

まとめ

・2016年から、各家庭で電力会社を選べる

・ただし2~4年は、いまと同じ「規制料金」になる予定

・発電所が離れると、送電ロスが大きくなる

・違う周波数を買うのは、メリットなし

結局は「近くの発電所」がベストなので、いまと変わらないのかもしれない。

まだ未確定要素も多いので、しばらく様子を見ることにしよう。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年03月14日に公開されたものです

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