お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

もしもヒッグス粒子を手に入れたら「ワープが可能になるかもしれない」

2013年10月、ヒッグス粒子の存在が確認された。提唱者であるピーター・ヒッグス博士もノーベル物理学賞が確定し、喜びもひとしおだろう。

【最近の宇宙食はここまで進化した!】

ヒッグス粒子が手に入ったら、なにができるのだろうか?ビッグバンの解明をはじめ、宇宙の23%を占めるダークマターの正体も突き止められるだろう。アインシュタインの相対性理論と組み合わせれば、物質とエネルギーを自由に行き来し、スタートレックの「転送」が実現できそうだ。

相対性理論+ヒッグス粒子=転送?

学生のときに、物質をこれ以上分解できない状態にすると原子になると習ったが、理科ならこれで正なのだろうが、実際は電子・陽子・中性子とさらに分解できる。これらをもっと細かく分けると現れるのが素粒子で、ヒッグス粒子もこのグループに含まれる。

素粒子は役割によって、「物質を構成する」「力を伝える」の2チームに大別される。それぞれのチームに属する素粒子名をあげると、

●フェルミオン(物質を構成する)

・クォーク(重い素粒子) … アップ、チャーム、トップ、ダウン、ストレンジ、ボトム

・レプトン(軽い素粒子) … 電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノ、電子、ミューオン、タウ

●ボソン(力を伝える) … グルーオン、光子、Wボソン、Zボソン、ヒッグス

で、ヒッグス粒子は、他の物質に影響する「力」だけのグループに属する。

ヒッグス粒子が重要なのはなぜか? これはエネルギーを重さ、つまり物質に変える役割を果たしているからに他ならない。例えば、光の正体である光子は重さがゼロなので物質を構成することはできず、何かにぶつかって消滅する以外の道はない。

存在するが重さがないので、ある意味で幽霊と同じような物質なのだ。同様に、他の物質も重さがなかったら、宇宙は天体が一つもないエネルギーのかたまりに過ぎず、もちろん人間も存在しない。宇宙の誕生・ビッグバンから多くの天体が生まれたのも、ひとえにヒッグス粒子の功績と考えられているからだ。

アインシュタインの相対性理論で、E=mcの2乗の式を見たことがあると思うが、これは質量をエネルギーに変えると、どれくらいになるかを表している。これとヒッグス粒子を組み合わせて物質からエネルギー、エネルギーから物質へと使えば、スタートレックでおなじみの、人間を瞬時に遠くまで運べる「転送」も夢ではなさそうだ。

Beam me up!(転送してくれ)

ただし、1gの物質がエネルギーに変わるとおよそ90兆ジュールとなり、電力量に換算すると2千500万kWhが発生する。JR東日本の資料によると、山手線(E231系)1編成の一周が675kWhなので、3万7千周分のエネルギーに匹敵する。

大人ひとり分の60~70kgを一度に使うとゾロ目の銀河鉄道のように宇宙に行ってしまいそうだから、転送実験には体重制限を設けるべきだ。

ヒッグス粒子は暗黒物質?

じつのところ、40年余りの歳月を費やしたヒッグス粒子探しも、やっと始まりの段階を迎えたに過ぎない。超対称性理論では、ヒッグス粒子は5種類あると考えられているからだ。おまけに粒子と名付けられているものの実態は「場」と呼ばれる空間で、姿を現すのは1兆分の1秒程度しかないため、消滅した後の残骸から推測するしか道がない。

画期的な方法が見つかるまでは、欧州原子核研究機構(CERN)がもつ全周27kmにも及ぶ大型ハドロン衝突型加速器で、陽子と陽子をぶつけて地道に探すしか方法がないのだ。

そこまでして探し続けるは、重さを作り出すほかに、暗黒物質の正体だと考えられているからだ。暗黒物質はダークマターとも呼ばれ、宇宙のおよそ4分の1を占めているのは分かっているものの、いまだにその正体を把握できないため「暗黒」の名が付けられた物質だ。

2008年にノーベル物理学賞を受賞した南部洋一郎・理学博士をはじめ、暗黒物質の正体はヒッグス粒子とする説が強い。つまり、ヒッグス粒子が詳しく解明されれば、宇宙の4分の1ぐらいが分かったことになる。

物質と合わせても約27%。先は長い。ゆっくりいこう。

まとめ

今の10倍のペースで研究が進めば、残り4種類のヒッグス粒子が見つかるのは16年後。暗黒物質を含めて25年ぐらいあれば解明されるだろうか。

自分が生きている間に、宇宙とは「何」か、知れたらうれしい。そのためには残り4分の3を占める暗黒エネルギーも解明されないといけないのだが。

(関口 寿/ガリレオワークス)

修正

2014年2月5日本文を修正いたしました。

※この記事は2014年02月04日に公開されたものです

SHARE