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北海道札幌の老舗喫茶「亜珈里」の大盛りの基準がおかしい件

まさに地域の老舗店。デカ盛りメニューの宣伝は一切していない

初めて訪れる店で、気軽に「○○の大盛りで」などと注文したメニューが、さりげなくテラ盛りだった……。そんな経験をした人もいるだろう。

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「知らずに大盛りを注文すると、痛い目に遭う喫茶店が札幌にある」

そんな情報が取材班のもとに舞い込んだ。真実を確かめるべく、我々は北の大地へと向かった。

地域と常連客に愛され続ける、ありふれた喫茶店

その喫茶店「亜珈里(あかり)」は創業30年。札幌では立派に老舗と呼べる店だ。住所を調べてみると、中心部から離れた住宅街に位置している。地下鉄東豊線の豊平公園という駅を降り、地図を頼りに探していくとすぐに見つけることができた。

まさに地元に根付いた、たたずまい。小さな店構え、店内はレンガをあしらった落ち着きのある雰囲気で、いかにも昔ながらの喫茶店だ。オーナーさんが柔らかい笑顔で迎えてくれたので安心した反面、「こんな穏やかなオーナーさんや店の雰囲気から、度胆を抜くテラ盛りメニューは想像できんな」という印象が頭を過った。

店内には数組の常連客がおり、オーナーさんを交えて談笑している。メニューをチェックし、「ザンギ定食」の大盛りをオーダーした。価格は900円と、テラ盛りにしては安い。オーナーさんも「本当にいいんですか?」などの警告も発せず、ごく当たり前にオーダーを受けた。常連客からも大盛りに対する反応がない。

果たして、このコーナーに相応なデカい盛りの料理など出てくるのか……。そんな一抹の不安が頭を過った。

てんこ盛りのごはんとおかずに言葉を失う

「ザンギ」とは、北海道流の鶏の唐揚げのこと。全国的に知られている唐揚げとは若干レシピは異なるが、ここでの詳しい説明は省略する。一般的な鶏の唐揚げをイメージしていただければ間違いない。

待つことおよそ15分。運ばれてきた「ザンギ定食」を見て、思わず腹の底で「うっ、うぅ!」とうめいてしまった。

まずご飯のインパクトに度肝を抜かれ、次にザンギの脅威に気が付く

まず驚いたのは、俗にいう「昔話的」テンコ盛りのごはんだ。一瞬、そのごはんに気を取られていたが、メインのザンギもハンパではない。こぶし大より若干小さめの唐揚げがゴロンゴロンと5つも折り重なり、最底辺にいるキャベツがいかにも苦しそうだ。

しばらく言葉を失った取材班が我に返ると、オーナーさんと常連客はこちらを注視するわけでもなく、日常的な会話を続けている。ここではこの超ド級の定食は、驚くものではないようだ。

怯む心を自ら励ましながら食べ始めようとしたが、文字通りどこから箸を付ければいいのかわからない。山盛りごはんの突端を注意深くつかみ口に入れ、続けざまに気を付けながらザンギを一切れ摘み上げ、かぶりついた。

強烈な盛りの多さのあまり凶暴な見た目になっているが、ザンギの味はすこぶるうまい。普通の唐揚げとは異なり、タレにつけ込んだような香ばしい甘さがある。ごはんのおかずはもちろん、ビールのつまみなどにも最高だろう。

しかし、この状況では味を楽しむ余裕などない。「本当に大盛りかいな」などと疑っていた己の浅はかさ、傲慢さを、ただただオーナーさんにお詫びしたかった。

口コミで静かに全国に広がる存在

どれだけおいしい物でも、味を楽しみながらいただくことには限度がある。特に揚げ物は、一定の許容量を超えると一向に箸が進まなくなることを、幾多の修羅場をくぐって来た取材班は体験的に知っている。

ザンギを2つまではおいしく食べることはできた。ごはんもザンギの味を見事に引き立ててくれた。ところが3つ目に差し掛かる頃、状況は急変してきた。

つい先ほどまで喜んでいた胃袋と舌が拒絶し始めたのである。「私たちはどうも油がきつくなってきて」と、急に弱気になり始めたのである。あわててキャベツを引っ張り出して口に入れるも、強烈なザンギの食感には太刀打ちできない。

傍らでは、まだ丼からはみ出しているごはんが「ならば私たちが油を中和しましょう」と微笑んでくる。ならば頼んだ!といっしょに食べ進めると、ただちに満腹中枢が危険信号を送ってきた。結果、ザンギ2つと半分、ごはんも半分食べたところで無念のギブアップとなってしまった。

オーナーの桐生さんは前代を引き継ぎ、2代目としてこの店を守っている。食事メニューは豊富で、「鍋焼きうどん以外は大盛りがあります」と柔和な笑顔で教えてくれた。すなわち、すべてのメニューがザンギ定食と同様のインパクトがある強者であるということだ。

軽食・喫茶らしいメニューの数々。しかし大盛りは決して「軽食」ではないので注意が必要だ

どのメニューも低価格であるのがうれしい。「うちは昔ながら軽食・喫茶というスタイルです。常連さんが多いですが、最近は全国のあちこちからもお客さまがいらっしゃいます」と桐生さん。宣伝は一切していないが、ここの存在は口コミで全国に広がっているらしい。

店内は2つにゾーン分けされている。談笑しやすいカウンターのあるゾーンのほか、たくさんのマンガが並ぶゾーンはゆっくり時間を過ごすのに最適

驚くほどの大盛りメニューを、客寄せでなく提供しているのは、昔から腹ペコの常連客のニーズに応えている証し。古い店構えなので、一見さんには入りにくい雰囲気かもしれないが、ゆったりとした雰囲気の桐生オーナーや気さくな常連客の皆さんがあたたかく迎えてくれる。

しかし、桐生オーナーにひとつだけ言いたい。こちらのお店は決して「軽食」・喫茶ではないということを……。

<<亜珈里>>
住所 北海道札幌市豊平区平岸3条1丁目2-3
交通 市営地下鉄東豊線豊平公園駅より徒歩7分
営業時間 11:00-23:00(LO22:30)、土曜は-21:00(LO20:30) 日祝定休
駐車場 8台

(OFFICE-SANGA)

2014年1月20日本文を修正いたしました。

※この記事は2014年01月19日に公開されたものです

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