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『リア王』にみる親と子、上司と部下の関係

シェイクスピア悲劇『リア王』は、なぜ悲劇の最高峰と呼ばれるのか。多くの舞台で上演され、多くの人に読まれた理由はズバリ親子関係、上司と部下の関係を深く考える素材としてふさわしいから。

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●『リア王』のあらすじ
ブリテン(現在の英国の主要部分)の国王リアには、三人の娘がいた。80歳になったリアは、娘たちが遺産相続でもめないように、国土を三分割して娘たちとその配偶者に与えようとした。長女、次女は心にもないセリフで親から資産を多く受け取ろうとする。

リア王が最も信頼し、愛していた末娘はリアへの愛情を言葉にするのが苦手で、父王を激怒させる。結果、何も相続せず持参金も持たない末娘は、自分を心から気に入ってくれるフランス王へと嫁ぐ。

ここで済んでいれば、悲劇とは言いづらいのだが、長女と次女は父王を愛していると言った舌の根も乾かぬうちに、父をそれぞれの城から追放してしまう。王位を退いたリアは、忠臣ケントと道化だけを伴い、嵐の荒野へとさまよい出る。

口から出るのは、長女や次女への呪いの言葉。実は忠臣ケントは変装してリアには自分が誰だか気付かれないようにしていた。それは、リア王が末娘の言葉に激怒した折に、リアの過ちを止めようとして、逆鱗に触れてしまったからであった。

国外追放となったが、姿を変えてリアに忠義を尽くそうとするケント。しかし、その努力も報いられず、リアの長女や次女を巧みに操った悪人エドマンドの指示で、末娘とリアは、とらえられてしまう。そして、末娘は殺される。

リアはそれを嘆き、また、間もなく息絶えてしまう。

●親子の難しさ
言葉に出す、出さないを含めて親子の愛情表現は非常に難しいものです。大会社の社長であれ、アルバイトで生計を立てている親であれ、愛する子供とのコミュニケーションの難しさを実感するのに違いはありません。また、子供としても、親との考え方の違いに悩み、反発したり、ということは、誰でも経験があるのではないでしょうか。

愛情がありながら、それをうまく伝えられないもどかしさにいらいらしたご経験のある方も多いでしょう。誰でもが経験するこのようなことを、『リア王』を通じて深く理解できるであろうと思います。筆者の場合も、親子の問題で悩んだ時に、よくこの作品を読み返します。

●上司と部下の関係
一方で、上司(リア王)と部下(ケント)との関係は、一種、理想の関係を示してくれているでしょう。判断を誤った上司に対して、部下が真っ向から反論し、それによって左遷あるいは解雇されるのですが、その上司を慕って、部下が支えるというのは、美談です。

現実ではそういうケースは少なく、上司の理不尽な要求に反論できなかったり、上司の判断ミスのツケを部下が払わされる、ということもあるのではないでしょうか。

ハッピーエンドには終わらない『リア王』を通じて、親子関係の悩みを多くの人が持っていること、本来の上司と部下はどうあるべきか、といったことを深く考えてみませんか。

(文:深山敏郎/(株)ミヤマコンサルティンググループ/コミュニケーションズ・スペシャリスト)

著者プロフィール
著書:「できるリーダーはなぜ『リア王』にはまるのか」~100冊のビジネス書よりシェイクスピア~ 青春出版社刊。コミュニケーション改善の請負人として、高級ホテル、外食チェーン、外車ディーラー、IT企業など、20年で延べ4万人あまりを直接指導。夢は、英国でシェイクスピア芝居を英語で上演すること。http://www.miyamacg.com/ お問合せ先:info@miyamacg.com

※この記事は2013年11月12日に公開されたものです

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