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フェロモンで好きになることはない「フェロモン器官が退化」

香水やサプリなどさまざまなモテグッズが販売されているフェロモン。これで異性を魅了できるなら、誰でもフェロモン系女子に変身できそうだ。

【「フェロモン!フェロモン?」フェロモンって結局何なの?】

期待とは裏腹に、残念ながらフェロモン系は成立しない。受け取るための鋤鼻(じょび)器が退化してしまい、人間の脳は放たれたフェロモンを感じ取ることができないからだ。

フェロモンは魂の叫び?

フェロモンについては過去にご紹介したように、人間から放たれていることは分かっていても、何がどのように作用するか細部は解明されていない点が多い。耳やわきにある汗腺・アポクリン腺から放出され、そのにおいで女性の生理周期が同じになる、好みの異性か判断できるなど多くのデータが存在し、性的な刺激を与えることが確認されている。

言い換えれば、タブー視されがちな「わき」「汗」「におい」こそが、魅力の源なのだ。

フェロモンはどんなにおいなのか? わき/においのキーワードから誰もが気になる点だろうが、残念ながらこの疑問自体が間違いで、フェロモンとにおいは別物だ。

においは鼻のなかの嗅(きゅう)細胞を刺激し、脳に信号を送る仕組みになっているのに対し、フェロモンは鋤鼻(じょび)器という器官で受け止められる。多くのほ乳類は鼻のなかに鋤鼻器があるのでにおいと同じと考えられがちなのだが、

・におい … 嗅覚器 -> 主嗅球(きゅうきゅう) -> 大脳辺縁(へんえん)系 -> 嗅皮質または視床 -> 大脳皮質

・フェロモン -> 鋤鼻器 -> 副嗅球 -> 偏桃(へんとう)体内側部 -> 視床(ししょう)下部

と、経路もゴールもまったく異なるのだ。

においのゴールである大脳皮質は記憶や思考をつかさどるのに対し、フェロモンは、呼吸や体温調節など無意識に働き続ける自律神経にたどり着く。言い換えれば、においは理性的、フェロモンは本能的なのだ。昆虫が集団で巣を守る、外敵へ攻撃するなど、危険なミッションに不平をいわず参加できるのも、フェロモンならではの効果だ。

スゴいぞフェロモン。これからは魂の叫びと呼ばせてもらおう。

臭い系女子、誕生

本能直撃のフェロモンを使えば、困るほどモテるに違いない。確かにその通りだが、それはフェロモンを受け取れたらの話で、残念ながらヒトの鋤鼻器は退化し、機能していないのだ。

ヒトの鋤鼻器は胎児のころに発達しはじめ、胎齢8週になるとはっきり分かる大きさに成長する。ところが刺激を中継するはずの副嗅球は発達せず、胎齢が進むにつれて小さくなり、16週ごろには分からないほどのサイズにしぼんでしまうのだ。

これは成人になっても変わらず、鋤鼻器は2~7ミリの葉巻状の器官として存在するものの、情報を伝えるための神経がほとんどない。つまり、どんなに多くのフェロモンをまき散らしても、鋤鼻器がそれを受け止めても、相手の脳には何も伝わらない「一人よがり」状態となってしまので、フェロモン系女子が成立するはずもないのだ。

自演乙。

だがあきらめるのはまだ早い。フェロモンがダメでも、アポクリン腺が性的刺激を与えているのは確かだから、アポクリン系女子を目指せば異性を魅了できるはずだ。アポクリン腺は性ホルモンと密接な関係があるので、女性ホルモンを増やせば活性化できる。

ただしやり過ぎは禁物で、アポクリン汗が過剰になると腋臭(えきしゅう)症に発展してしまう。通称ワキガで知られる腋臭症は、汗が細菌によって分解され独特なにおいを放つ。シャツのわきに黄色っぽい汗染みができる、耳アカがベタベタする人は、アポクリン汗が多い証拠なので要注意だ。

原因は菌だから清潔に保てば問題ないが、過剰に対策するとせっかくの魅力臭が台なしになってしまう。とはいえクサい女では残念すぎるので一長一短だ。

女はツラいよ。

まとめ

3回に分けて紹介してきたフェロモン話も、受け取ることができないという意外な結果となった。モテたければ努力しなさいの意味だろう。

本を読みたくなるフェロモンはないのだろうか?もし手に入ればミリオンセラーも夢ではないのだが。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2013年09月29日に公開されたものです

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