お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

最近のラノベのタイトルが長かったりインパクトがある件について

ここ数年、非常に長いタイトルのライトノベルが多くなっているように感じます。では、タイトルを付ける際、決め事などはあるのでしょうか

【何で?アニメやラノベの略称が変な件「『僕は友達が少ない』⇒はがない」】

またいつからこうした長いタイトルが増えたのでしょうか? 個性的なタイトル作品を数多くリリースしてる一迅社のノベル編集部を代表して渡辺哲也さんにお話を伺いました。

ラノベの長いタイトルには法則性がある?

――まず、お伺いしたいのが、一迅社文庫の中で長いタイトルの作品というのはどんなものがあるのでしょうか?

渡辺さん 長いものですと……そうですね、例えば9月に新刊が発売される作品で『俺がお嬢様学校に「庶民サンプル」として拉致られた件』というシリーズがあります。

――確かに長いですね(笑)。こうした長いタイトルには、命名の法則などはあるのですか?

渡辺さん 先ほどの「庶民サンプル」は作家さんが付けたタイトルなんです。命名に関して、これといった法則はないのですが、実際の書店、またネットの書店で販売する際にインパクトがあるようなタイトルにすることは意識しています。

例えば、『憧れのあの娘が突然迫ってくるんだが、どうしたらいい?』といったタイトルでは、いわゆるスレタイ的な言い回しを活用したりしていますね。

――なるほど。ネットでよく使われている言葉に近づけることで親和性も高まりますね。

渡辺さん 他には、専門書店さん独自の宣伝文句やあおり方を参考にしています。やはり専門書店の店員さんなどは実際に読者の方でもあったりしますので。そういった方々の作るPOPのインパクトに負けないタイトルを付けたいと思っています。

――やはりネット用語だとか専門書店さんの文句はなじみやすいですし、長いけどキャッチーに感じるのでしょうね。

渡辺さん そうですね。タイトルとして心にスッと入りやすいものや言い回しが気持ちいいものですと、クチコミで広まる可能性も高まりますので。

一迅社ならではのタイトル付けの挑戦

――他には、タイトルを付けるときにどんなことを重要視されているのでしょうか?

渡辺さん その当時話題になっている作品のパロディーをすることもあります。例えば、サンデル教授の『これからの「正義」の話をしよう』のパロディーで『これからの正義の話をしよっ☆』というものがありますが、内容もサンデル教授の本にかなり影響を受けています。正義について考えるという展開は同じですね。

――比較すると面白いですね(笑)。これまで挙がったタイトルはどれも長く個性的なものばかりですが、命名した後で「長くしすぎた」「やりすぎた」という作品はありますか?

渡辺さん 『恋人にしようと生徒会長そっくりの女の子を錬成してみたら、オレが下僕になっていました』という作品があるのですが、後日「日本一長いラノベのタイトル」ということでメディアで紹介された際に、狙ったわけではなかったので「そんなに長かったのか……」と思いましたね(笑)。

――41文字ですか……確かに長いですね(笑)。こうした長いタイトルとは逆に「短くてもインパクトの強い作品」はありますか?

渡辺さん 『パンツブレイカー』という作品があります。

――タイトルだけ聞くとものすごいインパクトですね(笑)。

渡辺さん 「半径2m以内のパンツを消してしまう能力を持つ少年」が主人公の物語です。内容はおバカな学園ラブコメですが、異能力を持ってしまったことによる苦悩や悲哀もしっかりと描いた意外と硬派な作品です。

――長いタイトルが業界で多くなっている中、短くてインパクトのあるタイトルというのは貴重ですね。

今はまさにラノベのタイトル付けの転換期

――こうしたライトノベルのタイトルが長くなったのは何年くらい前からなのでしょうか?

渡辺さん だいたい2-3年前くらいからではないでしょうか。他社さんの長いタイトルの作品がヒットしまして、そのあたりからさまざまなレーベルの新作タイトルが長くなったと思います。また、それと同時に、それまで存在していた長いタイトルの作品も注目されるようになったと思いますね。

ただ、現在は長いタイトルの作品が本当に増えてしまって、むしろそこで目立つことが難しくなってきたので、違う方法を模索しています。

――なるほど。流行の転換期に差し掛かっているのですね。個性的なタイトル付けをされる一迅社文庫さんですし、今後どんなラノベのタイトルのムーブメントを起こしてくれるのか、一読者として楽しみにしています!

ライトノベルの長いタイトルには、こうした裏側があるようです。長いだけでなく、覚えやすい、言葉にすると気持ちいい。そういった秀逸なタイトルを生み出す作家と編集者は、やはり「すごい」と言わざるを得ませんね。

一迅社文庫HP
⇒http://www2.ichijinsha.co.jp/novel/

(貫井康徳@dcp)

※この記事は2013年08月20日に公開されたものです

SHARE