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日本全国にはたくさんの大仏がある!「日本一」「首のみ」「個人で建立」

白馬大仏には避雷針があります。

白馬大仏には避雷針があります。

大仏といえば「奈良の大仏」「鎌倉の大仏」が有名ですが、実は日本全国に数多くの大仏があることをご存じでしょうか。多くはお寺の敷地内にありますが、中には個人で建てたという驚きの大仏も!

あっちこっちに大仏があります!

「大仏」いうと「大きな仏様」という意味ですが、どれくらい大きければ「大仏」になるのかの定義は、実はあいまいです。広辞苑によれば「約4.85m(一丈六尺)」以上あれば大仏になるそうです。

しかし、それより小さくても大仏と呼ぶことはありますし、また「顔」だけでも大仏になっていたりします。興味深いものを紹介します。

●日本一大きな大仏 牛久大仏(うしくだいぶつ)
茨城県牛久市にある日本最大の大仏です。立像で全高が120mもあります。奈良の大仏が約15mですから、いかに大きいかが分かるでしょう。ちなみに胎内めぐりも可能で、中にはエレベーターがあります!

●本当に首だけ! 無量光寺(むりょうこうじ)の大仏
和歌山県和歌山市、無量光寺にある大仏ですが、こちらは「首大仏」と呼ばれ、本当に首だけしかありません。現在は「首から上の願い事をかなえる」とされています。

●これ以上落ちない?上野大仏
東京都台東区上野恩賜公園にある、顔しかない大仏です。もともと1631年に大仏坐像として建立されましたが、地震、火災などによって破損。その都度改修されましたが、1923年(大正12年)の関東大震災によってついに倒壊。仕方がないので寛永寺さんで保管していましたが、1972年(昭和47年)に顔だけが元の場所に戻されました。

「もうこれ以上落ちるものはない」というわけで、受験生がお参りに来るそうなのですが……(笑)。

●味のある顔 白馬大仏
新潟県糸魚川市にある、愛好家の間では有名な大仏です。1969年(昭和44年)に白馬観光ホテル社長の金田義孝氏によって建立されました。建立当時は胎内巡りもできたようですが、現在では閉鎖されています。

●個人で建立! 布袋の大仏
愛知県江南市にある「薬師如来坐像」。鍼灸師を営んでいた前田秀信さんが、夢のお告げを受けて建立したものです。大仏はコンクリート製で住居と一体化しており、大仏背側の1階は「大佛治療院」という鍼灸院になっています。

●ちょっと猫背!? 岐阜大仏
岐阜県岐阜市にある大仏です。日本三大大仏の一つということになっています(異説あり)。この大仏は乾漆仏で、材木で骨格を作った後、竹材を編んで覆い、その周りを粘土で固め、漆を塗ったものです。面白いのは、お堂の大黒柱がそのまま大仏の骨格にも利用されていることです。つまり、(光背で見えませんが)大仏を貫いて出っ張った柱がお堂を支えているのです。ちょっと猫背に見えるのはこの造りが原因です。

本当にいろいろ! 大仏は面白い!

好事家の意見を聞くべく、愛知県にお住まいの井上義英さんにお話を伺いました。井上さんは名古屋近辺にある大仏を中心に「大きなもの」を写真撮影しておられます。

――井上さんは名古屋近辺の大仏の写真をサイトで紹介しておられますが、どういうきっかけで始められたのですか?

井上さん 子供のころから「大きいものが怖い」という気持ちがありまして。怖いけど、だから引かれるといいますか。それで「大きなもの」の写真を撮るようになりました。大仏もその一環です。

――井上さんのサイトを拝見していますと、名古屋は全国的に見ても大仏の多い地域ではないかと思うのですが?

井上さん そうかもしれませんね。それには理由があると思います。有名な造形作家の方々が愛知県の近くにおられたんですよ。例えば、浅野祥雲さんといいますが、この方は岐阜県の生まれで、コンクリートによる塑像作りを行った名人です。中部地方を中心に活躍されました。

また、名古屋には山田光吉さんと後藤鍬五郎さんというコンクリート職人がいらっしゃいました。この方々は、私のサイトでも紹介している「聚楽園大仏」(愛知県東海市)を制作したスタッフでもあります。

――なるほど。そういう素地が名古屋にはあるんですね。

井上 はい。聚楽園大仏はエポックメイキングなものです。1927年(昭和2年)に開眼されていますが、鉄筋コンクリート製です。日本初の「胎内空間を持つコンクリート製の大仏」だそうです。

――井上さんがまだ行っていなくて、ぜひ見に行きたいと思っている大仏はありますか?

井上さん 石川県にある「ハニベ大仏」は見に行きたいですね。首から上だけしかないんです。もとは全身造る予定だったそうなのですが。とてもいい顔をしているのでぜひ見たいと思います。

●ハニベ大仏
石川県小松市「ハニベ岩窟院」にある大仏。現在でも造りかけの状態で、肩から上だけ(ほとんど首から上だけ)しかありません。ハニベ岩窟院は好事家の間では「名所」として知られているそうです。

――ほかにはありますか?

井上さん もう現存しないのですが「飛騨大観音」は見てみたかったですね。木製の大きな像で、お堂の内部を顔の辺りまで上がることができたそうです。像を見下ろすことができるというのはなかなかない体験ですので。

●飛騨大観音
岐阜県高山市にかつてあった「大仏」。正確には大仏ではなく観音像なのですが、高さ15mもある木製でした。この像を収めた観音堂がまた面白い造りで、観音像の顔の辺りまで階段で上れるようになっていました。好事家の注目する物件でしたが、残念ながら現在はなくなっています。

――大仏を個人で建てる人もいるみたいですね。

井上さん そうですね。「布袋の大仏」などはその典型的な例ではないでしょうか。個人の敷地内に建っているというのは不思議な光景ですね。白馬大仏はホテルの社長が建立した例ですが。

――白馬大仏は白塗りで不思議な像ですね。

井上さん はい。目と白毫(びゃくごう)にはヒスイ、唇にはメノウが使われていました。また、もともとは胎内巡りがあって、(内部の)3、4階から外をのぞける窓があったんですよ。

――そうなんですか?

井上さん 今はその窓も塗り込められていて、また中には入れないようになっていますが。

面白いのは頭に避雷針があることですね(笑)。20m以上の建築物には避雷針を付けなければならないと建築基準法で決まっていますので、それを守っているわけです。

※……白馬観光ホテルの公式サイトには窓があったころの白馬大仏の写真が掲載されています。

白馬観光ホテル公式サイト
http://www6.ocn.ne.jp/~h-kanko/

全国にはまだまだいろんな大仏があるそうで興味は尽きません。皆さんも自分の近所にある大仏を見に行ってみませんか?

※写真は井上さんにご提供いただきました。
(C)井上義英

井上義英さんのサイト『そらいろ工房』
http://www.sorairokobo.com/

(高橋モータース@dcp)

※この記事は2013年05月26日に公開されたものです

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